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●種の特性
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他のヨシノボリと同様,雄は沈み石に産みつけられた卵を保護する.川の上流域から中流域にかけて生息する.
ふ化した仔魚は海へは下らず川の中だけで一生を送る.本種は止水域,すなわち湖や池に生息しないだけでなく,川の生息域にダム湖が形成されるとその区間からは見られなくなるとの報告がある. 雑食性で底生小動物や水生昆虫などを主体に,付着藻類も食う.胸鰭条数が両側回遊型のヨシノボリでは19〜22 ,本種では15 〜17 で数が少なく区別できる.ヨシノボリ類の中では卵径が最も大きい.
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●生息状況
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日本固有種で,富士山水系および神通川水系以西から九州北西部に分布する.本県では佐分利川の中〜上流域と南川の1 支流にのみ分布する.
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●存続を脅かす要因
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堰堤,護岸工事,用排水路工事,水質汚濁などで本種の生息環境が悪化し,生息数が減少したものと思われる.
両側回遊型のヨシノボリ類と違い,他の河川へ移動できない本種にとっては,現在生息している河川の生息環境の悪化が生存の脅威となる.
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●参考文献
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福井県.1998 .福井県の陸水生物.203pp .福井県.
加藤文男・松田隆喜.1994 .福井県河川におけるヨシノボリ類5 種とカワヨシノボリの分布.福井県郷土自然史博物館研究報告(41 ):63- 76 . 松宮由太佳・渡辺勝敏・井口恵一朗・岩佐祐士・山本軍次・西田睦.2001 .福井県嶺南地方を流れる南川水系の淡水魚類.魚類学雑誌48(2):93- 107 . 松田隆喜・加藤文男.1995 .福井県河川におけるヨシノボリ類5 種とカワヨシノボリの分布(続報).福井県郷土自然史博物館研究報告42 :35- 40 . 水野信彦.1989 .カワヨシノボリ.日本の淡水魚.川那部浩哉・水野信彦編・監修:600- 601 .山と渓谷社,東京. 中坊徹次編.2000 .日本産魚類検索.1748pp .東海大学出版会,東京.
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