福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
付着藻群落
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名   称 九頭竜川中流域の付着藻群落
学   名
分 類 1 付着藻群落
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
松岡町:五松橋(402)・志比堺(472),永平寺町:下浄法寺(436)
選定理由 生物的多様性(種類)を保持している生息地
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解 説  河川は単なる水の流れではなく,河川生態系として把握する必要がある.つまり,河川には浅くて流れの早い瀬の部分と,深くて流れのゆるい淵の部分が存在し,これらが蛇行しながら流れ,この中に生産者としての各種の付着藻,消費者としての水生昆虫・魚類等いろいろな生きものを育んでいるのが河川本来の姿である.これらの生きもので河川生態系が維持されるなかで,水の汚れを吸収する自浄作用も働いている.
 九頭竜川中流域の範囲は見方によっていろいろあるが,ほぼ勝山橋あたりから福井市に入って九頭竜川最後の瀬にあたる中角橋あたりまでといえよう.中流域が健康的な水域であるという事はこれより上流の姿を反映したものであり,水系全体が河川本来の姿であることにつながっているともいえる.
 九頭竜川中流域の付着藻群落のおおよその状況は次のようである.
◆藍藻:ビロウドランソウ(Homoeothrix janthina),ユレモ(Oscillatoria sp.
◆珪藻:アクナンテス(Achnanthes japonica),クチビルケイソウ(Cymbella tumida,C. turgidula, C. ventricosa),ディアトマ(Diatoma vulgare),ニッチア(Nitzschia dissipata),ハリケイソウ(Synedra ulna
◆緑藻:カワシオグサ(Cladophora glomerate
 以上にあげた付着藻を中心に,100種位の藻類で豊かな付着藻群落が形成されている.河川の生産者として,河川の自浄作用の担い手として十分に機能しているといえよう
保護の現状
 と留意点
  付着藻群落は河川生態系の生産者として,食物連鎖の出発点として,また河川の自浄作用の担い手として位置づけられている.九頭竜川は全国の多くの河川と同様に,流域には各種の人工構築物,廃水の流入,河川工事等が見られるが,流量は豊富で,河川の生きものへの配慮もみられ,今のところ基本的には良好な姿を維持しているといえる.
 九頭竜川中流域は,上記の解説で記したようにほぼあるべき姿の付着藻群落がみられる.九頭竜川が各種の水生昆虫・魚類等様々な生きものを育む水域として維持していくためには河川生態系の生産者に相当し,他の生物の餌になる付着藻群落が良好かどうかという観点で見る必要がある.中流域は上流域の影響をうけるところであり,象徴的な意味も含めて,県内最大河川の九頭竜川中流域が,各種の生きものを育む良好な水域であるよう見守っていくことが必要である.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)