第3章 快適な日常が実感できる環境の実現
 
第1節 潤いと安らぎのある環境の形成
 
1 ゆとりある空間の確保
(1) 潤いとやすらぎを与える沿道スペースの整備
 四季を実感できる自然環境を活かし、利用者に潤いとやすらぎを与える沿道スペースの整備が求められている。
 そこで、たまりスペースの整備として、平成9年度までに 116か所を整備している。
(2) 水と緑のネットワ−クづくりの推進
 河川の水質の悪化や平常時の水量の減少を改善するため、九頭竜川を水源とする流水を市街地を流れる農業用水路や河川を利用して導水し、河川浄化対策を実施するとともに、この導水路を良好な水辺空間として 整備することにより、福井市街地の新たな水環境の創出を図ることとしている。
 平成9年7月に「福井市中心域水路ネットワーク整備協議会」を設置し、平成10年度には、ネットワーク整備構想の登録や整備計画の策定に取り組んでいる。
(3) 築堤河川の植樹
 水辺は貴重な水と緑の空間であり、河川の清涼な流水と緑の堤防は、地域社会の憩いの場等として重要な役割を果たしてきた。しかし、沿川地域の市街化等により、緑が減少しつつあることから、近年、良好な 水辺空間の一環として、堤防およびその周辺の緑化に対する要請が強くなってきた。
 そこで、堤防の強化および水防活動に必要な土砂の備蓄等の機能等を兼ね備えた整備を進めるとともに、桜づつみ(堤防側帯)を設け、市町村の協力を得ながら、桜等の植樹を行っている。
(4) わがまちの斜面整備構想の推進
 県と越前町では、昭和40年代より急傾斜地崩壊対策事業を積極的に推進してきたが、その多くは、危険斜面の崩壊を防止し、安全性を向上させることを主眼としたものであった。
 しかし、21世紀に向けて、住民が快適で文化の香り高い生活を享受できるよう、潤いのある緑豊かな空間を形成することが求められており、景観を構成する斜面の緑の保全・創出と利活用を、地域との共同・ 協調の下で図っていくことが必要となってきた。
 このため、今後、急傾斜地の危険斜面を整備するに当たっては、安全の確保に加え、斜面環境・景観の保全・創造および斜面空間の利活用と地域づくりと連携を図りながら、地域住民・学識経験者・行政機関 関係者等の助言により策定した「越前町わがまちの斜面整備構想」により、「地すべり対策事業」、「急傾斜地崩壊対策事業」、「雪崩対策事業」等を進めていく。
(5) 都市公園等の整備
 県の都市計画区域内人口一人当たりの都市公園面積は、平成10年3月末現在で
12.9 /人と、全国の平均 7.5 /人を大きく上回っている。しかし、住民に最も身近な住区基幹公園のうち、街区公園の整備は進んでいるものの、スポーツ・レクリエーションや防災等の機能を果たす近隣公園、 地区公園は不足しているため、的確に対応していく必要がある。
 適正な都市公園の配置を行うため、環境保全、レクリエーション、防災、景観の形成等の観点から、緑地の配置等に関する目標と方針を示す各市町村の「緑の基本計画」に沿った公園の配置計画の策定を推進する。
 また、自然地形や植生を活かした住民の環境活動に資する公園や再生資源を活用した公園の整備、歴史、伝統、文化等の地域の特性を活かした公園の整備を推進するとともに、広域的な交流拠点となる大規模な 公園の整備について検討を行うこととしている。
(6) 広域防災を考慮した緑地、オ−プンスペ−スの整備等
 住宅が密集し、生活道路等の施設が未整備のため、住環境が不良となっている地区において、都市防災の向上、地域の風土に配慮した景観形成のための緑地、通路、小公園、防火水槽等の施設整備を行う「街なみ 環境整備事業」を、武生市の京町地区(平成4年度〜)と蓬莱地区(平成7年度〜)で実施している。
(7) 河川の緑の公園の遊歩道の整備
 堤防管理用の坂路や階段を改築や設置するに当たっては、既設の公園や遊歩道と一体的な利用が可能なように、施設配置を検討し実施する。
 
