福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 美浜町日向の海食地形と海岸露頭
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
美浜町:笹田,早瀬,日向(957,958,970,971)
選定理由 特異な地質構造が見られる地点,その他地質学的に貴重な地点
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  三方五湖の一つである日向湖につながる日本海側の入り江の東と西では岩石の種類が異なっている.東側では見事な枕状溶岩を含む緑色岩と少量の石灰岩・チャートが分布する.西側では,砂岩・頁岩が分布する.両者の境界は断層であり,その断層の一部は西側の崖の奥まった所( )を走っている.断層面の走向は北東で,傾斜はほぼ垂直である.西側の砂岩・頁岩は黒雲母相程度の熱変成作用を受けている.この変成作用には三方花崗岩が関係していると思われる.一方,東側の緑色岩の変成度は弱いが,しばしば緑れん石ができている.東側海岸の地質は,笹田の港を過ぎた辺りから,頁岩を主体とするチャ−ト・緑色岩・石灰岩と砂岩の混成するメランジェであり,色調も様々で飴状の流理模様や層理・葉理の岩相が美しい岩浜海岸をつくっている.さらに北進すると,緑色岩の岩体になり,溶岩・凝灰岩等の火砕岩類で構成され,これらの岩体の波食された面に,おおよそ球状で,周辺部が薄い膜で覆われ,内部は中心に向かって放射状の割れ目を持つ枕状溶岩が産出している.この枕状溶岩を過ぎると,やがて,赤と白の層状(2 〜3 p)互層をなすチャ−ト層に遭遇する.この地方には,赤白チャ−ト(赤色珪石)と呼ばれる特殊なチャ−トの地層が産出するが,これほど美しい層状をなすものはほとんど存在していない.久々子湖の外洋と通じる運河を経て,湖の北側から早瀬に出て若狭湾に突き出た岳山の山麓海岸線も地質は露出状況がよい.笹田の港を過ぎた辺りの岩浜海岸には,頁岩・チャ−ト・緑色岩そして石灰岩の円礫が海岸線に広く分布する.渚近くには少々の浅瀬の岩礁帯が存在する.山麓と渚は,波浪の侵食を受けて,岳山の若狭湾側は波食台と波食崖が取り巻き,海岸に点在する岩柱や奇岩は素晴らしい光景を造り出している.
保護の現状
 と留意点
 沈降性の三方五湖やリアス式海岸線の中でも,岳山の山麓海岸線の外洋側はほとんど開発されずに残されている.地質学上貴重な岩相地域であり,今後も大切に保存したいものである.護岸工事にはこの点を十分配慮する必要がある.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)