福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
付着藻群落
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名   称 足羽川水系のミズオ
学   名 Hydrurus foetidus
分 類 1 付着藻群落
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
美山町:小宇坂橋上(380),池田町:足羽川・志津原(364)・白栗(384),部子川・下小畑(383)
選定理由 希少種の生息地
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説   ミズオ(Hydrurus foetidus)は寒天質の分枝した糸状藻で,ときには10p以上にもなる黄色べん毛藻の一種である.肉眼でみた感じでは,体のつくりが複雑で進化した種類にみえるが,顕微鏡観察では寒天質の透明な基質にだ円形の細胞がたくさん埋まっているだけの簡単な構造をしている.本種は冬〜春先には寒天質の群体が大きく育って,数pの房状になるが,その他の期間は姿を消す.このその他の期間は一部の単細胞個体がそのまま厚膜を被ってシスト(胞嚢)になり,小さな塊になって礫表面に付着し,休眠しているという.藻類は一般に生育条件の悪い冬季にシストで休眠することが多いが,本種はその逆で,夏〜秋に休眠し,冬〜春先に糸状藻の群体が大きく育つ.代表的な冷水性の藻類といえる.我が国では中部以北にみられるという.本調査では志津原から小宇坂橋上まで広く出現し,とくに支流の部子川(下小畑)ではたいへん多く,優占してみられた.フィールドでのシスト形成のしくみなど分かっていないことも多く,生態的に興味深い付着藻である.
保護の現状
 と留意点
 足羽川はその河川勾配が13.7‰(パーミル)で,県内の他河川と比べて比較的急勾配な河川である.河川形態もこれにあわせてAa型(山地渓流型),Aa−Bb移行型(中間渓流型)が全流程約60qのうち大部分(80%以上)を占め,ミズオの分布もほぼこの中に含まれる.本種の生物学的水質階級などの生態的位置付は不明なことが多いが,冷水性・渓流性・清水性等が予想される.県内で日野川でも観察されているが,分布地は少なくめずらしい付着藻といえる.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)