《代表事例》
 基幹・足羽川     平成10年度 坂路 9箇所
 
2 緑豊かなまちづくり
(1) 広域緑地計画、緑の基本計画
 「広域緑地計画」は、本県の緑の現状とめざす将来像を明らかにし、住民、市町村、県の各部局が連携して取り組むことを目的とした計画である。
 今後、緑につつまれた県土づくりを実現するため、「広域緑地計画」に基づき、緑地保全地区指定、都市林の指定等を積極的に活用し、住民自らが緑化に参加できる緑地協定制度、市民緑地制度等の施策をPR する。また、市町村ごとに、緑の適正な保全・緑化の目標、方針となる「緑の基本計画」の策定を進めていく。(平成10年3月末現在、勝山市が策定済)
(2) 公共施設等の緑化推進
 「公共建築物計画の基本方針」において、公共施設の整備に際しては、敷地の周囲に植栽帯を設けるとともに、雪対策も兼ねて、敷地境界線から建物まで7m以上を確保するよう定めている。
 また、平成10年度完成の「若狭湾エネルギー研究センター」、「生きがい交流センター」などにおいて、積極的に施設の緑化を図っている。
 今後とも、施設の計画に当たっては、周囲に植栽のためのオープンスペースを確保し、公共施設等の緑化推進を図っていく。
(3) 街路樹等による道路の緑化
 平成9年度に実施した道路の緑化延長は 1.5q(国道 0.7q、県道 0.8q)であり、平成4年度を 100とした指数は 152となっている。
 平成10年度は、さらに 3.1q(国道 2.3q、県道 0.8q)を実施し、指数を 155に伸ばす予定である。(平成22年度で指数 200達成を目標)
(4) 開発許可制度による緑地と開発との調整
 都市計画区域内の開発許可においては、緑豊かなまちづくりを行うため、緑地の保全・回復等に配慮しながら、都市の周辺部における無秩序な市街地の拡大の防止を図っている。
 具体的には、1ha以上の開発行為にあっては、開発区域およびその周辺の地域における環境を保全するため、開発行為の目的等を勘案して、開発区域における植物の生育の確保上必要な樹木の保存、表土の保全 その他の必要な措置を講ずることとし、また、開発区域の面積が0.3ha以上5ha未満の開発行為にあっては、開発区域の面積の3%以上の公園、緑地または広場を設置するようになっており、5ha以上の開発行為にあっては、 3%以上の公園を設けるように指導している。
(5) 緑地協定
 緑地協定制度は、都市における緑とオープンスペースを確保するため、住民自身によって緑地の保全および緑化の規制を行うもので、一定の手続きに基づいて協定が締結された後においては、当該区域内の土地の 所有者等となった者に対してもその効力が及ぶこととなる。
 平成10年3月末現在、県内では、5か所で緑地協定(緑化協定)を締結している。(表3−3−1)
 
 表3−3−1 県内の緑地協定(緑化協定)の締結状況






 

 
所在地
 
都市緑地保
全法の適用
面 積
 
締結年月日
 
八幡地区緑化協定
福井北インター流通センター緑化協定
サンライフタウン東中野緑化協定
パープルタウン黒目緑化協定
福井市中央工業団地緑地協定
武生市
福井市
坂井町
三国町
福井市
  14条
  14条
  20条
  20条
  14条
3.1ha
10.9ha
3.0ha
3.8ha
19.1ha
H 5. 5.14
H 5. 9.20
H 5.10.29
H 5.11. 8
H 8.10.14






 
 
第2節 良好な景観の形成
 
1 美しく親しみやすい景観の形成
(1) 景観づくり
 近年、景観に関する意識が高まってきており、県民が誇りと愛着を持つことができる個性的で美しい景観をつくるため、魅力ある公共施設の整備、美しい建物づくりや歴史的・伝統的建造物の保存等を進めている。 これらの各種の施策や事業の調整を図り、全体に調和のとれた景観づくりを進めるため、平成2年度から、魅力ある景観の実現に向けた総合的な景観整備に取り組んでいる。総合的な景観づくりを推進するための施策の 流れは図3−3−3のとおりである。
 市町村においても、福井市、勝山市、丸岡町では景観条例を制定し、福井市、小浜市、大野市では景観賞を創設するなど、独自に積極的な景観づくりに取り組んでおり、今後とも、県民・行政が一体となって、 魅力ある景観づくりの実現に向けて取り組んでいく。
(2) エコロードの整備
 地形や自然環境に配慮した路線の選定や道路構造を採用するエコロードの整備について、国道 162号(阿納尻〜田烏バイパス)と中部縦貫自動車道(永平寺大野道路)で実施している。(表3−3−2)
 
