第7節 災害時・緊急時における環境保全対策
(1) 日本海重油流出事故
ア 環境影響調査
平成9年1月2日に発生したロシア船籍タンカー「ナホトカ号」の重油流出事故に伴う水質・底質、自然、水産等への影響を総合的に把握するため、「環境保全技術対策プロジェクトチーム」を設置し、海洋
環境や水産等の専門家の助言・指導を得ながら、環境影響調査を進めている。
調査結果については、平成9年7月末時点での結果をもとに、平成9年10月に中間報告として取りまとめた。(表3−1−32)
また、その後の平成10年3月までの調査結果をみても、重油による深刻な影響は認められていないが、環境や水産等への影響は中・長期的に評価する必要があるため、平成10年度も調査を継続しており、近く
取りまとめる予定である。
イ 野生鳥獣の救護体制の整備
海域における油流出事故発生時には、ナホトカ号の事故時にとられた救護体制を基本に、県獣医師会、日本野鳥の会県支部、環境庁等の関係機関と連携し、油汚染水鳥の保護収容、搬送、洗浄、治療、リハビリ
テーションおよび放鳥までの体制を整備している。
また、課題とされた油汚染水鳥の救護にかかる人材の確保および救護マニュアルの作成・配布、技術研修会の開催、緊急時に対応できる施設の整備等を計画的に推進していく。
ウ バイオレメディエーションの検討
海水中にはもともと石油を分解する微生物が存在しており、この微生物を利用して油で汚染された環境を修復させる技術(バイオレメディエーション)が注目されているが、その有効性や生態系に与える影響が
明らかになっていないことから、福井県立大学と県が共同で研究を行った。
実験は、回収の困難な岩場や海水に浸らない場所における重油の分解を想定して、漂着重油に栄養剤を散布し、土着の油分解微生物を活性化させる手法で実施した。
その結果、栄養剤の散布によって、油分解微生物の増加は認められたものの、漂着重油そのものの分解には至っていないようであった。
(2) 有害物質による二次災害防止対策
災害時において、有害化学物質の漏えい等による二次災害を防止するためには、有害化学物質等の使用量、保管量を把握し、データベース化することが有効である。 こうしたことから、県では、まず、テクノ
ポート福井に立地する企業において使用されている化学物質の種類および使用状況等についてデータベース化を進めている。
また、国において法制化が検討されているPRTRを県として有効に活用できるよう検討を進めていく。
表3−1−32 ナホトカ号重油流出事故に係る環境影響調査の中間報告の概要
区 分 |
中 間 報 告 の 概 要 |
環境
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大気
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・炭化水素濃度は、1月中旬、一時的にやや高い傾向が認められたが、
それ以降は一般環境と同レベルとなった。
・ベンゼンなど炭化水素を構成する成分の濃度は、一般環境と同レベ
ルであった。 |
水質
|
・低レベルの濃度ではあるが、2月には30地点中11地点で油分が
検出された。しかし、その後の調査ではほトンど検出されていない。
・油処理剤は、これまでの調査で全く検出されていない。 |
底質
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・安島の1地点で、一時的に通常より高い濃度の油分が検出されたが、
その後の調査ではほトンど検出されていない。
・油処理剤は、これまでの調査で全く検出されていない。 |
自然
|
植生
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・海浜植物や樹木の一部に重油付着が認められたが、植生への影響は、
現時点では比較的軽微であった。しかし、継続して長期的な影響を調
査することが必要である。 |
水産
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磯根
資源
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・長期間にわたって油塊に覆われた潮間帯で、カサガイや小型の巻貝
類に付着力の低下、生息数の減少ならびに死殻が観察されたことから、
重油は生息する動物の一部を死亡させたと考えられる。
・また、イワノリや石灰藻等の海藻の枯死が目立っており、春期の枯
死の時期と重なった可能性も考えられるが、重油による可能性が高い
とみられる。
・サザエ、バフンウニ等有用動物の生息密度は従来と大きく異なるこ
とはなく、試食テストでも油臭は感じられなかった。
・バフンウニ等の卵稚仔やノリの胞子などへの影響を把握するため、
さらに、継続して生物への影響を調査することが必要である。 |
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