福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 神明山のアカマツ林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 温帯針葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:南六呂師(160)
選定理由 代償植生であっても郷土景観を代表する植物群落
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  神明山は,六呂師高原の中央部に位置する標高596m の小高い山である.周辺には奥越高原青少年自然の家と福井県自然保護センターがあり,本山はこれらの施設が管理するキャンプ場や自然観察の森として利用されている.本山の植生は尾根を境に林相が異なり,北斜面がクリ−コナラ林,南斜面がアカマツ林になっている.このアカマツ林は,一帯が薪炭林として活用されていた時代から,地元の留山として一部保護されてきたもので,林を構成するアカマツは,樹高20m ,胸高直径50cm を越す大木が大半を占めている.アカマツ林は二次林として県内の海岸付近から山地帯まで広く分布し,特に嶺南地方では大面積で見られる.しかし,本林分のような大木の揃ったアカマツ林は県下でも珍しく,また最近,海岸から内陸低地にかけてのアカマツ林は,蔓延するマツクイムシ被害のため危機に瀕している状況である.本山は,アカマツ林の分布域としては上部に位置しており,気候的に冷涼なためか現在のところマツクイムシによる被害は確認されていない.林下の樹木は,薪炭材として昭和30 年代まで伐採されてきたが,その後放置され,現在ではコナラ,マルバマンサク,コハウチハカエデ,シナノキ,アズキナシ,ウワミズザクラなどの落葉樹が樹高10m ほどに成長し,亜高木層を形成している.また,低木層にはオオバクロモジ,エゾユズリハ,ヒメアオキ,ハイイヌガヤ,マルバマンサクといった日本海要素の種に加え,わずかながらブナの生育が見られる.六呂師高原には所々にブナが点在し,一部には小規模な林分を形成していることから,潜在植生はブナ林と考えられる.そのため,本林分も最終的にはブナ林にまで遷移すると予想されるが,現在のところ樹勢も良く,当分はアカマツ林として存続するものと思われる.
保護の現状
 と留意点
 本林分を含む六呂師高原一帯は,奥越高原県立自然公園に指定されている.また,自然教育の場としても活用されていることから,今後も維持されていくことが望まれる.現在,マツクイムシ被害は,近くは大野市,勝山市の標高200m 付近まで広がっている.本林分は標高が高いため,被害を受ける可能性は低いと思われるが,定期的な観察は必要であろう.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)