福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 赤兎山のブナ林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:赤兎山(93,94)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  標高1628m の赤兎山の山頂より,鳩ヶ湯へ向かう登山道を標高で300m ほど下っていくと緩斜面があり,そこに約200ha に亘ってブナ林が展開している.このブナ林は県内に残された数少ないブナの自然林である.高木層のほとんどがブナによって占められ,大きなものでは樹高約20m ,胸高直径約80cmに達する.亜高木が少ないために,林間の見通しが良く,高木層を形成するブナが疎に立つ林相となっている.亜高木層を形成する主な種は,ハウチハカエデ,オオカメノキ,コミネカエデなどである.低木層の植被率は70%と高く,チシマザサ,オオカメノキ,ノリウツギなどが生育している.草本層にはシラネワラビが多く,その他にミヤマカンスゲ,チシマザサ,ヒメモチ,ヤマソテツ,オオバユキザサ,ホソバトウゲシバ,マイヅルソウ,ミヤマシグレ等が見られる.また,着性植物としてミヤマノキシノブや近年個体数が激減しているヤシャビシャクなどの貴重植物も見られる.佐々木(1973 )によれば,日本海側に分布するブナ−オオバクロモジ群集の下位単位としてシラネワラビが草本層に優占するブナ−シラネワラビ亜群集があるが,本地域のブナ林は,これに属するものと考えられる.なお,これと類似した組成の林分は,県内では小原峠付近にも良く発達している.
保護の現状
 と留意点
 赤兎山のブナ林は,面積約200ha という本県では最大級の大きさのものである.学術上貴重であるばかりでなく,イヌワシやツキノワグマをはじめとする多様な生物種を育み,後世への遺産とすべき豊かな森林といえる.近年,上打波から亥向谷に林道が布設され,ブナ林の近くまで延びて来ているが,これ以上伐採が進まないことが望まれる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)