福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
鳥  類
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名   称 コシアカツバメの集団営巣地
学   名
分 類 1 鳥類
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
特定せず
選定理由 集団営巣地または集団ねぐら
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  本種は,日本では,夏鳥として渡来し,九州以北,特に関西以西で多く繁殖する.本県では,3 〜10 月まで観察され,ツバメよりも渡来,渡去が遅いようである.1955 年頃より渡来数が増え,1970 年代に最も多く,大野市役所や鯖江市役所には250 〜360 の巣が作られていた.しかし,1990 年代から減少しつつある.本種は,主に河川や農耕地で主に昆虫類を捕食し,ビル,倉庫のひさしやガソリンスタンドの天井裏などに営巣する.コンクリートの橋の裏への営巣もあるが,イワツバメの方が利用する傾向が強いようである.単独営巣または同種が集まって集団営巣地(コロニー)を形成する.巣は,徳利を縦半分に切って,横向きに天井と壁に貼り付けたような形をしている.ねぐらとしても使うといわれている.本県では,単独営巣,集団営巣とも確認されているが,地域によってその密度に差がある.10 巣以上の集団営巣地は,河川付近に多いようである.そのうち福井市の運動公園や南条中学校にある集団営巣地は大きい方である.ただし,前者の集団営巣地は,カラスに襲われることが多くなり,繁殖にも大きな影響が出ている.スーパーマーケットが移転したために,人の出入りが少なくなり,カラスが侵入しやすくなったのではないかと思われる.また,後者の集団営巣地には,100 個を越える巣がある.鉄筋コンクリートの校舎のせり出した部分の下側が,升目状に二列に窪んでおり,この部分だけで約80 巣の集団営巣地になっている.体育館の方の巣が壊れているものが多いのに比べて,特殊な構造の所に作られた巣は,あまり壊れていない.構造上,カラスに襲われにくいのかも知れない.スズメが出入りしている巣もあるが,本種が次々と巣を作っているようである.付近には,ほかにもコンクリートの建物があるが,巣はあまり見られない.日野川の南条大橋には118 巣以上のイワツバメの集団営巣地があり,本種も少し繁殖している.両方の集団営巣地の間は約100m しか離れていないが,建物と橋にすみわけているように見える.
保護の現状
 と留意点
 本種そのものは,現在,「鳥獣保護法」により捕獲,飼養,譲渡などが規制されている.また,集団営巣地は,一度,破壊されると,そこを利用していた多くの個体に影響がでるので,慎重な対応が求められる.スズメに巣を奪われたり,カラス類に襲われ破壊されることが多く,本種の営巣地の減少の一原因になっている.一方,本種が建物の内部に営巣した場合,人の出入りがあるためにカラス類などの外敵に襲われにくいようである.しかし,その場合,本種の営巣による糞や羽毛による汚れやダニなどの発生があるため住民の理解が必要となる.最近の建物の吹き付け塗装は,表面が滑らかな物が多く,巣作りをするときに泥が付きにくいようである.また,コンクリートのふちで囲まれた角の多いひさしを,特に好んで営巣するという報告がある.巣をささえる面が多く,材料の泥が少なくてすみ,雨風からも守られるためと考えられる.南条中学校の建物の構造は典型的な例と思われ,参考になるかも知れない.本種の営巣などにも配慮した建物が開発,普及されることが望まれる.なお,本県では,確かな記録がないが,分布を広げているヒメアマツバメが本種の巣を乗っ取ることが知られているので,将来,繁殖するようになった場合に問題になる可能性もある.


 


(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)