福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 夜叉ヶ池
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
南越前町(旧今庄町):岩屋(497)
選定理由 地形形成史から見て典型的な地形
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  この池は,今庄町と岐阜県坂内村に接する県境付近の標高1,099m の福井県側に位置する.その位置の特異性と涸れ水のないことで注目されてきた.夜叉ケ池の地形を見ると,県境部は標高約1,200m の山陵列で,最も池に近い鞍部は1,115m となっている.池のある地形面は,1,000 〜1,100m 付近に見られる平坦面で,かつての侵食時に出現した高位平坦面である.この池と類似した地形が池のすぐ東北方約350m の地点にもあり,「古池」とよばれ,高層湿原となっている.この「古池」のある地形面も高位置平坦面であり,その標高は1,075m である.夜叉ケ池の形状をみると,東西・南北とも約75m でほぼ円形に近く,その周囲は約230m ,最深部で7.7m ある.夜叉ケ池付近の岩質は,主として粘板岩・砂岩・チャートからなり,その堆積時期は中生代である.優勢なチャート層は,夜叉ケ池周辺の山頂部付近に広く露出しており,そのことが,この池を高い場所に保持させる条件になったと考えられる.すなわち,南東側へ傾斜するチャート層が卓越する山頂部付近で差別侵食がすすむと,その受盤側にあたる河川系の上流部では遷急点ができやすいと考えられる.こうして形成された谷頭部分の両側斜面に崖錐(洪積世堆積物)ができ,小規模な凹地地形となった.その凹地部に崖錐から水が供給され,池や湿原ができたと考えられる.池や湿原がつくられた凹地地形が周囲の堅硬なチャート層により保護されたとみられる.
保護の現状
 と留意点
 保存状態は良好である.前侵食輪廻の平坦面に形成された池であり,また高所に見られる小湖でもあり,また景観の上からもよく保存すべきである.池の西側に見られる崖錐堆積物を取り除くと池の水の供給がたたれ,涸れると考えられるので,手を加えないことが大切である.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)