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名 称 |
小沢のイヌブナ林 | ||
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学 名 |
− | ||
分 類 1 |
植生 | ||
分 類 2 |
冷温帯落葉広葉高木林 | ||
位 置 (2kmメッシュ番号) |
大野市:小沢(220) | ||
選定理由 |
自然植生もしくはそれに近い植生 | ||
区 分 |
B(県レベルで重要なもの) | ||
解 説 |
大野市小沢川左岸の標高560m から590m 付近にかけて,イヌブナ林が発達している.周辺には笹生川ダムに面した秋生や蝿帽子川にも生育地がある.イヌブナは,福井県下では名田庄村や高浜の青葉山,敦賀の西方ケ岳などにも生育しているが,いずれも生育密度は小さい.一般にイヌブナ林はブナ帯下部に成立し,日本海側ではブナのように広範囲に群落を形成することはごく稀である.日本での分布も,本州,四国,九州の主として太平洋側に偏る植物であることから,福井県のイヌブナ林は,その意味で貴重な林であるといえよう.本林分は川に沿った林道の東斜面に見られ,面積はさほど広くないが,中心部はかなりイヌブナが高い被度を示し注目される.本林分を含む一帯の林には,胸高直径が50cm 以上の木が見当たらないことから,過去に一度伐採され,その後に生長した二次林と考えられる.イヌブナ林の林冠は,イヌブナ,ミズナラ,クマシデなどで構成され,林床にはシロモジ,チャボガヤ,オオカメノキ,コアジサイ,オクノカンスゲなどが多く生育している.注目すべきは,各層にイヌブナの若木がよく生育しており,比較的安定した林を形成していることである.特に高木層のイヌブナは生育も良好で,秋には多くの果実をつけている.イヌブナの上部に生育するブナ林と群落組成を比較すると,基本的に大きな差は見られず,ハイイヌガヤ,チャボガヤ,ヒメモチ,ヒメアオキ,チシマザサ,マルバマンサク,オクノカンスゲなどブナ林との共通種が多く出現し,日本海側のイヌブナ林を特徴づける組成になっている.植物社会学的にはチャボガヤ−イヌブナ群集に属し,同群集の分布の東端と考えられている.また,太平洋側要素のシロモジが,日本海要素のオオバクロモジよりも高い被度で見られる地点もあり、注目される. | ||
保護の現状 と留意点 |
現在は,周辺の比較的自然度の高いブナ−ミズナラ林に囲まれ,肥沃な土地に安定した状態で生育している.この地域は,山間地で人為的干渉は少ないが,林道の延長工事が進められており,工事の施行方法によってはイヌブナ林に重大な影響が出てくるものと考えられる.今後とも保護していきたい林分で,道路建設をはじめとする人為的な破壊が進まないことが望まれる.
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opyright (C) 福井県自然保護課 出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行) |