福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
[先頭ページ] [前のページ] [次のページ]
名   称 赤兎平の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 高層湿原・亜高山草原
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:上打波赤兎山(93)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  標高1628m の赤兎山の山頂より,東方の尾根を下っていくと赤兎平と呼ばれる広い緩斜面が,約2ha に亘って展開している.石川県側となる北西の緩やかな斜面では,ブナ林からダケカンバ−アオモリトドマツ林に移行し,更に風衝低木林からチシマザザ草原となって尾根に連なる垂直的な変化が見られる.チシマザサ草原には,ハイイヌツゲ,オオコメツツジ,アカミノイヌツゲ,ミヤマカンスゲ,ミツバオウレン,ホソバトウゲシバ等が生育している.南東側は,やや急な斜面で,雪の吹き溜まりとなるため6 月上旬まで雪が残り,低木も少なく,湿潤な草原が形成されている.夏期には,ニッコウキスゲが優占し,キンコウカ,ササユリ等が混生するお花畑となる.尾根の鞍部には,通称「赤池」と呼ばれている水深20 〜25cm の池塘があり,夏でも水が絶えることはない.池塘周辺は泥炭層(深い所で40 〜50cm ,浅い所では20cm 程度)が堆積して高層湿原となり,オオミズゴケの他にハクサンミズゴケ,アオモリミズゴケ,コサンカクミズゴケなど高層湿原に特有のミズゴケ類が生えている.また,ミヤマホタルイ,ミカヅキグサ,イワショウブ,キンコウカ,イワイチョウ,モウセンゴケ,タテヤマスゲ,ニッコウキスゲなども生育している.この湿原ではカオジロトンボの生息が確認されているが,ここは県下唯一の産地であるとともに分布南西限の地として生物地理学上貴重である.
保護の現状
 と留意点
 一帯は白山国立公園第2 種特別地域に指定されている.しかしながら最近の登山ブームにともない登山者が増加し,特に池塘の周囲の高層湿原が踏み荒らされて,ミズゴケ類やイワイチョウが激減している.山小屋の改築を機会に,廃材を使用しての木道も設置されたが,木道外に出る人が後を絶たず,踏み跡は裸地化している.赤池周辺部は,高層湿原として生態学上極めて貴重なものであり,植生保護の危急地として早急な措置が望まれる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)