福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
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名   称 夜叉ヶ池とその周辺
学   名
分 類 1 昆虫類
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
南越前町(旧今庄町):夜叉ヶ池(497)
選定理由 生物学的な多様性(種数)を保持している自然
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  夜叉ヶ池は,福井県今庄町の南部,岐阜県境の三国岳から三周ヶ岳に連なる尾根の鞍部附近(標高1,100m )に位置している.登山口から池の周辺一帯は国有林であり,自然が残されている.海抜500m 付近からクリ−ミズナラ,ミズナラ−ブナ林へと海抜の上昇につれて変化し,海抜1,000m 付近では大径木を交えたブナ林に変わる.池に続く北側の平坦部は,ブナ,サワフタギ,リョウブなどの風衝林が広がっている.池の北東−南側は,チャートの堅い基盤岩からでき,池の北西−西側は,崩れ落ちた小砂や小礫でできている.周囲約230m ,面積36a ,最大水深7.7m のはまぐりの貝殻形状の池である.夜叉ヶ池周辺の昆虫相は量的には少ないが,種は豊富であり,貴重な種の生息がかなり認められている.夜叉ヶ池周辺に生息する貴重な種としては,谷間にミドリシジミ類が生息し,ジョウザンミドリシジミは貴重である.甲虫ではカミキリムシ類ナガクチキムシ類の多産地であり,また希少な種とされているもの,分布限界種が多く生息している.蜂類に関しても希少種が採集され,奥越山地には及ばないまでもバランスの取れた生態系を保持している.池には,環境庁より「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(1993 )に基き「国内希少野生動植物種」として指定されたヤシャゲンゴロウが生息している.この池には,ヤシャゲンゴロウの他にオオルリボシヤンマや数種のゲンゴロウ類その他の生物が作用し合って生態系を保っている.
保護の現状
 と留意点
 夜叉ヶ池は,前述のように小さな池である上に流れ込む谷筋もなく,また流れ出る川筋もない.したがって,周辺部からの作用は大きく池の生態系に影響を及ぼすものと思われる.近年登山者が増加し,登山道とその周辺部の自然が次第に破壊されてきている.保全補修の必要性がある.一方池の生物に対する人為的な影響は見逃せない状態であり,特にヤシャゲンゴロウの産卵期から羽化に至る5 月中旬から8 月上旬は,登山者の入り込み地域に制限を設ける必要が生じてきている.また酸性雨・地球温暖化の問題も見逃せず,池の水質,生物の生態系に及ぼす影響等長期間にわたる調査を実施し,事前に対処できる体制が必要であろう.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)