福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
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名   称 ヒシクイ(亜種ヒシクイと亜種オオヒシクイ)
学   名 Anser fabalis
分 類 1 鳥類
分 類 2 カモ目カモ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
特定せず
選定理由 保護上重要な種・亜種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
  • 文化財保護法     :天然記念物
  • 鳥獣保護法      :非狩猟鳥類
  • レッドリスト(福井県):県域絶滅危惧T類(オオヒシクイ)、県域絶滅危惧U類(ヒシクイ)/
    レッドリスト(環境省):準絶滅危惧(オオヒシクイ)、絶滅危惧U類(ヒシクイ)
解   説  種としては,東シベリアの北極圏やタイガ地帯で繁殖し,秋期に日本および中国の黄河・揚子江流域,朝鮮半島へ渡り越冬する.日本へは,約13,000 羽がカムチャッカ半島から北海道を経由し,太平洋側では東北地方まで,日本海側では滋賀県琵琶湖辺りまで南下してくる.本県では,9 月下旬から3 月上旬ごろまで観察され,1 月初〜中旬に最も個体数が多くなる.そのほとんどは亜種オオヒシクイであり,主に坂井平野一帯に飛来する.繁殖地では,亜種ヒシクイはツンドラに,亜種オオヒシクイは森林ツンドラやタイガに生息する.越冬地では,両亜種とも主に水田地帯で見られるが,亜種オオヒシクイは池沼などの湿地も好む.池沼にあるマコモやヒシと水田地帯のイネの二番穂や落ち穂,雑草の根などを食べる.また,麦畑では,その柔らかい葉を食べることも観察されている.本県に飛来する群れは,石川県加賀市片野の鴨池をねぐらとしている.日の出の頃から約30 分の間でほとんどの個体がねぐらを飛び立ち,採食場所へ移動する.その後も小移動で離合集散しながら採食,休息して過ごす.一部は午後から,多くは夕方に集団でねぐらへ戻る.採食可能な餌の多い12 月まではマガンと別行動することが多いが,少なくなる1 〜2 月ごろは一緒にいることが多くなるようである.積雪期には,採食場所が次第に遠くなり,十分な餌が採れないような場合は坂井平野の九頭竜川やその河川敷の田圃で夜を過ごすこともある.
保護の現状
 と留意点
 現在,「文化財保護法」および「鳥獣保護法」で本種の捕獲,飼養,譲渡などが規制されている.1984 年からロシアと日本で標識調査が開始され,本県でも標識首輪を付けている個体が,毎年,5 〜6 羽が確認されている.鴨池観察館の調査によると,1998 年〜1999 年のシーズン中に,R- 94 ,R- 99 ,C- 52 ,J47 ,J56 ,A3X の標識個体6 羽が確認された.この記録は,渡りルートの解明や寿命などの生態調査の研究に役だっている.また,本県でも,1996 年度より坂井平野におけるガン類の調査が実施されており,飛来個体数,行動圏,採食環境などが次第に明らかになってきている.ほかのガン類と同様,以前は狩猟鳥類であったため渡来数が減少したが,1971 年から非狩猟鳥類となり,その数も徐々に回復してきている.しかし,飛来地である坂井平野において農道整備による自動車の往来が激しくなっていること,送電線が増えていること,民家や建築物が増えていることなどにより,その生息環境が悪化している.本県における飛来総数は,現在,500 羽前後であり,全国各地の渡来数に比べ多くはないが,この個体数を維持し,さらに増加させる保護対策が必要であろう.また,本種は,マガンに比べてより水辺の環境を好むので,採食やねぐらの場所となる大河川において,護岸の自然環境の保全や回復などの対策が必要であろう.一方,近年の減反政策により水田地帯にモザイク状に麦の栽培が盛んに行なわれており,冬期の麦葉がイネの二番穂とともに良い餌となっている.400 〜500 羽の集団が30 分間も食べると濃い緑色の麦畑が淡緑色に変わってしまうほどだが,この時期の麦葉は芯が芽吹く前であり,作付け農家からの苦情も無く減収には至っていないようである.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)

出典「福井県レッドデータブック(動物編)」(2002年3月 福井県福祉環境部自然保護課発行)