 表3−3−2 エコロードの整備状況
   路線名        事業の進捗状況
中部縦貫自動車道
(永平寺大野道路)
 動物用横断構造物、表土の活用、標識等エコロー
ドの関する調査・設計を実施中。(H8〜H10)
国道162号
(阿納尻〜田烏バイパス)
 
 トンネル、橋梁を多く採用し、自然地形の改変を
極力少なくした工法を採用。
 トンネル施工中。(H8〜H10)





 
 
 国道および県道における道路法面の再緑化については、平成9年度に 2.9haを実施し、平成10年度は、さらに 2.4haを再緑化する予定である。
(3) 景観と調和した道路整備
 道路環境の課題を解決し、効果的な施策を推進するためには、各道路管理者が個別に対応するのではなく、地域ごとに、環境の現状、社会・経済の状況、道路交通の状況等を踏まえて、総合的かつ計画的に道路 環境施策を推進していくことが必要である。
 そのため、平成5年度から6年度にかけて、各道路管理者で構成する「福井地域道路環境計画策定協議会」は、学識経験者や道路利用者等の意見を踏まえ、道路環境整備の方針を示した『福井県道路環境計画』 を策定した。
 計画では『美し故郷・ふくいの自然と人と道との共生』を目標に「さらに美しい福井」を目指している。
 
図3−3−3 景観づくりに関わる施策の流れ  [→図]
 
 
 基本方針に「ゆとりとうるおいのある道づくり」、「自然と共生する道づくり」、「地域の特色を活かした道づくり」、「住みやすさに配慮した道づくり」を掲げ、本県域を「まち(市街地部)」、「うみべ (海岸部)」、「やま(山地部)」に区分し、それぞれの区域において、基本方針を踏まえた道路整備方針を立てている。
(4) シンボルロード等の整備
 シンボルロード等の整備として、平成9年度までに、福井駅前線、福井縦貫線、城の橋線等において、景観向上や広幅員歩道の整備を実施してきた。
 平成10年度は、本町明里線のシンボルロード整備事業、河内熊川線の鯖街道整備事業、敦賀駅港線のシンボルロード化整備事業等を実施している。
(5) 沿道の修景、歩道景観の整備
 人にやさしい歩道(人口集中地区およびその他都市部における歩道)については、平成9年度に 7.8qの延長を整備し、整備済み延長は全体の27.4%となっている。(平成4年度末は17%)
 平成10年度は、さらに 3.6qを整備し、28.9%とする予定である。(平成22年度でおおむね50%達成を目標)
 広幅員歩道等としては、平成9年度に 8.3qの延長を整備し、整備済み延長は
110.9qとなっている。(平成4年度末は74q)
 平成10年度は、さらに 8.5qを整備する予定である。(平成22年度で 210 達成を目標)
(6) 産業団地の環境施設整備に対する支援
 県では、企業立地の促進および地域社会と産業団地の調和を図り、地域振興に資することを目的として、産業団地整備事業を実施している。
 この事業では、産業団地を生産施設だけでなく、自らも快適な環境を創出する場とするために、公園・緑地等の環境施設の整備に対しても補助を行っており、市町村または市町村土地開発公社が行う産業団地の 整備に伴い実施する環境施設の整備に対し、対象経費の2分の1以内、1億円限度として、一定の要件のもとで、補助を行っている。
(7) 漁港施設等の整備に際しての環境配慮
 漁港施設は漁港機能の向上を目的に整備されるものであるが、住民にとっては、漁港も生活空間の一部であり、やすらぎを与える場所として整備する必要がある。 また、海洋性レクリエ−ションへの関心が 高まっている現在、漁港を訪れる人たちにとっても快適な空間でなければならない。
 このため、平成9年度に、高浜、丹生漁港において自然石張り等の整備を、田烏、大島漁港において緑地広場の整備を行っている。
 平成10年度には、高浜漁港において自然石張り等の整備を、丹生、大島漁港において緑地広場の整備を進めている。(表3−3−4)
 
