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●種の特性
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ヒメギングチバチ類は体色が黒っぽい種類が多いが,本種は前胸,小盾板や脚を黄色で装っているおしゃれな5mm 足らずの美麗種である.
営巣習性も際だっており,ギングチバチ類で巣穴の閉鎖にスギの樹脂を使うのは本種だけである. Towada 属に所属するが,形態的には南方に生息するPiyumoides 属に似ている貴重な種である.
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●生息状況
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北海道と本州(青森,栃木,埼玉,福井,広島県)の山地から低山帯に広く分布するが,個体数は少なくややまれな種である.
県内の生息地は従来大野市鳩ケ湯,中洞,和泉村前坂,大納,下山,小谷堂など奥越山地のみであったが,近年の調査で,低山帯の松岡町吉野ケ岳,越前町城山,三方町田井,名田庄村挙野,虫谷,尼来谷,虫鹿野,高浜町山中にも生息することが分かってきた. 発生時期は虫谷では6 〜7 月をピークに,5 月10 日頃から8 月の終わりまでであるが,奥越地方では10 月にも活動している.
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●存続を脅かす要因
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ギングチバチ類の多くは雑木林の枯れ木や薪積みに営巣し,ハエ目を幼虫の餌に狩る.極端なスギの人工林化は貧弱な生態系を招き,これらのハチの造巣場所を奪うことになる.
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●参考文献
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羽田義任.1997 .松岡町吉野ケ岳で採集したアナバチ4 種.福井虫報,(20):64 .福井昆虫研究会.
羽田義任.2001 .福井県蜂類分布資料.福井虫報,(29):29- 30.福井昆虫研究会. 室田忠男.1990 .福井県名田庄村の蜂類分布資料.福井虫報,(7):11- 12 .福井昆虫研究会. 室田忠男.1994 .福井県蜂類分布資料.福井虫報,(15):49- 50 .福井昆虫研究会. 室田忠男.1998 .福井県蜂類分布資料.福井虫報,(23):9- 16 .福井昆虫研究会. 室田忠男.2001 .廚城山の注目すべき蜂類について.福井虫報,(29):43- 44 .福井昆虫研究会. 常木勝次.1973 .キユビギングチ福井県第2 の記録.生物研究,17(3- 4):62 .福井生物研究会.
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