福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
陸産・淡水産貝類
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名   称 マツカサガイ
学   名 Inversidens(Pronodularia) japonensis
分 類 1 陸産・淡水産貝類
分 類 2 イシガイ目イシガイ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
福井市:東郷中島(516)・徳尾(594),武生市:豊橋(634),小浜市:太良庄(1033),美山町:安波賀中島(441),永平寺町:諏訪間(437),若狭町(旧三方町):鳥浜(961)
選定理由 生態的に貴重な種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説   マツカサガイは,北海道,本州,四国,九州の河川や用水路など流水域に,飛び飛びに生息する日本固有種である.この仲間は日本で種分化したグループであり,日本における生物の進化を考える上で貴重な種である.生息場所の大規模圃場整備等による改変,水質の悪化により個体数や生息地が激減している.県内でも足羽川水系の福井市東郷二ケ町や東郷中島を流れる小川や福井市徳尾町の山際の小川に生息していたマツカサガイは河川改修等で消滅している.現在足羽川,日野川,北川支流太良庄川でも生息が確認されているが,生息数が減少している希少種といえる.
 殻は卵円形で,殻幅は小さく平たい.殻頂は前方により後方が長く広がっている.殻表面には松笠に似た逆V字型の彫刻が顕著に発達し,成長すると共に消滅する.後背縁の放射状彫刻は顕著で,その間隔は粗く老成しても残る.殻色は成長するにつれて黄褐色から黒褐色になる.擬主歯と後側歯があり,右殻の擬主歯は三角状に発達する.成貝は通常,殻長40〜60oで,80oを越える個体もある.
 マツカサガイの妊卵期は7月が最も盛期.グロキジュウム幼生は,オイカワ,カワムツ,ハス等の胸鰭や腹鰭に付着して,宿主から脱落した幼貝は2年後に約3pまで成長する.また,逆に,ヤリタナゴ,アブラボテ等のタナゴ類の産卵母貝となり,天然記念物のミヤマタナゴ(福井県内には生息しない)としても知られている.
 マツカサガイの移動力は低く,砂地でも1日に数センチ程しか移動しないため,水位の変動の影響を受ける岸部には少なく,水深の深い流心部に多い.琵琶湖では水深2〜10bに分布する.
保護の現状
 と留意点
 マツカサガイは過去に県内では水産対象物として漁獲されることはなかったため,特別な保護対策がとられたことはない.生息できる環境は,水通しの良い砂礫底があるため,最低限自然の砂礫質底や砂泥質底を残す必要がある.また,生活史の初期段階でオイカワ,カワムツ,ヤリタナゴ等の遊魚類に寄生し,タナゴ類の産卵母貝となる特徴があることから,これらの遊魚類の生息場所の確保も必要である.また,マツカサガイの好適な生息場所は,大規模な圃場整備に伴う河川改修や水質汚濁で失われるおそれがある.生息環境である河川用水路等の底質の軟泥化を防がなくてはならない.さらに生息地の精査と環境保全意識の高揚を図る必要がある.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)