 表3−3−4 景観に配慮した漁港施設




 
 漁港名 事業主体    H9実施内容    H10計画内容
高浜漁港   県 防波堤 自然石張 L= 63m 防波堤 自然石張 L= 67m
丹生漁港 美浜町 防波堤 カラー平板等 L=100m 緑地広場    A=9,180u
田烏漁港 小浜市 緑地広場    A=3,200u     ──
大島漁港 大飯町 緑地広場    A=3,460u 緑地広場    A=5,200u




 
 
(8) 地区計画制度
 質の高い景観づくりを進めるに当たっては、周辺景観との調和や生態系の保全に配慮するとともに、地域の優れた景観づくりにつながる公共施設の整備や都市開発の誘導を行うことが重要であり、それらを行う ための有効な制度の一つとして、地区計画制度がある。
 地区計画とは、地域の特性を重視し、住民の意見を取り入れながら策定するまちづくりの約束を取りまとめる計画である。具体的には、建物の用途の制限を加えて、思いもよらない建築物の立地を防いだり、 建築物の高さの最高を定めて、家並みをそろえたり、壁面の後退と生け垣のつくりを共通にするなど、地区計画の適用により、良好な都市景観形成への開発誘導が可能となる。
 この地区計画制度を有効に活用することによって、住民による地区独自のまちづくりを行い、美しく親しみやすい景観の形成を推進していく。
 本制度を活用した例として、福井市の木田地区では、都心機能の一端を担う公共施設(福井商工会議所、福井保健所等)の整備と併せて、土地の望ましい高度利用と都市機能の更新を図るため、地区施設の配置や 敷地面積の最低限度、建築物の高さの最高および最低限度、外壁の色調などを定めている。
 
2 環境美化意識の醸成
(1) クリーンアップふくい大作戦
 まちや身近な河川の美観や自然の景観は、地域住民による清掃活動等により維持されており、県では、これらの自主的取組みを支援・推進し、県民一人ひとりの環境美化意識の醸成を図っている。
 平成10年度は、6月7日(日)を統一行動日として、県下全域で一斉に美化活動に取り組む「クリーンアップふくい大作戦」を実施している。
(2) 河川環境保全活動の推進
 河川環境保全活動推進事業を実施し、河川の草刈り清掃等、地域住民と一体となった良好な河川環境の創出・保全に努めている。
(3) 海面環境の保全
 海岸線の浮遊ごみを回収する海面環境保全事業等をクリーンアップふくい大作戦と併せて実施している。
(4) 自然公園の環境美化
 自然公園美化思想の一層の普及を図るため、環境庁では8月の第1日曜日を、「自然公園クリーンデー」として位置付け、自然公園を対象とした大規模な美化清掃運動を実施している。
 平成10年度は、8月2日(日)に実施し、約 400人が参加している。
 
