福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 勝連花の河岸段丘
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
武生市:勝蓮花(754,755,756,793,794,795,829,830,831)
選定理由 地形形成史から見て典型的な地形
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  吉野瀬川の河谷を上流にたどると,少しずつ河谷が狭くかつ深くなる.やがて河谷を登りきった勝蓮花付近で展望が開け,広い河岸段丘を見ることができる.さらに西へ向かうとこの段丘面は,丸岡・菖蒲谷を結ぶやや広い谷底低地に連なっている.一方,勝蓮花から南方へ本流をさかのぼって行くと,湯谷まで段丘が続く.この段丘は,吉野瀬川の侵食の復活による下方侵食から取り残された部分である.これと同じ段丘面は,丹生山地内に広く分布しており(113 ),中位段丘面である.堆積物は礫・砂を主体とし,礫質はチャ−
トが普遍的で花崗岩や流紋岩も混在している.この段丘面の表土には大山倉吉軽石火山灰が挟まれていることから,この段丘は5 万年以前にすでに形成されていたと考えられる.武生市勝蓮花から菖蒲谷にかけて流れる現在の河川系では,菖蒲谷の東側(米口町)に谷中分水嶺があり,米口町より東に降った雨は東に流れ,勝蓮花を通り,吉野瀬川となって福武低地に注いでいる(128 ).菖蒲谷から勝蓮花にかけては谷は幅数100m と比較的広く,なだらかな平地となっているが,勝蓮花以東は深い渓谷を形成している.この地域に分布する河岸段丘は上下2 段に区分される.下位の段丘は勝蓮花付近の現吉野瀬川沿いに小規模に分布するものであり,現在の吉野瀬川の河岸段丘といえる.しかし上位の段丘については勝蓮花から菖蒲谷,さらには分水嶺を越えてその北側へと続くことから,現在と同じ河川系が作ったものとは考えられない.段丘の分布および段丘堆積物中のチャート礫の種類およびその分布からすると,この河岸段丘を作った河川は現在の河川系とはまったく異なり,西流および北流してきた河川が勝蓮花で合流し,西流して菖蒲谷へ,そこから北に向きを変えて織田へと流れて行く古天王川の上流部であった.しかしその後,東方から吉野瀬川が渓谷の谷頭侵食によって西流,北流していた河川を勝蓮花において争奪し,現在の河川系へと変わっていった.以上のような河川系の変化を河岸段丘の分布および段丘堆積物から読み取ることができる.
保護の現状
 と留意点
 県内の中位段丘の典型的な地形として,この段丘面は重要である.一般人が見ても段丘地形であることがよく分かる.また吉野瀬川の侵食の復活の一事例として好例である.段丘崖や段丘面を人工化しないことが大切である.現在かなり地形の改変が進んでいる.今後とも地形を大規模に改変しないことが望まれる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)