福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
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名   称 マガン
学   名 Anser albifrons
分 類 1 鳥類
分 類 2 カモ目カモ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
特定せず
選定理由 保護上重要な種・亜種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
  • 文化財保護法     :天然記念物
  • 鳥獣保護法      :非狩猟鳥類
  • レッドリスト(福井県):県域絶滅危惧U類 / レッドリスト(環境省):準絶滅危惧(NT)
解   説  種としては,ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の北極海沿岸およびグリーンランド西海岸で繁殖し,ヨーロッパ西部,地中海沿岸からカスピ海沿岸までと,中国東部から日本まで,およびアメリカ合衆国の西部やフロリダ湾沿岸などで越冬する.これらは4 つないし5つの亜種に分類されており,このうち日本に飛来するのは亜種マガンとされている.本亜種は,北東アジアのシベリア地方からカナダのクィーン・モード湾までの広い範囲で繁殖し,中国揚子江流域,朝鮮半島,日本およびアメリカ合衆国西海岸で越冬する.日本には,約40,000 羽が北海道を経由し太平洋側では東北地方まで,日本海側では山陰地方まで南下して越冬する.その80%以上の個体が宮城県伊豆沼に渡来する.本県では,9 月下旬から3 月上旬ごろまで観察され,石川県加賀市片野の鴨池をねぐらとする約1,800 羽のほとんどが,採食場所となる本県の坂井平野一帯に飛来する.鴨池観察館によれば,このマガン群の中に標識されたハクガン(N76)が1995 年秋以来4 年連続で確認されているが,この間,国内のどの地域においてもこの個体は確認されていないことから,北海道からの南下ルートとは別ルートの可能性がある.繁殖地では,主にツンドラに生息し,越冬地では,主に水田地帯で見られる.収穫後の水田のイネの二番穂や落ち穂,雑草の根などを食べ,麦畑では,その柔らかい葉を食べることも観察されている.本県に飛来する群れは,石川県加賀市片野の鴨池をねぐらとしており,日の出の頃から約30 分の間でほとんどの個体がねぐらを飛び立ち,採食場所へ移動する.その後も小移動で離合集散しながら採食,休息して過ごす.一部は午後から,多くは夕方に集団でねぐらへ戻る.採食可能な餌の多い12 月まではヒシクイと別行動することが多いが,少なくなる1 〜2 月ごろは一緒にいることが多くなるようである.積雪期には,採食場所が少なくなり十分な餌が採れないことから,雪原に出ている二番穂のあるところで夜を過ごすこともある.また,福井平野の西部および丹生郡清水町辺りまで飛来する群れもある.
保護の現状
 と留意点
 現在,「文化財保護法」および「鳥獣保護法」で本亜種の捕獲,飼養,譲渡などが規制されている.ロシアと日本では共同で本亜種の標識調査が行なわれているが,国内における標識鳥の確認は数例しかない.また,本県でも,標識鳥は確認されていないが1996 年度より坂井平野におけるガン類の調査が実施されており,飛来個体数,行動圏,採食環境などが次第に明らかになってきている.ほかのガン類と同様,以前は狩猟鳥類であったため飛来数が減少し,1970 年には全国でも最低の約5,000羽になった.しかし,1971 年から非狩猟鳥類となり,飛来数も徐々に回復してきている.現在,本県では,全国の五指に入るほどの渡来数を記録しているが,飛来地である坂井平野において農道整備による自動車の往来が激しくなっていること,送電線が増えていること,民家や建築物が増えていることなどにより,その生息環境が悪化している.一方,近年の減反政策により水田地帯にモザイク状に麦の栽培が盛んに行なわれており,冬期の麦葉がイネの二番穂とともに良い餌となっている.しかし,この時期の麦葉は芯が芽吹く前であり,現在,作付け農家からの苦情も無く減収には至っていないようである.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)

出典「福井県レッドデータブック(動物編)」(2002年3月 福井県福祉環境部自然保護課発行)