福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
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名   称 和泉村集落のブナ林
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
和泉村:湯上,川合,後野,下山(82,83,102,121,122,123)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  和泉村各集落の裏山の林は昔から,住民によって保護されてきたため,林相は安定している.これらの林のほとんどは,ミズナラ,ブナの林であるが,その中で特に,湯上,下山,川合,後野の裏山に残されているブナの自然林が注目される.和泉村のブナ林の特徴として,シロモジ,マルバノキ,マンサク,ハスノハイチゴなど主に太平洋側に分布する種が出現することがあげられる.特にシロモジが,いずれの地域でも高い密度で出現していることは注目すべきである.シロモジは県内では,岐阜,滋賀との県境付近に分布しており,特に奥越では岐阜県境から九頭竜川沿いに勝原まで,また,真名川沿いには中島周辺までが分布域になっている.また,マルバノキは九頭竜川上流域では,ブナ林内に生育し,谷沿いで小群落を形成することもある.これらの集落付近に見られるブナ林の高木層には,ブナ,ミズナラ,クマシデ,ケケンポナシ,コシアブラが多く,その林間にマルバマンサク,オオカメノキ,エゾユズリハなどが,林床には,オクノカンスゲ,ヒメアオキ,チゴユリなどが優占している.注目すべき植物としては,ミヤマチョウジザクラ,バイカツツジ,サルマメなどや,腐生植物であるギンリョウソウモドキ,シャクジョウソウの生育があげられる.和泉村のブナ林では,県下ほとんどのブナ林に高い頻度で出現するオオバクロモジに代わってシロモジが優占したり,所によっては双方が高い被度で混生することもある.シロモジは太平洋側のブナ林を特徴づける種であることから,生態地理学的にも興味深いことである.
保護の現状
 と留意点
 和泉村各集落の裏山は,長年地域住民の手によって保護され,住民の生活や安全に大きな役割を果たしてきた.今後は,野生生物の生活の場として,また,地域住民の森林学習の場,森林浴や憩いの場としても益々重要性を帯びていくものと思われる.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)