福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 浦底の猪ヶ池および明神崎の地塁・地溝
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
敦賀市:浦底,明神崎水島,猪ケ池(859,860)
選定理由 地形形成史から見て典型的な地形
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  敦賀半島の先端部から少々南部に下がった所に突出した浦底半島がある.その半島のネックに,周囲1,100m の猪ケ池(いのがいけ)がある.最高深度は,およそ7m である.池の等深線は,表面の地形におおよそ類似した形態で深度を増している.池の東西両縁には段丘堆積物が発達し,南北両縁には花崗岩質の基盤が存在する.東部側壁は,巨礫を多量に含む海食崖となっていて,その高度は,およそ8m に以上に達する.また,西側は,低位開析扇状地様の堆積物からなる.この年代について,岡田は(1978 ),泥炭層の草本類は,1,860 年前で,立木の埋もれ樹幹では1,520 年前であり,その下位の堆積物は,20,040 年ないし20,800 年前であると述べている.これらのデータから,猪ケ池の形成時期は洪積世の最後期から沖積世の最前期と考えられる.いずれにせよ,東西両縁の堆積物よって閉ざされ,池化したものであるが,東西の堆積物の層相の大きな違いからして,東西が同時に堰止められたものではない.敦賀半島の先端,猪ケ池の南に,鍵状に切り込んだ浦底湾がある.湾の東側には標高約50mの浦底半島があって,敦賀湾側の海岸線には海食棚が存在している.半島の付け根には水深およそ7m の猪ケ池があって,半島の先端には,明神崎さらに,その先端に標高約5m の離れ島−
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浦底湾の全景猪ケ池の水島がある.過去には水島は半島と連なっていたが,波浪の侵食を受けて現在では離れ島となった.岩盤は,この名勝水島から湾底に堆をなして延びている.この浦底湾と半島は地溝と地塁の関係にあり,猪ケ池・明神崎・水島は地塁にあたる.浦底湾は断層によって落ち込み,やがてその地溝に堆積物が積もって,湾奥に浦底低地を形成した.その低地部は,およそ500m の奥行きと,100m 前後の幅を持っているが,現在は原子力発電所が建設されて,過去の地形形態は大きく改変されている.しかし,それらの地形の面影は,半島の湾岸に残っている.浦底湾の東岸と西岸の一部に低位の段丘面が付着し,さらに,東岸の中程には,標高およそ1.5m 以内の浜堤が存在している.また,半島の外湾側には,比高差10m 以上におよぶ海食崖があり,巨大な礫が露出する部分や花崗岩壁の所がある.この崖の麓には,花崗岩床の平坦な海食棚が広がり,東西両縁は段丘堆積物によって閉ざされている.
保護の現状
 と留意点
 猪ケ池は,四季を通じて野鳥が飛来し,野鳥の楽園ともなっている.小半島の付け根に位置する当池は,両縁が狹い堤で海と接し,水位は海水面より遙かに高くて淡水であることは不思議さと神秘に満ちている.浦底半島にこのような淡水池が存在することは,地形学的にも特質すべき所である.この地域は,原子力発電所と共存する地域である.浦底湾や半島には特異な地形が残存しており,今後も失われないようにしたい.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)