 
第3節 歴史的文化的環境の形成
 
(1) 社会生活と調和した文化財の保存・活用
 環境問題への社会的関心の高まりとともに、歴史や文化、景観に対するまなざしも広く、また深く向けられ始めている。加えて、経済生活の向上と余暇時間の増大等を背景として、精神生活の充実を求める人々の 心の動きは、文化にも向けられ、こうした中で、文化財に代表される伝統文化に対する関心は強くなっている。
 文化財は、長い歴史の中で生まれ、育まれ、今日の世代に守り伝えられてきた貴重な民族の財産であり、私たちが祖先の伝統を受け継ぎ、郷土の歴史、文化等を理解する上で欠くことのできないものとして保護 されている。しかし、過疎と過密の問題や都市化の進展は、地域の文化財の衰減を引き起こしている。
 こうした社会状況を背景として、文化財を抱える地域住民が、これを主体的に保存し、日常生活の中に活かす動きがあり、文化財を活用した個性的な町づくり、村おこしが展開されている。市町村や住民と連携し、 これを支援する中で、歴史を切り口として、郷土に関心と誇りを持った県民を育成し、社会生活と調和した文化財の保存・活用を図っていく。
(2) 歴史的街道・運河等の保存・活用等
 歴史的街道や運河に代表される「歴史的な道」は、古来より、人と人、地域と地域の交流を支え、文化の交流・伝達の上で大きな役割を果たしてきた。歴史的な道そのものは、現代に生きる我々にとって貴重な 文化遺産であるとともに、適切に保存し、復元等を行うことによって、時代を超えた新たな文化創造の場となる。
 古い歴史のおもかげを残す歴史的街道や運河等と、これにまつわる沿道の町並み・歴史的な遺跡・歴史的建造物や周辺で行われている祭等の伝統的な行事の調査を実施し、これらの保存・整備・活用を図る中で、 「良質な歴史景観の保全と活用」、「現代のニーズと歴史が調和した地域づくり」、「地域学習のネットワークの形成」など、様々な側面を有した、歴史、文化の香り高い地域の形成を図っていく。
第4節 土地利用の適正化
 
1 土地対策の概要
 適正かつ合理的な土地利用を図るため、「国土利用計画法」をはじめ、「都市計画法」、「農業振興地域の整備に関する法律」、「森林法」、「自然公園法」、「自然環境保全法」等の法律(以下「個別法」 という。)の規定に基づき、様々な土地利用計画が定められている。
 このうち、昭和49年に制定された「国土利用計画法」では、各個別法による計画や規制に対して、総合的観点から、国土の利用に関する基本的方向を示す上位計画として国土利用計画および土地利用基本計画を 定めるとともに、地価の安定と適正かつ合理的な土地利用を図るため、土地取引の規制、遊休土地の利用促進を行っている。(表3−3−5)
 国土利用計画法に基づいて行われている主な施策の概要は次のとおりである。
(1) 国土利用計画
 国土利用計画は、国土の総合的かつ計画的な利用を確保するため、国、県および市町村が、長期的な視点に立って、国土資源の有限性を前提に、公共の福祉を優先し、自然環境の保全、歴史的文化的諸条件に 配慮して、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある発展を図ることを基本理念に策定するものである。
 福井県国土利用計画については、昭和52年6月に昭和60年を目標年次とした第1次計画が、昭和61年7月に平成7年(昭和70年)を目標年次とした第2次計画が、平成10年3月に、平成22年を目標年次とした 第3次計画が策定されている。
 市町村計画は、県計画を基本とし、地方自治法に基づく市町村の基本構想に即しつつ、住民の意向を十分に反映させた上で、議会の議決を経て策定されるものである。県では、市町村計画が地域に密着した計画 として、国土利用計画体系の中で極めて重要な位置付けにあるとの認識のもと、広域的、全県的な観点から整合性を確保するため、必要な指導や調整を行っている。
 
 福井県国土利用計画(第3次)抜粋







 
第1 県土の利用に関する基本構想
 1 県土利用の基本方針
  ア 県土の利用は、県土が現在および将来における県民のための限られた資源
   であるとともに、生活および生産を通づる諸活動の共通の基盤であることに
   かんがみ、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、地域の自然
   的、社会的、経済的および文化的条件に配意して、健康で文化的な生活環境
   の確保と県土の均衡ある発展を図ることを基本理念として、総合的かつ計画
   的に行わなければならない。







 
 
