福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
[先頭ページ] [前のページ] [次のページ]
名   称 大堤の水生植物
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 浮葉植物群落
位   置
(2kmメッシュ番号)
三国町:加戸大堤(615)
選定理由 代償植生であっても郷土景観を代表する植物群落
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  大堤は,陣ケ丘台地の東側,三国町と芦原町を結ぶ加戸街道沿いにある周囲約1.3km の池である.本池は下流域の水田への潅慨用水池として筑堤されたものであるが,今日では九頭龍川からの用水が整備されたためにその役目は終えている.水深は深いところで約2m で,池底に周囲から泥が流入するため,年々浅くなっている.別名「カモ池」といわれ,カモ類の楽園ともなっていて,訪れる人の目を楽しませてくれる.現在,一帯は加戸鳥獣保護区として保護管理されている.本池の植生は,東側の一角をハスが占めている他は,ほとんど園芸種のスイレンによって被われ,極めて単純である.また,中ほどには面積30 〜40 u位の浮島が3 カ所ほど見られ,そこにはヨシ,チョウジタデ,アメリカセンダングサや背丈の低いヤナギ類が生育している.1975 年に三国町が調査した報告によると,本池にはスイレン,ハス群落の他にヒツジグサ,コウホネ,ジュンサイ,ガガブタなどの水生植物がそれぞれ小さな群落を形成していたことが記録されている.しかしながら,今回の調査ではどの種も確認されなかった.これらの種が消滅あるいは衰退したのは,水位の変動や水質の悪化に加え,スイレンの繁茂も要因の一つと思われる.本池のスイレン群落は,移入した園芸種が増えたものと言われるが,現在では,池全面を被うような勢いで広がっている.前述の4 種はスイレンと同じ浮葉植物であるため,生育空間を確保する競争に負けて消滅したとも考えられる.本池は,植生が単純化しているとはいえ,水草の生育する環境を十分に保っている.また,初夏,一面に咲くスイレンの花は,今ではカモ類とともに本池の名物となっている.
保護の現状
 と留意点
 現在,県の鳥獣保護区に指定されているが,池の周囲は開発が進み環境が変化しつつある.そのため水の枯渇も心配されるが,潅慨用水としての役目がなくなった今日,地域の人から池を埋めて欲しいという声もあると聞く.池そのものが開発の対象にならないことが望まれる.




(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)