福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
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名   称 ホクリクヒメハナカミキリ
学   名 Pidonia jasha S.et A.Sait^o
分 類 1 昆虫類
分 類 2 コウチュウ目カミキリムシ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
丸岡町:山竹田(297),大野市:南六呂師( 160),南越前町(旧今庄町):夜叉ヶ池(497),木ノ芽峠(725),敦賀市:池河内(728),野坂岳(869)
選定理由 分布限界種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  体長約9mm 前後,一般的にピドニアと呼ばれる小形のハナカミキリの仲間の1 種.背面は黒色,各鞘翅には肩部から後半に掛けて太い黄色縦帯があり,その後方には幅広い黄色横帯を持ち,時に縦帯と横帯は接触し,各鞘翅の横帯も接触する時がある.♂は♀より黄色帯が発達し,全体の色彩イメージは明るい.脚は黄色いが,中・後腿節の先半分は黒い.ナガバヒメハナカミキリに近似するが,♀は触角が鞘翅端を越えず,普通は触角先端数節が白い.♂は腹面胸部及び腹部が黒いが変化する.一方,トウホクヒメハナカミキリにも類似するが,本県にはトウホクヒメハナカミキリは分布しない.本県を含む北陸地方のみに分布し,西は敦賀市周辺から北は長野県北部に至る.その分布域の北側にはトウホクヒメハナカミキリがおり,それ以外ではナガバヒメハナカミキリがいる.つまり,この3 種は置き換え種と思われ,本県にはホクリクヒメハナカミキリのみが分布することになる.本県では丸岡町,大野市,今庄町,敦賀市から記録されており,低山から山地帯に広く分布し,個体数も多い.5 月から6 月に発生し,梅雨半ば頃には姿を消す.自然度の高くない林にも生息し,花に来集する.広葉樹の細い枯枝で成育する.本種はSaito,S.and A.(1989 )によって,新種記載されたもので,今庄町夜叉ヶ池が基準産地.種小名jasha は“夜叉ヶ池”から因んだものと思われる.今回の調査には本種と同時にナガバヒメハナカミキリがリストアップされているが,再確認が必要である.
保護の現状
 と留意点
 みどりのデータバンク調査では本種の記載前であるが,ナガバヒメハナカミキリは各地より広く記録されており(福井県自然環境保全調査研究会昆虫部会,1985 ),その中には多数の本種が含まれているものと思われる.今回の調査では丸岡町,大野市,今庄町,敦賀市より記録したが,本種の記載に使用されたデータと斎藤採集の明らかに本種と判断出来る個体のみを上げている.本種を含むヒメハナカミキリ類は地域特性をよく現した昆虫群で,その中でも本種は北陸という特性を如実に示した種である.比較的人手の入った山林でも生息出来るため,現状では絶滅の危機感はない.しかし,極度な開発は環境変化に強い本種ですら,その生存を脅かすであろう.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)