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名 称 |
蠅帽子川流域のキタゴヨウ林 | ||
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学 名 |
− | ||
分 類 1 |
植生 | ||
分 類 2 |
温帯針葉高木林 | ||
位 置 (2kmメッシュ番号) |
大野市:蠅帽子川流域(197) | ||
選定理由 |
自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地 | ||
区 分 |
B(県レベルで重要なもの) | ||
解 説 |
笹生川ダムに注ぐ蠅帽子川に沿って1 時間程登ると,左岸にキタゴヨウやヒノキの林がある.谷は深く両岸は急で,近くには秋生断層が走っている.また年間通して雨量が多く,水量も豊かである.この谷に沿って登る道は,秋生集落から蠅帽子峠を経て岐阜県大河原に通じる歴史的道路で,かつては県内各地,北陸,美濃方面からの人々が通行した重要幹線道路であった.その道路も今は,峠近くの所々に確認される程度で殆ど残っていない.福井県内のキタゴヨウは,越美山地に主として分布している.中でも和泉村の荷暮川上流域から,小沢川周辺の稜線沿いでは,小規模ながらキタゴヨウの純群落が確認されている.蠅帽子川両岸の尾根筋に見られるキタゴヨウ林は,林冠を形成する植物として,キタゴヨウのほかヒノキ,ブナなどが生育し,林間にはホンシャクナゲが群生する他,キタゴヨウ,ヒノキ,ネジキ,ソヨゴ,アオハダなどが見られる.林床には,ホツツヅ,トウゴクミツバツツジ,スノキ,アクシバ,ツクバネなどの木本類が生育している.また,隣接するヒノキ林,ヒノキ−キタゴヨウ林にも,ホンシャクナゲ,ネジキ,スノキ,アクシバ,トウゴクミツバツツジなどのツツジ科植物が優占するのが見られる.キタゴヨウ林の上部はブナ林が広がり,ヤマグルマ,ミヤマチョウジザクラ,キバナイカリソウなどの貴重な植物も生育している.林の特徴として,林間にホンシャクナゲが群生していること,ホツツジをはじめツツジ科植物が多いことがあげられる.これは稜線上の貧栄養岩礫地であり,土壌水分も少ないためと考えられる.このような自然環境下に成立する自然林は県内では少なく,貴重である. | ||
保護の現状 と留意点 |
本地域のキタゴヨウ林は,立地が植林に不適な痩せ尾根や急斜面の岩礫地であったため残ったものと考えられる.現在では近くまで林道が延長され,ブナやミズナラの伐採や緩斜面にスギ植林が進められている.これ以上植林地が拡大し,キタゴヨウ林とそこに生育する貴重な植物に影響が及ばないことが望まれる.
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(C) 福井県自然保護課 出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行) |