福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 蒼島の照葉樹林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 常緑広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
小浜市:蒼島(1085)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  蒼島は,小浜市加斗の海岸から約1 qの距離にある面積約2ha の島である.地形的には,南北に走る尾根から海へ向かう急な斜面が大半を占めており,東側の岩場には洞窟も見られる.本島には弁財天を祀る蒼島明神があり,その社叢林として保護されてきたためか,植生には人手が加わった形跡がなく,原生状態の照葉樹林となっている.この森林は,1951年に「蒼島暖地性植物群落」として国の天然記念物に指定されている.福井県の植物分野での国指定天然記念物は,この他に専福寺の大ケヤキ,常神のソテツなど5 件あるが,いずれも老木や巨木が単木として指定されているもので,森林全体が指定を受けているのはここだけである.特定の植物や植生を保護するためには,本来このような指定方法が望ましいと思われる.本島の森林を概観すると,高木層にスダジイとタブノキが優占し,ヤブニッケイ,ナタオレノキ,モチノキなどが混じる.亜高木層はヤブツバキが優占し,それにヤブニッケイ,ナタオレノキ,タブノキなど高木層の構成種が加わる.低木層はヤブツバキ,アオキが優占し,他にシロダモ,ヤブニッケイ,スダジイ,トベラ,マルバグミ,ハゼノキなどが見られる.林床にはムサシアブミ,ベニシダ,ヤブラン,カラタチバナ,ヤブコウジ,ヒトツバ,ムベ,テイカカズラなど常緑の草本類やツル植物が生育している.これまでに55 科122 種の植物が記録されているが,中でも特筆すべきは,この島を北限産地とするナタオレノキとムサシアブミが,かなりの個体数で自生していることである.このような分布上貴重な種をはじめ,多くの暖地性植物によって構成される蒼島の森林は,若狭地方の島の極相林として極めて重要である.
保護の現状
 と留意点
 国の天然記念物に指定されているため,今後も伐採等の破壊を受けることはないと考えられる.しかし,同じ若狭湾の島である鷹島や冠者島のようにサギ類がコロニーを作り,その影響で森林が衰退する可能性はある.現在は,カラス類がねぐらとして蒼島の森林を利用しているため,サギ類の進入が阻まれているようである.しかし,島の周辺や沿岸域の環境に変化があれば,鳥類の行動に影響が出ることも予想されるので,今後はその点にも留意して保護を考える必要がある.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)