第2章 水環境
 
1 公共用水域の水質汚濁の概況
 川・湖・海等のいわゆる公共用水域の水質については、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として、環境基準が定められている。
 環境基準は、 カドミウムなどの「人の健康の保護に関する項目(以下「健康項目」という。)と、 BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)などの生活環境の保全に関する項目 (以下「生活環境項目」という。)の2種類から成り立っている。(資料編表3−1、2
 また、人の健康の保護に関連する物質で、引き続き知見の集積に努めるべきものとして、「要監視項目」が指定されている。(資料編表3−4
 平成9年度における公共用水域の調査の結果、健康項目については、河川、湖沼および海域のいずれにおいても、前年同様、すべて環境基準に適合していた。
 生活環境項目については、有機物による汚濁の程度を表すBODとCODについてみると、河川ではBODの環境基準達成率が91%であり、その経年的な変化は横ばいで、おおむね良好な状況にある。また、 湖沼では、CODの環境基準達成率が53%であり、依然として低い達成率で推移している。海域では、CODの環境基準達成率100%を維持している。(表2−2−1、図2−2−2)
 
 表2−2−1 環境基準の達成状況(平成9年度)
  
   水域名
 
健康
項目
 
            生活環境項目
BOD
(COD)※
pH
 
浮遊
物質量
溶存
酸素量
油分
 
全窒素
 
全燐
 

河川

 
九頭竜川
笙の川・井の口川
耳川
北川・南川


100
 
   %

  91
 


100
 
 %

100
 
 %

98
 


 −
 
 %

 −
 


 −
 
湖沼
 
北潟湖
三方五湖
100
 
  53
 
41
 
 59
 
88
 
 −
 
 27
 
 33
 


海域

 
九頭竜川地先
越前加賀海岸地先
敦賀湾
北川地先
若狭湾東部


100

 


  100

 


100

 


 −

 


 50

 


100

 


 −

 


 −

 
  平均 100   89 90  89 78 100  27  33














 
     ※河川ではBOD、湖沼・海域ではCODにより評価する
 
 図2−2−2 環境基準達成率の推移(BODまたはCOD)  [→図]
 
 
2 環境基準等項目別の現況
 
(1) 健康項目
 カドミウム、シアン等の健康項目については、河川46、湖沼11および海域28の計85地点で採取した 5,628検体を測定した。その結果、各項目ともすべて環境基準を達成しており、有害物質による汚染は認められ なかった。
 
(2) 生活環境項目
 pH、BOD(COD)、SS(浮遊粒子状物質)等の生活環境項目については、河川56、湖沼19および海域36の計 111地点で採取した 6,719検体を測定した。その結果、類型指定されている河川のBODに ついては、44地点中40地点で環境基準が達成され、達成率は91%とほぼ良好な状況となっている。しかし、九頭竜川水系の中小河川のうち、水域類型の指定がされていない馬渡川や狐川(福井市)などでは、依然として BODが高く、かなりの水質汚濁がみられている。
 また、湖沼のCODについては、17地点中8地点で環境基準を超え、達成率は53%と低い状況で推移している。
 湖沼の全窒素(T−N)および全燐(T−P)については、全窒素が15地点(17地点のうち環境基準の定められていない日向湖の2地点を除く。)中9地点で環境基準を超え、達成率は27%、全燐が15地点中10 地点で環境基準を超え、達成率33%と低い状況となっている。
 海域のCODについては、36地点すべてで環境基準が達成されており、良好な状況となっている。(図2−2−2)
 
(3) 要監視項目
 クロロホルム、フェニトロチオン、ニッケル等の要監視項目については、河川16、湖沼3および海域21の計40地点で採取した 1,148検体を測定した。その結果、アンチモンについて、河川の4地点で、硝酸性窒素 および亜硝酸性窒素について、河川の1地点で指針値を超えていた。
 海域については、日本海重油流出事故関連で重油の一成分であるニッケルのみ調査したが、すべての地点で指針値を下回っていた。
 
(4) その他
 ア 温排水
 原子力発電所、火力発電所等からは、発電に伴う冷却排水(温排水)が放出される。この温排水は、水産生物等の生息、生育に影響を及ぼすおそれがあることから、放水口付近の海域において、その拡散等の モニタリングを実施している。
 平成9年度のモニタリング結果では、拡散の規模は従来どおりの範囲内にあった。(資料編3−27〜34
 
