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概 説(淡水魚類)

 福井県は本州のほぼ中央に位置し,日本海に面している.嶺北に北陸最大の九頭竜川水系(流路,116.3km )が,ついで嶺南に南川(38.5km )と北川(28.0km )があり,大小40 本余りの河川がすべて日本海へ流入する.さらに三方五湖と北潟湖,池ノ河内湿原,湧水池(大野市)などがあり,陸水環境はかなり変化に富む.しかし,本県においても近年の自然開発や河川工事、水質汚濁等により陸水環境が悪化し,生息し難くなった生物が多く見られ,早急に環境の保全と回復が求められている.
 福井県の淡水魚類(純淡水魚・回遊魚・汽水魚)の調査では,古くは加藤(1906 )による九頭竜川水系での26 種の記録がある.その後、五十嵐・加藤(1966 )や平井(1972 )の調査があり,さらに加藤(1985 )の「福井県の淡水魚類」で24 科68 種が,加藤(1998 )の「福井県の淡水魚類」により28 科97 種及び亜種が報告された.後者の調査は過去30 年余り(1964 〜96 年)にわたるもので,これに新しく確認された未記載種のナガレホトケドジョウ(加藤,2000 )を加えると,本年までに28 科98 種及び亜種(移入魚を含む)が確認されている.
 上記の魚種から,福井県の在来魚で今回の県域の基準に該当する希少淡水魚は,下記の13 科33 種で,この中に,環境庁(1999 )が指定した希少淡水魚は8 種含まれている.なおこの結果は,1995 〜2001 年にわたって調査した資料により,本県の淡水魚の現況を基にしている.

1.県域絶滅  なし
 
2.県域絶滅危惧T類(4 科8 種)
アカヒレタビラ,イチモンジタナゴ,ハス,ナガレホトケドジョウ,ホトケドジョウ,陸封型イトヨ,トミヨ,クルメサヨリ
 
3.県域絶滅危惧U類(11 科17 種)
スナヤツメ,カワヤツメ,イワナ,サクラマス(ヤマメ),ワカサギ,シラウオ,アブラボテ,アジメドジョウ,スジシマドジョウ,アカザ,メダカ,降海型イトヨ,シンジコハゼ,ジュズカケハゼ,クロヨシノボリ,カワヨシノボリ,カマキリ
 
4.県域準絶滅危惧(5 科7 種)
ウナギ,サケ,イトモロコ,ムギツク,シロウオ,トウヨシノボリ,カジカ
 
5.要注目(1 科1 種)  回遊型カジカ
 
 上記の淡水魚が減少する原因として,河川ではダム,砂防,護岸,付近の道路敷設等の諸工事,森林とくに河畔林の伐採,水質汚濁等があげられる.上流域ではイワナ,ヤマメ(サクラマス:回遊魚),ナガレホトケドジョウ,アジメドジョウ,スナヤツメ,アカザ,カジカなど,中・下流域ではアカヒレタビラ,アブラボテ,スジシマドジョウ,カワヤツメ・降海型イトヨ・回遊型カジカ・カマキリ・シロウオ・サケ(回遊魚)など,また海岸 沿いの小河川では,クロヨシノボリ・トウヨシノボリ(回遊魚)などの減少が著しい.
 湖では,護岸工事や水質汚濁により,ハス,イチモンジタナゴ,ワカサギ,シラウオ,クルメサヨリ,シンジコハゼが,湧水池では水涸れが起こり,陸封型イトヨやトミヨ,ホトケドジョウなどの魚が,それぞれ減少の一途をたどっている.
淡水魚等の陸水生物がすめる水環境を保全するには,河川工事の際に多自然型川づくりをするなどして,そこにすむ生物の生態に配慮すべきである.すでに設置されている堰堤や落差工,コンクリート護岸については見直し,可能な限り自然に近い状態に復元する事が望ましい.湖のコンクリート護岸についても同様に見直し,魚の生息や繁殖の場として,水草の生える水辺移行帯を復元することが望まれる.またヨシなどの水生植物は水質汚 濁防止にも有効であることがわかっている.自然との共生には,上記のような取り組みがぜひ必要である.

引用文献

  1. 平井賢一・田中 晋・水野信彦・須永哲雄.1972 .九頭竜川・真名川水系の魚類.真名川ダム工事事務所編真名川ダム漁業調査報告書:135- 195.
  2. 五十嵐清・加藤文男.1966 .福井県の淡水魚類.福井県の生物:77- 99 .福井県高等学校生物教育研究会理科部会.
  3. 加藤賢二.1906 .福井地方淡水魚類.動物学雑誌,18 (207 ):27- 29.
  4. 加藤文男.1985 .福井県の淡水魚類.福井県の陸水生物(みどりのデータバンク付属資料):67- 140 .福井県.
  5. 加藤文男.1998 .福井県の淡水魚類.福井県の陸水生物(みどりのデータバンク付属資料,第2 回):125-203 .福井県.
  6. 加藤文男.2000 .福井県産ホトケドジョウ属魚類2 種とチチブ属魚類2 種,ウキゴリ属魚類3 種の形態と分布.福井市自然史博物館研究報告,(47 ):33- 45 .
  7. 環境庁.1999 .レッドリスト 汽水・淡水魚(資料).
(加藤 文男)
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