福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 内外海半島の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 常緑広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
小浜市:内外海半島(1056,1057,1071,1072)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、代償植生であっても郷土景観を代表する植物群落
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  内外海半島は,若狭地方の中央部に位置し,その北部には久須夜ヶ岳(619.1m )が形成されている.若狭湾に面する北斜面は,極めて急峻で裾は断崖絶壁となっている.北斜面の海岸近くには花崗岩が分布し,多くの節理や海食作用による地形が見られ,特に蘇洞門は名勝として有名である.半島の海岸部ではスダジイ林(ヤブコウジ−スダジイ群集)や海岸低木林(マサキ−トベラ群集)を中心とする照葉樹林が分布している.また,堅海地区の久須夜神社には,数百年は経過していると考えられるスダジイやタブノキを主体にした社叢林がある(別掲).中腹から山頂にかけては,全体的にはコナラ,イヌシデ,ミズナラを優占種とした二次林が広がっているが,少なくとも数十年以上は人の手が入っていないところが多く,各所にかなり自然度の高い植生が点在し,複雑な林相を呈している.ミズナラ,イヌシデによる群落は特に標高400m 以上に分布し,相観的に安定した夏緑樹林を形成している.林冠はこの他コナラ,クマシデ,ウリハダカエデ,ヤマモミジなどを混じえ,林間にコハウチワカエデ,ヤマボウシ,クロモジ,ヒサカキ,キンキマメザクラ,リョウブ,チャボガヤなど,林床にはヒメカンスゲ,トキワイカリソウ,ヤブコウジなどを中心に多様な種が生育している.稜線付近や北斜面にはケヤキの優占した林分がかなり見られ,この地域の急傾斜地の植生を特徴づけている.その他サワグルミの優占する林分もかなり見られる.これらは,日本海側の渓谷や渓畔に見られるチャボガヤ−ケヤキ群集とジュウモンジシダ−サワグルミ群集に属するものといえる.更に,山頂近くの稜線には,県内では比較的希なヤマモミジが優占する林が点在しているなど,多様な群落が見られるとともに,植相においても希少なラン科植物や樹種などが生育し,植物地理学的にも当地域は興味深いといえる.
保護の現状
 と留意点
 半島の北側は,その地形からも人の手が入ることは今後も考え難く,自然更新下のもとで推移するものと思われる.しかし,南側については中腹付近まで伐採,植林が進んでいるところもある.今後,久須夜ヶ岳エンゼルラインに伴う開発も予想されるが,現地の詳細な調査とその結果に沿った自然環境保全に十分配慮した開発計画が望まれる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)