福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 雄島の照葉樹林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 常緑広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
三国町:雄島(734)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  雄島は,対岸と300m ほどの橋で結ばれた,周囲2.1km ,面積2.1ha の島である.この島は,原生的な照葉樹林に被われているが,これは大湊神社の社叢林として島全体が神域化されてきたためである.また,周囲には板状節理や柱状節理が発達した岩場が見られ,越前海岸有数の景勝地として年中観光客が絶えない.本島の植生は,中央部に広がる照葉樹林,南東や北西斜面のススキ・ササ草原,海岸荒原植生の群落帯からなっている.これらのうち,特に雄島を特徴づけているのは,中央部に広がるタブノキ,スダジイを主とする照葉樹林である.最も優占するのはタブノキで,樹高15m 以上,胸高直径50cm 以上におよぶ大木が林立して林冠を形成する.林間にはヤブニッケイ,ヤブツバキ,ヒメアオキ,シロダモ,マサキ,マルバグミなどの照葉樹林に共通する樹種が生育し,林床には全域にわたってキノクニスゲが高密度に生育して,イノデ−タブノキ群集のキノクニスゲ変群集を構成する.また,社殿の周辺ではタブノキ林に隣接して小面積であるが,スダジイ林が成立する.本林分は,林冠には優占するスダジイの他,タブノキ,ヤブニッケイなどが混生し,林間にモチノキ,ヤブニッケイ,ヤブツバキが,林床にはヤブコウジ,キノクニスゲ,ヤブランなどが優占してヤブコウジ−スダジイ群集を構成する.さらに,北部の一角には,ヤブニッケイの純林が形成されている.高木層の多くは幹径20cm ほどで大木はなく,萌芽更新によって維持されていると思われる.これだけの規模でヤブニッケイが純林を形成するのは珍しいといわれている.雄島の植物には,ハマウド(舳倉島以西),ツワブキ,イソヤマテンツキ(能登半島以西),キノクニスゲ(福井県以南・絶滅危惧U類),ヤブニッケイ(富山県以西),トベラ,マルバグミ,マルバシャリンバイ(佐渡島以西)など,日本海沿岸域における分布の限界に近い植物地理学上重要な種が生育する.
保護の現状
 と留意点
 現在,ほぼ原生林の状態で残されている.しかし最近,木の寿命のためか,あるいは酸性雨などの公害の影響なのか倒木や枯損木が目立ってきている.今後はこれらの原因を解明しながら保全に務めるべきである.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)