福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
鳥  類
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名   称 イワツバメの集団営巣地
学   名
分 類 1 鳥類
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
特定せず
選定理由 集団営巣地または集団ねぐら
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  本種は,九州以北に夏鳥として渡来するが,分布は局地的である.本県では,多くは春期に渡来し秋期に渡去するが,少数が小浜市の北川,南川の下流域で越冬している.近年,本県も含め,全国的に繁殖地が拡大する傾向にある.本種は,本来,低山帯上部や亜高山帯に生息するが,近年,市街地も含む平野部でも多く見られるようになっている.本県では,主に海岸から山地までの河川の近くなどに生息し,橋けた,断崖や大きな建造物などに同種が集まって集団営巣地(コロニー)を形成して営巣する.古巣が繁殖に再利用されることも多く,その方が繁殖成績が良い.越冬個体は古巣をねぐらとする.本県で確認されている集団営巣地のほとんどは橋に造られている.コンクリート製の橋けたの,内側に窪んだ所の,天井と壁が直角に接した所に作られる場合が多い.このような橋への営巣例は,関西に多く,関東でも増えてきているそうである.しかし,兵庫県では,橋けたにある,深さが10cm で幅7cm の細い溝の中での営巣や,細い鉄パイプを足場にしたような営巣例もある.巣は,主につぼ型で,上部は天井などに接する.橋けたの天井と壁が作る空間の角の部分が,斜めに埋められたような構造が多く見られるが,そのような場所への営巣は少ない.営巣する場所は,地上よりも流れの上の方に多いように思われる.また,水の中に入らないと見えないような死角になる場所への営巣も多く,外敵を防ぐための工夫がされていると思われる.川では,餌になる昆虫がたくさん飛び回るようなので,橋への営巣は,餌の確保という点でも便利なのかも知れない.造られた巣が,スズメに乗っ取られたり,カラスに襲われることもあり,人里や都市に進出した集団営巣地がどうなっていくのかが注目される.
保護の現状
 と留意点
 本種そのものは,現在,「鳥獣保護法」により捕獲,飼養,譲渡などが規制されている.また,集団営巣地は,一度,破壊されると,そこを利用していた多くの個体に影響がでるので,慎重な対応が求められる.本県においても渡来数の増加や,また,橋けたへの営巣例が多くなる傾向がみられる.その動向を調査し,どのような場所への営巣が良いのかなど,その結果を橋などの新造や改造において生かすべきであろう.なお,本県では,確かな記録がないが,分布を広げているヒメアマツバメが本種の巣を乗っ取ることが知られているので,将来,繁殖するようになった場合に問題になる可能性もある.


 


(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)