 イ 水生昆虫等生息調査
 公共用水域の水質については、主として化学的立場からBOD等の常時監視を行っているが、他に、河川等の水質の推移を把握する手法として、水中あるいは水底に住んでいる生き物(サワガニ、トビケラ、 カワニナ等)の種類を調査している。
 
 表2−2−3 水生昆虫等生息調査結果(平成9年度)



 
   調査地点  ASPT値  環境庁法による水質階級
 笙の川(三島橋)   6.2       T
 竹田川(清間橋)   6.2     判定不能
 足羽川(水越橋)   6.2       T



 
 調査の対象となっている水生昆虫等の種類
  サワガニ、カゲロウ類、トビケラ類、イトミミズ、ヒラタドロムシ類、ヒル類、セスジユスリカ類など
 
3 水域別の現況
(1) 河川
 ア 九頭竜川水域(本川)
 九頭竜川本川、日野川、足羽川および竹田川の4河川17地点においては、全地点で環境基準を達成しており、各河川とも平年並みの状況となっている。(資料編表3−11
 イ 九頭竜川水域(支派川)
 類型指定されている兵庫川、荒川、天王川、吉野瀬川、浅水川、真名川、磯部川、底喰川の8河川12地点においては、磯部川(安沢橋)でBODが環境基準を超えていた。
 また、類型指定されていない田島川ほか12河川においては、馬渡川や狐川など生活系排水や事業場排水が多く流れ込む都市部の中小河川でBODが高く、かなりの水質汚濁がみられた。( 資料編表3−12
 ウ 笙の川・井の口川水域
 笙の川、井の口川水域の4河川5地点においては、笙の川(三島橋)、井の口川上流(豊橋)と深川(木の芽橋)でBODが環境基準を超えていた。
 これは、上流域で宅地化が進行し、生活系排水の汚濁負荷が増加してきたことなどが原因と考えられる。(資料編表3−13
 エ 耳川水域
 耳川水域2地点においては、ともにBODの環境基準を達成していた。(資料編表3−14
 オ 北川・南川水域
 北川水域5地点および南川水域3地点においては、全地点でBODの環境基準を達成していた。(資料編表3−15、16
 
(2) 湖沼
 ア 北潟湖水域
 北潟湖は、生活排水や農業排水に起因する窒素・燐等が湖内に蓄積し、植物プランクトンが増殖する、いわゆる富栄養化が進んでいる湖である。
 このため、調査した8地点中、CODでみると、6地点で環境基準を超えていた。また、全窒素および全燐については、全地点で環境基準を超えていたが、それらの水質は経年的にみると、横ばいに推移している。 (図2−2−4、資料編表3−17
 イ 三方五湖水域
 日向湖を除く久々子湖、水月湖、菅湖、三方湖の4湖は、北潟湖に比べると、水質は良好なものの、やはり生活排水や農業排水によって富栄養化している。
 このため、調査した日向湖、久々子湖、水月湖、三方湖の各2地点および菅湖1地点の計9地点のうち、三方湖の2地点でCODが環境基準を超えていた。また、全窒素については三方湖の2地点と菅湖が、全燐に ついては三方湖の2地点が環境基準を超えていた。特に、奥部に位置する三方湖では、例年アオコが発生している。 また、水質の経年変化をみると、全体的には横ばいで推移しているが、三方湖においては変動が大きく、 また、その水質は改善されていない。(図2−2−5、資料編表3−18
 
(3) 海域
 ア 九頭竜川地先海域等5水域
 九頭竜川地先海域6地点、越前加賀海岸地先海域9地点、敦賀湾海域7地点、北川地先海域4地点および若狭湾東部海域10地点の計36地点において水質を測定した結果、全地点でCODの環境基準を達成していた。 (資料編表3−19〜23
 イ 海水浴場
 県下31海水浴場(利用者数おおむね1万人以上)において、平成10年4月と5月の水浴シーズン前に水質検査を実施し、検査項目のうち特に病原性大腸菌O-157については、7月の水浴シーズン中にも再度調査を行った。
 その結果、環境庁の判定基準ではすべての海水浴場が「適」に該当しており、病原性大腸菌O-157については全く検出されなかった。(資料編3−24−2
 
 表2−2−4 主要地点におけるBOD・CODの年平均値の推移(略)
 
 図2−2−5 北潟湖・三方五湖の水質の推移(略)
 

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