福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 長尾山のサクラバハンノキ群落
学   名
分 類 1 植生
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
勝山市:村岡町 長尾山(227)
選定理由 学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  長尾山は,勝山市のほぼ中央に位置する丘陵地で,北側を滝波川,南側を暮見川が流れている.東西に細長く伸びたその地形はなだらかな台地状で,東から西へ緩やかに傾斜し,標高は中央部で240m ほどである.人里に近いこともあって,植生の大部分は,アカマツ林,クリ,コナラ,アベマキなどの二次林,植林されたスギ林となっている.本地域は気候的には暖温帯に属することから,かつては照葉樹林帯上部の植生であるシラカシやウラジロガシなどが優占する森林に覆われていたと考えられるが,現在ではその片鱗も認められない.この山の西側の谷筋や湧水で潤される林縁部に,ハンノキ群落やサクラバハンノキ群落が見られ,両者が場所によって混在したり,純群落を作ったりしている.サクラバハンノキはカバノキ科の落葉樹で,1997 年に環境庁が発表した植物版レッドリストには「準絶滅危惧」として掲載されている.福井県でも自生地は少なく,奥越地方では本地域でのみ確認されているにすぎない.本地域のサクラバハンノキの生育地は3 カ所あり,その個体数は胸高直径5 p以上のもので70 個体ほどである.また,個体サイズは最大のもので胸高直径約45cm ,樹高約17m である.この最大個体を含む群落では,構成種として,高木層にサクラバハンノキ,ハンノキ,スギ,亜高木層にサクラバハンノキ,スギ,エノキ,コシアブラなど,低木層にミヤマウメモドキ,ハイイヌツゲ,コシアブラ,ウワミズザクラ,ヤマウルシなど,草本層にコバギボウシ,ショウジョウバカマ,ナツヅタ,ツボスミレなどが生育している.
保護の現状
 と留意点
 サクラバハンノキの生育環境は湿地であるため,集水域の植生も含めて保護していく必要がある.現在,長尾山では県立恐竜博物館(仮称)を中心とした公園を造成中であるが,地元勝山市では,すでにオオタカ生息のための保全エリアを設けるなど自然保護への配慮を重視している.本種が生育する湿地も保全されることとされている.今後は生育状況等を継続的に観察していく必要があろう.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)