福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 大島半島基部の超塩基性岩
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
大飯町:犬見(1109,1110,1120,1121,1130,1131)
選定理由 希少な鉱物・岩石を産出する地点
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  大飯町大島半島の西半分には,蛇紋石化した超塩基性岩の大きな岩体が分布している.この岩体の北部にあたる朝倉鼻南方の道路沿いには,超塩基性岩の形成過程を示唆するような露頭が存在する.この露頭の様子は地殻からマントル上部で形成された火成岩の変化であると解釈できる.とりわけ単斜輝石岩とダナイトとの律動的な互層を成す部分はマントルの最上部を示すと考えられている.一般に,超塩基性岩では斜長石とカンラン石は共存しないが,ここでは例外的に両鉱物を含む5 種類の鉱物が共存,すなわち尖晶石−斜長石−カンラン石−斜方輝石−単斜輝石を1 枚の薄片中に含むカンラン岩が報告されている.この5 種類の鉱物が共存するカンラン石の存在は,“モホ面”(=地殻とマントルを分ける面)において形成されたと考えられる.このように,ひとつのカンラン岩中に尖晶石−斜長石−カンラン石−斜方輝石−単斜輝石の5 種類もの鉱物を有することは非常に稀な現象で,学術的に貴重な露頭である.輝石岩とは輝石を主成分とする深成岩であり,超塩基性岩の一種である.輝石岩は大飯町犬見の北方の沢を登ったところ(地図上)に露出している.そこでは,風化してガサガサした感じになった褐色のカンラン岩(超塩基性岩の一種で,カンラン石を主体とする)の中に,径1 〜5o程度の斜方輝石粒が風化に抵抗して多数突出している.
 その中に,脈状に発達する斜方輝石岩(輝石岩の一種,斜方輝石を主成分とする)が存在する.それらは5 o以上(場所によっては,10 pに達する)の大きさの斜方輝石の単結晶が集まった粒状組織を成す.斜方輝石岩のレーヤ(層理)にはレーヤリング面に垂直な節理が5 p程度の間隔で発達し,レーヤリングの面に沿って割れた露頭では,泥層の表面に見られる乾裂(sun crack )に類似した割れ目が生じている.このような斜方輝石岩のレーヤやクロム鉄鉱濃集層により表現される級化層理,トラフ状の部分的凹凸などは,マグマ溜りの下部における結晶の沈積作用を示唆する現象である.大島半島の超塩基性岩はかつての弧状列島の内部を構成していた岩石であると考えられている.この地域の超塩基性岩は福井県内でもっとも広く分布しており,これらは数億年前の日本列島に関係した弧状列島,海洋プレートなどの動きを知る上でもっとも重要な資料を提供する岩体である.超塩基性岩に伴う鉱床の生成,蛇紋石化に伴う礫状化および地辷り・崩落などもこの地域特有な地質現象である.宮留の緑色オリビンサンド(179 )はこの超塩基性岩から放出されたもの.
保護の現状
 と留意点
 超塩基性岩は,道路脇に多く露出する.今後できるだけコンクリートモルタルの吹き付け等により,露頭を覆わないような配慮が望まれる.コンクリート等で覆ってしまえば,ある意味では保存になるが,調査や教育のための観察露頭としては活用できなくなる.輝石岩は小さい沢の中ほどにみられる露頭や転石であり,人為的改変の心配はない.しかし,沢の下方では砂防ダムができており,さらに,上流部にも砂防ダムをつくるようなことになれば,土砂で埋もれてしまうこともありうる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)