福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 勝原のケヤキ林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:勝原(163)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  勝原集落より荒島岳に向けて100m ほど登った岩礫の多い急斜面にケヤキ林が分布する.地形的には不安定な要因をかかえながらも,この付近一帯はケヤキの大木が比較的多く生育しており,これまで集落の防災林として残されてきた.ケヤキ林は安定した状態で現在保たれているが,一部の大木は近年伐採された.しかし,今なお胸高直径50cm 以上の大木が残されていて見事な森林を形成している.ケヤキは嶺北地方の低山地によく見られる樹木であるが,材質が良く用途も広いため,伐採が進み,現在ではケヤキの純林はほとんど見られない.本地域のケヤキ林は,かなり広範囲に分布し,しかも大木が残されている点で注目される.ケヤキ林の林冠をつくる植物は,ケヤキの他,クマシデ,トチノキ,ケンポナシ,イタヤカエデなどで,その林間にはヤマモミジ,ヒメヤシャブシ,ツリバナ,コマユミなどが多い.林床にはユキバタツバキ,オオバクロモジ,ハナイカダ,チャボガヤ,ヒメアオキ,ハイイヌガヤなどの木本が多く,オクノカンスゲ,ジュウモンジシダ,ニシノホンモンジスゲ,チヂミザサなどの草本も高い被度で生育している.ケヤキ林の中には,ユクノキ,エビネ,ヒメカナワラビなどの稀産種も見られる.ユクノキはマメ科の高木で主に関東以西の暖地に生育する植物である.県下全域に分布するが,この地域には特に多く注目に値する.
保護の現状
 と留意点
 これまで地域住民が皆伐することなく,大木のみを択伐するような方法で利用してきたため,現在の林が維持されているものと考えられる.本林分は人間の居住地域における大切な残存自然植生であり,これからも現在の状態で保存されることが望ましい.林床に生育するエビネは,近年の園芸ブームで乱獲され,急激に個体数が減っている種であるため保護対策が期待される.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)