福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 薬師神谷のアベマキ林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
勝山市:薬師神谷(203)
選定理由 代償植生であっても郷土景観を代表する植物群落
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  勝山市滝波川沿いにある薬師神谷集落の裏山に,人家近くから尾根筋にかけてアベマキ林が分布している.アベマキは,クヌギによく似た落葉高木であるが,葉の裏に星状毛が密生し灰白色で,樹皮にはふぞろいの粗い縦線があり,コルク層が発達するので,遠くからでも確認できる.アベマキは,昔から薪炭材,シイタケ栽培の原木などによく利用されてきた.また樹皮の厚いコルク層は,木栓等としても利用されてきた.日本海側では山形県まで分布するが,多くは本州中部以南に分布する暖地性の植物である.福井県内でのアベマキ林の分布は少なく,本地域をはじめ福井,今立,鯖江,南条等や嶺南の一部に見られるだけである.高木層のアベマキは,胸高直径30cm を超えるものが多く,中には50cm 近いものもあり,フジ,キヅタ,ナツヅタ等が着生している.亜高木層は,高木層のアベマキが厚く林冠を形成するため貧弱で,ケンポナシ,ケヤキ,エゴノキ等少数が生育するのみである.低木層はユキバタツバキ,ヒサカキ,オオバクロモジが優占し,イヌツゲ,ムラサキシキブ,チマキザサ,ヤマツツジ等が生育している.草本層にはヒサカキ,ヤマツツジ,ユキバタツバキ,イヌツゲ,ヒメアオキ等の木本が優占している.県内に広く分布する二次林には,コナラが優占しているところが多い.本林分は,二次林か植林されたものかは定かでないが,本県では珍しく貴重といえる.
保護の現状
 と留意点
 県内のアベマキ林は,戦前,戦後しばらくの間は,コルクを利用したりするため管理されてきたが,現在は放置された林が一部に見られるのみで,その多くは伐採されてスギ植林等に置き換わっている.本林分はアベマキ林として残されている数少ないものである.現在は,あまり人為的干渉はないが,スギ植林が周辺で進められているので留意したい.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)