福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
陸産・淡水産貝類
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名   称 カンムリレンズガイ
学   名 Syn.Otesiopsis kanumuriyamensis
分 類 1 陸産・淡水産貝類
分 類 2 柄眼目ベッコウマイマイ科
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:小荒島岳(164),和泉村:平家岳(70)鷲鞍山(103),南越前町(旧今庄町):夜叉ヶ池(497)
選定理由 分布限界種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説   カンムリレンズガイは,神奈川県足柄下郡箱根町仙石原を模式産地とするレンズガイの地方亜種である.福井県今立郡池田町冠山峠近くで1973年に確認された.それ以後,県内では大野市の小荒島岳や荒島岳,和泉村の鷲鞍山や平家岳,夜叉が池周辺などでも生息が確認されてきた.今次の調査でも生体の確認はされていないが,死殻の確認から生息しているものと考えられる.この種の生息域も個体数も非常に少ない希少種である.
 殻は東北地方のカワグチレンズガイに酷似するが,より小型で殻高5.9o,殻径7 1/3層の凸レンズ形.螺塔は低い円錐形で螺頂は鈍い.殻表の成長線は不規則に現れる.殻底は膨れ,中央の軸部は窪む.殻口は斜位.狭い臍孔がある.殻皮が濃い黄褐色から濃い栗色で,やや光沢がある.体層周縁角が鋭く,竜骨状になっている.生殖器の受精嚢は偏楕円形に膨らみ,先端は細くなる.輪卵管も比較的長い.軟体部の背面はうすく,赤味があるアメ色.本州に生息するレンズガイの両肩部が細く漆色黒縦条が現れず,側面と足部は白色.1対の後触角は暗黒色,前触角は青白い.
 この種はいずれも海抜約800〜1000b前後のブナ−ウスギヨウラクーチシマザサ群落の朽ち木や落ち葉の中に生息する.偶然発見される個体は死殻が多い.また,発見場所が常に湿っている場所であり乾燥に弱い種といえる.
保護の現状
 と留意点
 この種は特別な保護対策がとられたことはない.生息場所は,越前の南部から岐阜県美濃の国にまたがる広域の山地で,高度1100b付近に平頂面を広くもっている越美山地の極めて典型的な温帯夏緑広葉樹林,特に日本海型ブナ林相を形成している荒島岳,冠山,夜叉ヶ池のある三国岳を結ぶ線上である.しかも,生息場所が限定されている.この地域では林道整備が進み,伐採地が広がりスギなどの植林地が増加しているが,本種は残り少なくなったブナ自然林の地域に生息する.生態・生活史など多くの点で不明であるため,このブナ自然林の保全を図る必要がある.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)