福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
陸産・淡水産貝類
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名   称 キョウトギセル
学   名 Mundiphaedusa kyotoensis
分 類 1 陸産・淡水産貝類
分 類 2 柄眼目キセルガイ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
池田町:冠山(368),部子山(338),南越前町(旧今庄町):夜叉ヶ池古池(497),高浜町:青葉山東岳(1167)
選定理由 希少種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説   模式産地が京都市左京区貴船神社奥社であるキョウトギセルは,分布地が限られるとともに生息個体数も多くない希少種である.現在,生息が確認されている県外の地域は,京都北部と岐阜県西北部,滋賀県東部〜三重県北部の3ブロック7地点のみである.県内でも池田町の冠山,今庄町の高倉峠,高浜町の青葉山東岳の3地点で生息が確認されている.
 殻は小形〜中形(殻高14.0から17.0o)の円筒状紡錘形である.螺層数は10〜101/2層.半透明白黄褐色で,中央部はわずかに帯緑色をおび,螺頂は鈍く,背面では次体層が最も大きい.殻表に微細な成長脈をそなえ,体層終末部の彫刻は多少粗くなる.殻口はやや長い洋梨形状.殻口の唇縁は白色で全縁,著しく前方に突出する.上板は高くて縁位で,内部の螺状板に連続する.下軸板は唇縁に出現する.主襞は著しく長く,上・下腔壁は短く,その間に2〜3個の点状の腔間壁がある.軟体部は淡白色から淡茶色.
 本種の生息地は,県外ではスギや常緑・落葉広葉樹の落葉下や朽木の多い礫混じりの斜面に限られているようであるが,福井県では暖地性植生の強い青葉山東岳の海抜600m前後のブナ自然林床や嶺北地方の1000m前後の山地のブナ自然林の落葉下や朽木の下の腐葉土の堆積した所およびチシマザサ群落での生息が確認されている.卵生.
保護の現状
 と留意点
 本種の分布は生物地理学上注目されているが,特別な保護対策はとられていない.本県での生息地は北限にあたり池田町冠山とそれに続く今庄町の高倉峠の越美山地と嶺南地方の青葉山のブナ自然林に限定されている.しかも,生息域も狭く,発見個体数も非常に少ない.また,この種の生活史も解明されていない.近年,冠山では田代林道や峰越林道が整備され,青葉山東岳も林道が延ばされ,原生林的林相を示すブナ林が代償林化され少なくなりつつある.
 冠山・青葉山の残された頂上付近にしかないブナ自然林の保全を図らねばならない.しかも,容易に冠山峠や青葉山東岳の中腹まで自家用車でいける状態になり,観光客や登山客も多い.観光客や登山者の環境保全意識の高揚を図る必要がある.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)