福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 越前甲の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
勝山市:越前甲(223)
選定理由 代償植生であっても郷土景観を代表する植物群落
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  越前甲(1319m )は勝山市の北方に位置し,地元では「大日」と呼ばれて親しまれている.新又峠への分岐点近くからヘビノネゴザが多く出現するが,この辺りでは鉱山の試掘があったといわれている.石川県との県境である大日峠から高度で約150m 上がった地点は,斜面がきつくなると同時に登山道の左右でブナの成長に大きな差がみられる.石川県側は樹高が10m ,胸高直径も30cm に達するものもあって階層構造が形成され,草木層ではオクノカンスゲが優占している.一方,福井県側の南東斜面では高木のブナはなく,5m 前後のブナがマルバマンサクと混成した二次林となっている.これは,横倉地区からの炭焼きが昭和30 年代前半まで続けられたためと考えられる.標高1150m を過ぎると風衝低木林の様相が顕著になり,樹木の生育が阻害されている状況がうかがえる.標高1200m 地点の平坦な西斜面では,1.5 〜3.5m のナナカマド,アズキナシ,オオカメノキが,低木層ではチシマザサが,草木層ではオクノカンスゲが優占している.南東の急斜面では樹高が3m とさらに低くなり,ブナ,コバノトネリコ,オオカメノキが生育している.頂上周辺の緩斜面にはミズキ,オオカメノキ,チシマザサなどが繁茂している.越前甲西側登山道として,鳥越峠から須ヶ倉壁を経由するルートがあった.須ヶ倉壁の岩場にはクロベ,キタゴヨウ,ホンシャクナゲ,オサシダなどが成育しているが,夏場のアプローチは困難である.また,越前甲から加賀大日へのルートも夏場は極めて困難である.本地域は,冬季には日本海からの北西の季節風の直撃を受けるため,豪雪時には横倉側,細野側で規模の大きな表層雪崩が発生している.
保護の現状
 と留意点
 近年,恒例的に大日登山が実施され,登山道は整備されているのは喜ばしいが,頂上周辺が刈り払われ広場が大きくなりつつある.これ以上人手を加えぬことが望ましい.また,地元ではキタゴヨウやシャクナゲが多い山として知られ,かなり乱獲もされたようだが,本山の貴重植物として保護されることが望まれる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)