 図3−3−5 土地対策の概要図
 
 ┌────────┐
 │ 国土利用計画  │
 └──┬──┬──┘
    │  │
 ┌──┴──┴──┐
 │土地利用基本計画│
 └──┬─────┘
    │
    │ ┌──────────┐  ┌───────┐
    ├─┤ 都市地域      │  │ 市街化区域  │
    │ ├──────────┤  ├───────┤
    │ │ 都市計画      ├──┤市街化調整区域│
    │ └──────────┘  ├───────┤
    │               │ その他の区域 │
    │               └───────┘
    │ ┌──────────┐
    ├─┤ 農業地域      │
    │ ├──────────┤  ┌───────┐  ┌──────┐
    │ │農業振興地域整備計画├──┤ 農業振興地域 ├──┤ 農用地区域 │
    │ └──────────┘  └───────┘  ├──────┤
    │                          │その他の区域│
    │                          └──────┘
    │ ┌──────────┐
    ├─┤ 森林地域      │
    │ ├──────────┤  ┌───────┐  ┌──────┐
    │ │ 地域森林計画    ├──┤ 森林計画区  ├──┤ 保安林   │
    │ └──────────┘  └───────┘  ├──────┤
    │                          │その他の森林│
    │                          └──────┘
    │
    │ ┌──────────┐  ┌───────┐  ┌──────┐
    ├─┤ 自然公園地域    ├──┤ 特別地域   │  │特別保護地区│
    │ ├──────────┤  │       ├──┼──────┤
    │ │ 公園計画      │  │       │  │その他の地区│
    │ └──────────┘  ├───────┤  └──────┘
    │               │ 普通地域   │
    │               └───────┘
    │ ┌──────────┐  ┌──────────┐
    └─┤ 自然保全地域    ├──┤原生自然環境保全地域│
      └──────────┘  ├──────────┤  ┌────┐
                    │ 自然環境保全地域  ├──┤ 特別区 │
                    └──────────┘  ├────┤
                                  │普通地区│
                                  └────┘
 
(2) 土地利用基本計画
 土地利用基本計画は、国土利用計画(全国計画および県計画)を基本とし、都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域および自然保全地域の5地域ならびに土地利用の調整等に関する事項を内容として定める ものであり、土地取引、開発行為の規制、遊休土地の利用促進、その他適正かつ合理的な土地利用を図るための基本となる計画である。
 また、同基本計画は、都市計画法、農業振興地域の整備に関する法律、森林法、自然公園法、自然環境保全法等に基づく諸計画に対する上位計画として、行政部内の総合調整機能を果たすとともに、土地取引に 関しては直接に、開発行為に対しては個別の法律を通じて間接的に、規制の基準としての役割を果たすものである。
 福井県土地利用基本計画は、昭和50年に策定され、その後、5地域の見直しに伴い、毎年、内閣総理大臣の承認を得て、変更されている。
(3) 都市計画
 人口や産業の都市への集中が進む中で、都市およびその周辺地域において、計画性を欠いた都市化が進行すると、不良な市街地の形成、職住の混在による環境の悪化、公共投資の効率の低下など、様々な問題が 発生してくる。このような問題を未然に防止し、都市の成長、発展を適正に誘導していくために、県民の約88%が居住する都市計画区域においては、総合的な土地利用を策定し、これに基づく規制を行うとともに、都市 計画事業の実施により、人々が安全で快適な都市生活を営めるように、計画的な都市形成を図っている。
 現在、本県においては、10の都市計画区域が指定されており、7市13町1村が含まれている。
 都市計画による土地利用計画においては、まず、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に区分し、計画的に都市化を促進する区域と都市化を抑制し自然環境の保護や農林業等の振興を図る区域に区域区分 する線引制度がある。本県では、福井都市計画区域について線引きが行われている。
 次に、都市計画区域のうち、市街化区域またはそれに相当する区域においては、住宅と工場の近接による騒音等の公害の防止など、異種用途建築物の混在による様々な環境悪化を防止するため、第1種低層住居 専用地域、第1種住居地域、商業地域、工業地域など、12種類の用途地域が定められ、都市機能を適正に配置することにより、良好な都市環境の形成を図っている。本県では、すべての都市計画区域で用途地域が定め られている。
 さらに、用途地域制度を補完するため、必要に応じて、防火地域や特別用途地区、風致地区などが指定されている。
 また、最近では、地域の特色にあったルールづくりをめざした地区計画制度を活用して、きめ細かく適正な土地利用を誘導することにより、個性のある良好な都市環境の形成を図っている地域もある。
(4) 土地利用転換後の適正化
 県土の無秩序な土地利用転換を抑制するため、福井県国土利用計画を基本とする県の諸計画を推進するとともに、次のような施策により、規制・誘導を行い、適正な県土利用に努めている。
 ア 国土利用計画法に基づく土地取引の規制
 適正かつ合理的な土地利用の確保を図るため、一定規模(市街化区域 2,000 、その他の都市計画区域 5,000 、都市計画区域外10,000 )以上の土地取引については、土地の譲受人は、契約締結後2週間以内に 利用目的等を知事に届け出なければならない。
 届出のあった土地の利用目的が、公表されている土地利用計画に適合せず、当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があるときは、土地の利用目的について必要な変更を 行うことを勧告することになる。
 また、当該土地の利用目的が、当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図る上で適当ではない場合には、必要な助言を行う。
 
