福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
陸産・淡水産貝類
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名   称 カタハガイ
学   名 Pseudodon (Obovalis) omiensis
分 類 1 陸産・淡水産貝類
分 類 2 イシガイ目イシガイ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
福井市:徳尾(594)
選定理由 生態的に貴重な種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説   カタハガイは,カワシンジュガイ科とイシガイ科との系統関係を明らかにする上で欠かせない種である.富山,岐阜,愛知県以西の本州と,福岡県,徳島県の細流や比較的小さな河川の砂礫質泥底に生息しているが,現在,生息が確認されている地域は極端に狭められている.福井県でも過去に九頭竜川,足羽川,日野川,笙ノ川,三方湖,久々子湖で生息が確認されていたが,近年,急激に生息域が狭められ,今次の調査では,足羽川流域の福井市徳尾町の山麓に沿った手の加えられていない小川にしか生息が確認されていない希少種である.
 殻は長卵形,殻質は薄い.殻頂はあまり膨らまず前方に偏る.殻幅は狭く扁平.殻頂部から後背部にかけて稜状に隆起する.マツカサガイに酷似するが,殻表の後半部にも分枝状の放射肋が認められること,擬主歯と後側歯のみで前側歯がないことで区別できる.内面は真珠光沢がある.妊母貝では4枚のえら全部が保育嚢となっている.殻長60〜70o.殻長75o以上に成長する個体もあるが寿命については不明である.
 この種のグロキジュウム幼生は3〜4月頃に放出されるが,オイカワ,ヒガイ,モツゴ,ヤリタナゴ,タイリクバラタナゴ,ヨシノボリ等のコイ科やハゼ科に寄生する.寄生選択性は弱い.また,ヤリタナゴ,カネヒラ,アブラボテ,シロヒレタビラなどのタナゴ類の産卵母貝となる.
 カタハガイはマツカサガイより移動能力があるため,水位変動の影響を強く受ける岸部でも生息が可能である.
保護の現状
 と留意点
 カタハガイは他のイシガイ科に属する多くの種類と同様,福井県では水産対象種とはならず保護が行なわれることはなかった.本種は細流やクリーク,比較的小さな手の加えられていない河川の砂質泥底に生息しているため,最低限,自然の砂質泥の川底を残す必要がある.また,生活史の初期段階でコイ科,ハゼ科魚類に寄生して過ごし,タナゴ類の産卵母貝となる特徴があることから,これらの遊魚類の生息場所の確保も必要である.また移動分散能力も低いため,集水域全体の保全が必要である.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)