第3章 土壌・地盤環境
 
第1節 地下水汚染
 
1 地下水の特性
 地下水は、一般に水質が良好で水温の変化が少ないことなどから、身近にある貴重な水資源として広く活用されている。特に、本県では飲用水としての需要が高く、平成9年度では、県内水道水の72.4%が地下水を 水源としている。
 しかし、地下水は流れが遅く、いったん汚染されると、その影響が長期間にわたり継続し、その回復には多くの時間と多額の費用を要する。
 このため、地下水質についても、「健康項目」に関する環境基準および「要監視項目」が指定されている。(資料編表3−1、4
 
2 県内の汚染状況
 平成9年度までの調査により、県内において地下水中の汚染物質濃度が環境基準を超えている地区は19となっている。
 そのうち、トリクロロエチレン等の有機塩素系化合物による人為汚染が17地区、砒素による自然由来のものが2地区となっている。
 なお、平成10年度には、事業者の自主調査により全国各地で電気・電子系工場の地下水汚染が発見されたが、本県においても、関係事業者から工場敷地内での地下水汚染について県に報告があった。県では、直ちに 各工場周辺の地下水の水質を調査した結果、武生市の1か所で、1井戸のみではあったが、敷地外においても環境基準を超過していたため、当該事業者に対し浄化対策の実施と地下水の監視を指導した。
 
3 地下水質調査結果
(1) 概況調査
 平成9年度、県下60地区(60地点)において、豊水期(春)および渇水期(秋)の年2回、環境基準項目22項目延べ 1,650検体と要監視項目25項目延べ 200検体を測定した。
 ア 環境基準項目
 武生市行松町で シス-1,2-ジクロロエチレンが、武生市上真柄町でテトラクロロエチレンが、鯖江市中河地区でトリクロロエチレンが、南条町東大道地区で1,1,1-トリクロロエタンが検出されたが、環境基準を超える 濃度ではなかった。
 なお、武生市行松町は、平成2年度にトリクロロエチレンによる地下水汚染が発見された武生市王子保地区の下流部にあたり、トリクロロエチレンの分解生成物が検出されたものと推定される。また、武生市上真柄町は、 平成元年度にテトラクロロエチレンによる地下水汚染が発見された地区(平成8年度まで定期モニタリング調査を実施)である。
 イ 要監視項目
 ほう素が8地点中5地点で、硝酸性窒素および亜硝酸性窒素が8地点すべてで検出されたが、指針値を超える濃度ではなかった。他の23物質は、全地点で検出されなかった。(資料編表4−3
 
(2) 汚染井戸周辺地区調査
 概況調査により、有機塩素化合物が新たに検出された鯖江市中河地区と南条町東大道地区の2地区において、周辺調査を実施した。
 その結果、鯖江市中河地区では3物質、南条町東大道地区では計2物質がそれぞれ検出されたが、環境基準を超える井戸はなかった。
 また、概況調査60地区とは別に、三方町の東部地区で砒素が検出されたため、周辺調査を実施したところ、砒素の最高検出濃度は0.46mg/l、環境基準超過範囲は0.8kuであった。なお、汚染原因は、地質由来の自然的要因 によるものと推定された。(資料編表4−5
 
(3) 定期モニタリング調査
 平成元年度から8年度までの調査により、環境基準を超える地下水汚染が認められた18地区においては、汚染の経年的変化を把握するため、平成9年5月と11月に定期モニタリング調査を実施した。
 その結果、トリクロロエチレン等の有機塩素化合物が環境基準を超えていた17地区について、各地区の最高濃度井戸における最近2年間(平成8年度と9年度)の平均濃度でみると、過去の最高濃度の18〜94%であった。 (資料編表4−4
 地下水汚染物質の濃度推移をみるには、相当の変動を見込まなければならないが、この汚染物質の濃度低下は、揚水処理などによる地下水汚染浄化対策の効果が表れつつあるとみることもできる。
 なお、トリクロロエチレン濃度が環境基準を超えている地区においては、その分解生成物とみられる シス-1,2-ジクロロエチレン等についても環境基準を超過する井戸がみられた。
 
