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名 称 |
楢俣自然環境保全地域 | ||
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学 名 |
− | ||
分 類 1 |
昆虫類 | ||
分 類 2 |
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位 置 (2kmメッシュ番号) |
池田町:楢俣(368) | ||
選定理由 |
生態学的に貴重なもの、生物学的な多様性(種数)を保持している自然 | ||
区 分 |
A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの) | ||
解 説 |
楢俣自然環境保全地域は,越美山地のほぼ中央部に位置し,冠山峠と桧尾峠を結ぶ山稜部から福井県池田町側の標高500 メートル付近までの斜面を形成する地域である.植物相は安定したオオバクロモジ−ブナ群集の自然林で,昆虫相でもブナ自然林によって育まれた多くの種が分布している.冠山を含めた当地域周辺の昆虫相は,中部山岳地帯に分布する種が中心であるが,その中に混じって南方系の種と北方系の種がいくつか見られる点で特徴的である.南方系の種としては,今庄町芋ケ平で採集されたムネアカチビナカボソタマムシがあげられ,北方系の種としては池田町楢俣で採集されたマグソクワガタやアイヌテントウがあげられる.また,冠山からのオオダイセマダラコガネの記録も分布上大変注目すべきである.その他の昆虫類でも,甲虫類を中心に見るとオオチャイロハナムグリ(冠山),オニクワガタ(冠山),チビコクヌスト(冠山),クロケシタマムシ(楢俣),ドウイロチビタマムシ(楢俣),エゾベニヒラタムシ(楢俣),ベニモンムネビロオオキノコ(冠山),ネアカチビオオキノコ(冠山),セボシヒメテントウ(冠山),ケナガクビボソムシ(冠山),ヒサゴゴミムシダマシ(冠山),コヨツスジハナカミキリ(冠山)など,福井県内での記録が少ない種や注目すべき種が多数採集されている.また,「福井県昆虫目録第二版」(1998 )の原稿締切後,酒井(1998 )で記録したムネアカオオキバハネカクシ(冠山)とシコクチビマルトゲムシ(冠山)は,福井県から初めて記録された種であり,1988 年に新種として記載されたトウゲノメクラチビゴミムシ(冠山)は固有種,1987 年に新亜種として記載されたカンムリミヤマヒサゴコメツキは固有亜種となっている. | ||
保護の現状 と留意点 |
当地域は,学術上貴重なすぐれた自然林が広がる地域であり,1979 年に「楢俣自然環境保全地域特別区域」として指定された.しかし,福井県池田町と岐阜県徳山村をつなぐ峰越林道の整備や,金草岳山頂直下を通り高倉峠を経て今庄町芋ケ平へ通じる林道の造設に伴い,以前から進められてきた造林作業が急激に進展され,保全地域周辺部の自然環境は悪化してきている.昆虫類には,森林の乾燥化に弱い種も多く,保全地域周辺部の森林開発により,森林の乾燥化が進むと,昆虫相が貧弱になっていく可能性が高い.今後の留意点としては,ブナ等の大木が残る保全地域や冠山山頂付近のみの保全ではなく,その周辺部を緩衝地帯とした広範囲にわたる保全が必要である. | ||
(C) 福井県自然保護課 出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行) |