福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 広野ダムと周辺の地質
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
南越前町(旧今庄町):広野(534)
選定理由 特異な地質構造が見られる地点
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  広野ダムの水源は,日野川,鈴谷川そして大河内川に注がれる岐阜・滋賀県境の,標高およそ1,200m 〜1,100m 級の分水嶺である.分水嶺には,ヤシャゲンゴロウの棲息する夜叉ケ池(78 )が存在する.美濃俣丸からの水は鈴谷川へ,笹ケ峰・天草山・源平谷山からの水は大河内川へ流れ込み,広野ダムに到達する.広野ダム自体は,集水面積は42.3 であり,そこに貯水される総水量は,1,130 万トンの小規模な多目的ダムである.ダムの周囲には,周遊道路があってハイキングやドライブコースとして,四季折々の風景を楽しむことができる.ダム提は,青少年の家や夜叉ケ池への中継基地でもある.また,ダムの堰堤から落差60 数m 下へ向かって放水される水煙は見事である.日野川本流には,夜叉ケ池を起点とする岩谷川もダムで合流する.このダムの堰堤北側と,これより下流の八飯―宇津尾―広野を結ぶ日野川本流は,東西方向の断層谷である.ダムから以西は,日野川本流を挟んで地質が大きく異なり,北側山地では砂岩を主体とする砂岩・頁岩との互層とチャートからなり,ダムの東側では頁岩やチャートが急激に増加する傾向がある.地層は北向きの同斜構造をなし,ダムサイトの北側には断層の破砕帯が数条存在する.その中でも低角の衝上断層が存在する意義は大きい.今庄町広野ダム広野ダムサイトに存在する石炭紀の地層一方,ダムサイト南側と,八飯にかけての日野川南岸に分布する岩相は,北側と大きく異なり砂岩・頁岩類の他に緑色岩,レンズ状石灰岩などが発達する.特に,ダムサイトの近傍の石灰岩中の化石に,Neoschwagerina sp., Verbeekina sp.およびFusulinella sp.などの石炭紀後期から二畳紀までのフズリナ化石が産出している.ダムサイトの展望見晴らし台の下位から,赤橋の橋脚部と東側の法面には,石灰角礫岩が小レンズ群をなして分布し,その中からFusulinella sp.Triticites sp.のフズリナ化石に加えて,石灰藻類などの化石も存在している.
保護の現状
 と留意点
 広野ダムは旧岩屋集落跡地に設営された青少年育成の場や,夜叉ケ池を始め県境の1,000m 級の山々へのハイカ−たちの中継地点としての役割も大きい.ダムサイトの地質は,この地域の構造運動を知る上でも重要な役割をなしている.自然と調和した水資源利用のあり方を考慮する例でもある.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)