福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 池河内湿原の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 低層湿原
位   置
(2kmメッシュ番号)
敦賀市:池河内(728,729)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  池河内湿原は,敦賀市の市街地から北東へ約6km 離れた滋賀県との県境付近の標高約300m 地点にある.周囲を低山群によって囲まれた凹地で,南北約500m ,東西約150m ,面積約4ha の範囲に広がる.本湿原を潤す水は,かなり広い範囲からの湧水,及び周囲から流れ込む水によって潤されている.湿原の南東側は通称「阿原ケ池」といわれる池となっているが,この池も近年,ヨシ,スゲ類などの水草の侵入,堆積によって浅くなってきている.現在,湿原内には木道が施設されて,動植物を保護管理・観察できるようになっている.湿原の大部分は主にハンノキの湿生林となっている.高木層は,ハンノキが純林状に優占し,低木層は比較的豊富でイヌツゲ,ヤブデマリ,ミヤコイバラ,ノリウツギなどの低木が高頻度に生育する.草本層にはカサスゲなどのスゲ類が優占する他,シロネ,セリ,ヒメシダ,ミゾシダなどヨシクラスの植物が多数生育する.このハンノキ林はマアザミ,サトメシダ,ヒメザゼンソウ,サワオグルマなどを標徴種とするマアザミ−ハンノキ群集にまとめられている(宮脇・奥田 1990 ).また,この湿原の中央部は,極端にハンノキが倭性化し草原状となって,ミズゴケが繁茂し,その一部が高層湿原状となっている.ここには,多様な湿生植物の群落が形成されている.湿原内には,今や希少種となっている植物が多く生育している.主なものをあげると,カキツバタ,コバギボウシ,ミツガシワ,ヤナギトラノオ,コウホネ,ミズドクサ,ドクゼリ,ヒメザゼンソウ,カキラン,サワラン,トキソウ,ヤチスギラン,ミカズキグサ,モウセンゴケ,オオニガナ,サンショウモ,サワオグルマ,マアザミなどである.ヤナギトラノオ,ミズドクサは,本県ではここだけに生育し,日本の南限とされている.
保護の現状
 と留意点
 1965 年に県の自然環境保全地域に指定され,保護対策が講じられている.木道が施設されて,植物を観察できるようになっているが,湿原内への踏み込み,ミズゴケなどの湿原植物の採集の禁止など,これからも保全に務めるべきである.また,湿原の乾燥化に気をつけるとともに,周辺から富栄養な水が流れ込まないように配慮する必要がある.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)