福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
植  生
[先頭ページ] [前のページ] [次のページ]
名   称 平家岳の植生
学   名
分 類 1 植生
分 類 2 冷温帯落葉広葉高木林
位   置
(2kmメッシュ番号)
和泉村:(53,71)
選定理由 自然植生もしくはそれに近い植生、学術上貴重な種または個体の生育地
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  平家岳(1441.5m )は,岐阜県板取村と和泉村の県境にある.地形は急峻で,谷も深いが高圧線に沿って道があり,登り易くなっている.山頂の東斜面や西斜面の一部にはブナの極相林が広がり,県境の福井県側や東の尾根筋には,発達したダケカンバ林が見られる.この林は,荷暮川の支流西ノ又谷川の源流と日ノ谷川を隔てる分水嶺付近にあり,県下でも数少ないダケカンバ林の一つである.山頂東斜面のブナ林は,樹高20m 余り,胸高直径50cm 以上の巨木が林立し,安定した林相を呈している.林内には,チシマザサ,ハイイヌツゲ,ヒメモチの他,太平洋側の植物であるシロモジ,ハスノハイチゴなどが生育している.また,平家岳東方の西ノ又谷の上流域にはブナの自然林が広範囲に分布している.林床には,稀産種のシロヤシオの生育も見られる.ダケカンバ林は,林間にオオカメノキ,コシアブラ,マルバマンサク,林床には,チシマザサ,オオバクロモジ,ヒメモチ,ノリウツギが優占している.県内のダケカンバ林は,林床にチシマザサが優占し,しかも高密度で生育するため,他の植物の侵入を許さず,また,ダケカンバの若木がほとんど見られないのが特徴である.山頂には,本県を分布の西限とするハクサンシャクナゲをはじめ,クモマニガナ,イワカガミ,カライトソウ,コバイケイソウ,アカモノなどの高山植物が生育している.また,アスヒカズラ,キバナツクバネウツギ,タカネアオヤギソウ,アオヤギソウなどの県内稀産種も見られる.アスヒカズラは,県内でも平家岳と取立山でのみ確認されている貴重な植物である.キバナツクバネウツギは,仏峠から平家岳にかけて分布している.本種は嶺北地方でここだけに確認されているが,平家岳東斜面にはかなり高い密度で生育している.
保護の現状
 と留意点
 近年,本地域の周辺近くまで伐採が進められて来ており,更に進行する可能性がある.本地域のブナ林やダケカンバ林は原始性が高く,自然状態で残すことが望まれる.また,山頂のハクサンシャクナゲをはじめとする高山植物の保護にも配慮することが大切である.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)