福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
[先頭ページ] [前のページ] [次のページ]
名   称 鷹島の照葉樹林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 常緑広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
高浜町:鷹島(1147)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  鷹島は,高浜町塩土の沖約200m の海上に浮かぶ周囲約410m ,標高38m の小さな島である.島の南部は傾斜45 度ほどもある急斜面で,北部は断崖となっている.南岸には弁財天を祀った祠がある.陸から近いため,海水浴や釣りで訪れる人は多いが,植生はよく保護されており,島全体が原生的な照葉樹林に被われている.林の高木層は,ナタオレノキ,タブノキ,モチノキ,エノキなどで構成され,スダジイは見られない.林間には,ヤブツバキ,モチノキ,ヤブニッケイ,トベラ,マルバグミなどが生育し,林床にはヤブツバキ,タブノキ,ヤブラン,ベニシダ,ムサシアブミ,ヤブコウジ,ヨウシュヤマゴボウ,ヒヨドリジョウゴなどが低い被度で見られる.1971 年に高浜町が実施した調査では62 種の植物が確認されている.この森林の学術的価値を高めている植物は,ナタオレノキ(別名シマモクセイ)とムサシアブミである.ナタオレノキはモクセイ科の常緑高木で本州(福井県以西),八丈島,四国,九州,小笠原,沖縄などに分布している.鷹島と小浜市蒼島に隔離分布し,ここを自生北限としている.1971 年と1983 年に高浜町が実施した調査によれば,倒木を含め全部で37 個体が確認されている.そのうち目通幹囲2m 以上の大木が4 個体あり,最大のものは根元周囲4.01m ,主幹の目通幹囲2.11m ,樹高7.3m ,推定樹齢300 年であった.なお,鷹島の東側にやや離れて稲根島と呼ばれる小島があるが,ここでも20 個体あまりのナタオレノキが確認されている.ムサシアブミ(サトイモ科)は,本州(関東以西)〜沖縄に分布する暖地性の草本である.県内で自生が確認されているのは,鷹島を除けば同町の上瀬と小浜市蒼島だけであり,ナタオレノキと同じくここを自生の北限とする貴重な植物である.
保護の現状
 と留意点
 鷹島のナタオレノキは高浜町が天然記念物に指定して保護している.しかしながら,陸に近いために森林をとりまく環境は良いとはいえない.更に最近では,サギ類がコロニーをつくったため糞害,食害等の被害が著しく,枯損木も見られる.高浜町ではサギ類への対策を講じ,保護に努めている.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)