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第1章 データと構成
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◆標準的なテーマ

分野と資源

大気質
気候変動
水産資源
森林資源
自然、生物多様性
オゾン層
土壌、土地利用
廃棄物
淡水資源

分野横断的問題

酸性化
災害、事故
健康
騒音
放射能
有害物質

空間利用

沿岸、海域
都市化

◆経済的指標の例

□GDP/GNP
□株価
□失業率
□投資安全度



【環境レポートに入れるべきものは?】

 環境レポートの作成にあたり、覚えておくべきいくつかの原則があります。

  • 環境レポートの内容は、利用者の関心がある課題、言い換えれば、 社会の優先課題を取り上げるべきです。

  • それはまた、ある程度、データの有無に依存します。しかし、 理想的には、社会の優先課題に応えるべきです。いずれにしても環境レポートは、 モニタリングの不足を明らかにし、その改善に役立ちます。

  • 社会の優先課題に加え、 その地域の環境の状況を他の地域と比較できることが重要です。 そのためには、環境レポートの構成、内容ができるかぎり国際的慣行と 調和しているべきです。

  • 環境レポートは、利用しやすく、 簡潔で、わかりやすいものであるべきです。 専門家でない人でも容易に理解できるよう結論を導き、提示しましょう。

  • 専門家には、追加的な詳細情報や元データにアクセスできるよう配慮しましょう。 それは、リンク集や情報源リストを設けることで実現できます。

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【テーマの構成】

 多くの環境レポートが共通に取り上げている環境課題を出発点とし、 テーマの構成を決めましょう。
 それは、最終的には、優先課題とデータによって調整されます。

 環境課題のほか、環境に影響する主要な経済分野の状況についての章、 ならびに環境管理手法についての章を設けましょう。

 章立てを決めた後は、それぞれの章に含むべき内容について考えます。
 論述は、確固とした事実によって裏付けられていることが必要です。
 経済の分野では、普通、このような目的のために指標−代表的かつ簡潔で、 理解しやすいパラメーター−が使われ、環境レポートにおいても 利用が広がりつつあります。

 指標は、問題を広い意味で代表します (例えば、土壌中の重金属レベルは単に金属汚染のみならず、 有害汚染の全体的状況を指し示します。)。
 指標はまた、断片的な情報を集約します (例えば、水質指標や温室効果ガス放出指標など)。



◆よく取り上げられる経済分野

農業生産量、土地利用...
エネルギー生産量、構造...
水産業漁獲高、養殖...
林業伐採量、管理...
家庭消費...
工業生産量、エコインダストリー...
鉱業採掘量、取引...
旅行業成長、消費...
運輸台数、交通量、密度...

◆他の影響力

経済GDP、構造...
人口増加率、構成...

◆手法

技術汚染軽減...
保全保全地域...
財政消費、税...
情報モニタリング、報告...
法、政策立法、立案...
制度官庁、審議会...
参加NGO、態度...

参考:
p.12の例、および p.30の文献

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◆DPSIR指標の枠組
(かっこ内は例)

  • Driving forces
    環境変化の推進力
    (工業生産量)
  • Pressures
    環境への圧力
    (汚水放出量)
  • State
    環境の状況
    (川や湖の水質)
  • Impacts
    人、経済、生態系への影響
    (水の飲用不適率)
  • Response
    社会の対策
    (集水域の保全)

◆DPSIR概念図

◆いくつかの国際的指標

EU (DPSIR)
OECD (PSR)
UNCED (DSR)
World Bank (DSR)



【良い指標とは...】

  • 対象とする問題と適切に関係し、
  • 目標を上回るか下回るかが表現でき、
  • 国際的な比較ができ、
  • 利用可能なまたは低コストなデータに基づき、
  • 伝達しやすく、理解しやすいもの です。

 指標は必ずしも数値や時系列だけではなく、 Yes/No(条約の批准など)や、マップ、構成図(官庁の組織図など)、 あるいはテキスト(法令リスト)の場合もあることを覚えておきましょう。

 指標は既存のものから選んでもよいし、新しい指標を用いてもよいでしょう。
 それぞれの章のために選んだ指標を DPSIR の枠組に沿って表に整理し、 いろいろなタイプの指標をバランスよく用いるよう努めましょう (例:p.12)。
 指標によっては、複数のテーマに対して用いられるものもあります(p.24)。

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【内容の構成】

 テーマの構成ができあがったら、次に、パートナーのネットワークや 専門的資料を利用して、それぞれの指標のためのデータを収集します。
 文献目録や情報源情報、インターネットは、データの所在や入手方法を 知るための有用なツールです。
 各指標ごとに、ファクトシートとして、 データ源、質、対象範囲、参考情報、データ値、参考指標の値、 グラフなどを紙、または電子媒体上に書き留めます。

 いろいろな機関が開発した指標算出書はデータ加工に有用です。
 共通単位を用いて、D/P指標(一人あたり排出量など)や、 S/Iおよび R指標(下水処理人口など)の値を求めます。
 また、GISソフトや統計ソフトを用いて、マップ、流れ図、時系列、予測図 などを作成します。

 チームや専門家の協力を得ながら、環境レポートの各章を編集しましょう。 それは、そのあと作成するWeb文書の原本となります(p.24)。
 それぞれの章は、普通次のものを含みます。

  • 問題の集約的かつ明確な概観(良/悪、向上/悪化、理由)。 可能であれば、カラーまたはシンボルマークを用いた質的評価。
  • D,P,S,I,Rの記述。指標の解説、値、事例、写真、 および個々の指標について詳説したページへのリンク。
  • レポートの他の関連分野および参考情報へのリンク

 必要な見直し、チェックが終われば、環境レポートは、 画像デザインおよびWeb文書への変換作業に向けて、 準備が整ったことになります。



◆DPSIR指標のデータ


D/PS/IR
統計
モニタリング
施策


◆参考指標

国内(国際)目標
科学的閾値
歴史的価値
国内(国際)平均

◆一般的な単位

GDP、生産量
人口
面積、時間
資源(生産)量

◆ビジュアルな評価

プラストレンド
ニュートラルトレンド
マイナストレンド
 
Nordic Council 97, EEA98 での使用例

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 酸性雨に関するOECDの指標(OECD 1994)
 Pressure
  • 酸性化物質リスト
  • 窒素酸化物、硫黄酸化物排出量
 State
  • 水域、土壌中のpH負荷超過率
  • 酸性雨成分濃度
 Response
  • 触媒変換器を備えた自動車の割合
  • 固定発生源における脱硝、脱硫装置の能力

 森林保全のためのUNCSDの指標(UNCSD 1996)
 Driving Forces
  • 木材生産量
 State
  • 森林面積の推移
 Response
  • 森林管理区域
  • 全森林面積に対する保全区域の割合

 スイス陸軍活動に関する指標(SFSO/SAEFL 1997)
  • 陸軍の土地利用状況
  • 土壌中の金属濃度
  • 射撃地域の管理
  • 航空機、車両の改善
  • 代替ハロゲン溶剤
  • 廃棄物処分施設
  • 湿地保全
  • 汚染地域目録
  • 法令、規則
  • 環境部門の責任
注:p.30 に示した参考資料に他の指標の例があります。

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