 ※ 福井県国土利用計画(第3次)抜粋































 
第3 第2に掲げる事項を達成するために必要な措置の概要
   第2に掲げる事項を達成するために必要な措置の概要は、次のとおりである。
   これらの措置については、「安全で安心できる県土利用」、「自然と共生でき
  る持続可能な県土利用」、「美しくゆとりある県土利用」等の視点を総合的に勘
  案した上で実施を図る必要がある。
(6) 土地利用の転換の適正化
  ア 土地利用の転換を図る場合には、その転換後、再びもとの状態に復元させる
   ことが困難であることおよび影響の大きさに十分留意した上で、人口および産
   業の動向、周辺の土地利用の状況、社会資本の整備状況その他の自然的・社会
   的条件を勘案して適正に行うものとする。また、転換途上であっても、これら
   の条件の変化を勘案して必要があるときは、速やかに計画の見直し等適切な措
   置を講ずる。
  イ 森林の利用転換を行う場合には、森林の保続培養と林業経営の安定に留意し
   つつ、災害の発生、環境の悪化等公益的機能の低下を防止することを十分考慮
   して、周辺の土地利用との調整を図る。また、原野の利用転換を行う場合には
   環境の保全に配慮しつつ、周辺の土地利用との調整を図る。
  ウ 農用地の利用転換を行う場合には、食料生産の確保、農業経営の安定および
   地域農業や地域景観等に及ぼす影響に留意し、非農業的土地利用との計画的な
   調整を図りつつ、無秩序な転用を抑制し、優良農用地が確保されるよう十分配
   慮する。
  エ 大規模な土地利用の転換については、その影響が広範であるため、周辺地域
   をも含めて事前に十分な調査を行い、県土の保全と安全性の確保、環境の保全
   等に配慮しつつ、適正な土地利用の確保を図る。また、地域住民の意向等地域
   の実情を踏まえた適切な対応を図るとともに、市町村の基本構想などの地域づ
   くりの総合的な計画、公共用施設の整備や公共サ−ビスの供給計画等との整合
   を図る。
  オ 農村漁村における混住化の進行する地域等において土地利用の転換を行う場
   合には、土地利用の混在による弊害を防止するため、必要な土地利用のまとま
   りを確保すること等により、農用地、宅地等相互の土地利用の調整を図る。
    また、土地利用規制の観点からみて無秩序な施設立地等の問題が生じている
   地域において、制度の的確な運用等の検討を通じ、地域の環境を保全しつつ地
   域の実情に応じた総合的かつ計画的な土地利用の実現を図る。































 
 
 なお、地価の上昇に対する適切な措置を講じるために、価格や利用目的を契約締結前の届出とする注視区域制度および監視区域制度ならびに土地の取引を許可制とする規制区域制度が設けられている。
 また、大規模な土地取得(2ha以上の宅地開発等または10ha以上のゴルフ場、スキ−場、遊園地等のレクリェ−ション施設等の土地取得)を行う場合は、県土地利用指導要綱に基づき、契約締結前に知事に事前 協議することとしており、開発行為の適正な誘導を通じて、県土の無秩序な開発の防止と安全で良好な生活環境の確保に努めている。
 イ 農業振興地域の整備に関する法律および農地法に基づく規制
 各市町村の農業振興地域整備計画に、農用地の確保、農業基盤整備の計画的な実施およびその効果の維持保全を図るべき土地を農用地区域と位置付けている。
 また、農地法では、優良農地の確保を図るため、これらの農用地区域や集団的に存在する農地その他の良好な営農条件を備えている農地については、原則として許可できないこととなっている。
 

→次へ進む][→目次へ戻る
ERC.PREF.FUKUI.JP