福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
付着藻群落
[先頭ページ] [前のページ] [次のページ]
名   称 瓜割名水公園の淡水産紅藻ベニマダラ
学   名 Hildenbrandia ribularis
分 類 1 付着藻群落
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
若狭町(旧上中町):瓜割名水公園(1011)
選定理由 希少種の生息地
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説   ベニマダラ(Hildenbrandia ribularis)は淡水産紅藻類で,冷・清水域,木洩れ日環境の指標生物である.本種は水のきれいな日陰の流水の底礫・岩面等に赤色の斑点として現れ,成長して礫・岩面上を鮮紅色〜赤褐色におおいつくす.軽くこすったくらいでは剥離せず,礫・岩面それ自体が赤色を呈しているようにみえる.この赤色は紅藻類特有の同化色素であるフィコエリトリンによるものである.フィコエリトリンの吸収スペクトルはクロロフィルに吸収できない波長500〜600nmの光である.従って樹林の林冠部のクロロフィルに吸収された後の残りの光,つまり林床に届く木洩れ日の光をよく利用しているといえよう.
 ベニマダラの生息地としては岐阜県の菊水泉が有名であるが,福井県では上中町の瓜割名水公園が最も規模の大きいものといえる.ここでは湧水口およびその下流の河床の礫・岩面を中心に,瓜割名水公園のほぼ全水域にベニマダラの優占着生がみられ,「赤い石」として公園の名物にもなっている.小規模のものとしては「岡の泉」(福井市岡保),上味見川等でも確認されている.
保護の現状
 と留意点
 瓜割名水公園は環境庁の日本名水百選の一つに指定され,水域の保護が進みつつあるので,ここのベニマダラは名水の水生生物の一つとして,また,清水域で木洩れ日環境の指標生物として世代を重ねていけるものといえる.
 瓜割名水公園のベニマダラが優占生育する場所の水環境は次のようである.
  • (1)水温:年間通して12℃前後である(湧水口).
  • (2)照度:暗い所−200〜400ルクス,明るい所−800〜1100ルクス,公園の外−13000ルクス(1988.   10.2 くもり)
  • (3)底質:径10〜50pの礫・岩石でできており,安定している.
  • (4)流量:清列な湧水が豊富に流れており,年間通して枯れることはない.
 瓜割名水公園にはスギ,スダジイ,モチノキ,アスナロ等の樹木が茂っており,湧水口及びそこから流れる水域は木洩れ日環境になっている.ベニマダラの生育を維持するためには,この木洩れ日環境を保ってやることが必要である.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)