福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 常神半島の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 常緑広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
若狭町(旧三方町),美浜町:常神半島(1000,1001,1015,1016)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  常神半島は,三方五湖の西から北西へのびる半島で,平地は少なく,海岸線は出入りに富み,海食崖も良く発達する.半島の尾根筋は,三方町と美浜町の境界となる.半島の先端部から約500m 西に福井県の島では最も大きい御神島(別掲)がある.本半島の植物はスダジイ,タブノキ,カゴノキ,リンボク,コシダなど暖地性要素が多い.本半島が日本海側での北限と考えられる種としてホソバニセジュズネノキ,アリドオシ,ホウライカズラ,ヌマダイコン,アオキ,ヤマイバラ,フウラン,イヌマキなどがあげられる.また,常神地区のソテツの巨木(根元から5 本に分かれ,主幹の周囲は5.4m ,高さ約6m ,雌株)は国の天然記念物に,小川神社のカゴノキの巨木(幹周り5.3m ,高さ約13m )は県の天然記念物に指定されている.半島部は,地形が急峻なため人為的な影響が比較的少なく,特に集落の後背斜面にはスダジイを主とする暖地性常緑広葉樹が優占する林が,重厚な相観を形成している.特に半島の南西斜面には,タブノキやスダジイを主とする自然林が残存している.これらの林分は,植物社会学的にヤブツバキクラスの自然植生である,イノデ−タブノキ群集,ヤブコウジ−スダジイ群集,ホソバカナワラビ−スダジイ群集などに識別される.その代表的な林分は,沿岸部に位置する集落の社叢林として見られる.すなわち,常神神社ではヤブコウジ−スダジイ群集が,神子神社ではイノデ−タブノキ群集が,小川神社では林床にホソバカナワラビが高被度で生育するホソバカナワラビ−スダジイ群集が分布する.一方,半島の北東側斜面は,南西側にまさる急峻な地形で,そこにはスダジイ林とともにケヤキ林が分布している.また,遊子地区付近にはサカキが高密度に分布している林分が見られ,生態学的にも興味深い.
保護の現状
 と留意点
 半島部は地形が急峻なため,全域にわたってスダジイ林を主とする常緑広葉樹が優占する林が維持されてきた.しかし,近年道路の改修及び拡張のため伐採が進み,アカマツ林,コナラ林などの二次林が目立つようになってきている.また急峻な地形でありながらも,一部ではスギ植林,梅園の造成などが進みつつある.できるだけ自然林の保全に配慮して開発が進められるべきである.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)