 
第2節 地盤沈下
 
1 地盤沈下の概況
 地盤沈下とは、生活の基盤である地表面が広い範囲にわたって徐々に沈下していく現象であるが、他の公害に比べて、その進行が緩慢で確認しにくく、また、いったん沈下するとほとんど復元不可能といわれている。
 地盤沈下の原因は、主として沖積粘土層の軟弱地盤の地域における地下水の過剰揚水によるというのが定説である。
 その仕組みは、地下水の過剰揚水によって帯水層の水位が低下し、粘土層の間隙水が帯水層に排出され、粘土層が圧密収縮を起こし、地盤が沈下すると考えられている。昭和40年代に、建設省国土地理院が全国の地盤変動 状況を水準測量法により調査した結果、本県においては、福井市の南部地域(足羽川以南)で地盤沈下が観測された。
 特に、福井市下荒井では、昭和41年から46年までの5年間に最大18.1cm(年平均 3.6cm)、昭和46年から49年までの3年間に最大25.4cm(年平均8.5cm)の沈下量が計測された。
 そこで、県では、昭和50年に「福井県地盤沈下対策要綱」を制定するなど地盤沈下を防止するための諸対策を講じてきた結果、福井市南部地域における地下水位は年々上昇傾向を示し、地盤沈下は昭和53年以降沈静化している。
 
2 水準測量による地盤沈下の変動状況
 福井平野における水準測量を昭和50年度から行っており、前回の測量から4年が経過した平成8年度に測量を実施した。
 平成8年度までの水準測量結果をみると、年間1 以上の地盤沈下が計測されたのは、昭和51年度3地点、52年度35地点、53・54年度各2地点、56年度1地点であったが、昭和60・63・平成4・8年度には0地点となっている。
 特に、平成4・8年度には、調査地点の約98%が年間5mm未満の沈下であった。(図2−3−1、資料編表4−8−2
 
 図2−3−1 福井平野における水準測量状況(抜粋)  [→図]
 
3 観測井による地下水位および地盤沈下の変動状況
 地下水位の変動状況を把握する観測井は、国・県・市町村分をあわせると、県内25か所に34井が設置されている。
 そのうち、地盤沈下計は4か所6井で設置されている。
 地盤沈下の対象地域に指定されている福井市南部地域の変動状況は図2−3−2のとおりである。 各観測井における地下水位は年々上昇傾向を示すとともに、累積沈下量についても沈静化の状況にある。(資料編表4−9−2、3
 
 図2−3−2 対象地域における変動状況  [→図]
 
第3節 土壌汚染
 
土壌汚染の概況
 一般土壌については、環境基本法に基づき環境基準が定められている。県内の土壌汚染は、地下水の水質結果から見つかることが多く、汚染が発見された場合は、汚染原因者に対し、浄化等を指導している。
 農用地については、「農用地土壌汚染防止法」に基づき、農作物の摂取による健康被害を防止する観点からカドミウムについて、また、農作物の生育阻害を防止する観点から銅・砒素について、特定有害物質として基準が 定められている。
 当該法では、基準を超える汚染が認められた場合は、「農用地土壌汚染対策地域」として指定し、特定有害物質を除去するとともに、当該地域で生産される農作物等を食用に供しないよう勧告するなどの必要な対策をとる こととなる。
 平成9年11月現在、全国では、農用地土壌汚染対策地域として26地域(総面積 2,540ha)が指定されているが、本県での指定地域はない。
 しかし、県では、土壌汚染を未然に防止することを目的とする「土壌環境基礎調査」により、13定点圃場を設置し、土壌汚染の実態を調査している。
 その結果、いずれの地域においても土壌汚染は認められず、各有害成分とも自然賦存量の範囲内となっている。
 また、亜鉛については、「農用地における土壌中の重金属等の蓄積防止に係る管理基準」(環境庁水質保全局長通達)により、管理基準値が定められている。

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