第6節 廃棄物・リサイクル対策
1 廃棄物の減量化・再資源化
(1) 事業者の自主的な取組みによる廃棄物の減量化・再資源化の推進
年間発生量が 291万トン(平成7年度)にもなる産業廃棄物の減量化・再資源化を進めるためには、まず、事業者自らが自主的に取り組むことが必要である。そこで、県では、事業者の自主的な取組みを促進するため、
平成6年に「産業廃棄物減量化等指導員等制度」を創設し、学識経験者や民間有識者の中から委嘱した「産業廃棄物減量化指導員」を排出事業者の求めに応じ派遣するとともに、多量排出事業者には、その事業所の減量化等の
推進の責任者となる「産業廃棄物減量化推進員」を設けることを義務付けている。平成9年度は、この「産業廃棄物減量化推進員」を対象にした研修会を下記のとおり実施し、推進員の資質向上と事業所の減量化・再資源化の
推進を図っている。
表3−1−29 平成9年度産業廃棄物減量化指導員等研修会の内容
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内容 |
講師 |
第1回
(平成9年
11月 7日) |
循環型社会の形成について
泥・建設廃棄物のリサイクルについて
棄物処理法の改正について |
渇`原製作所 竹林 征雄
産業廃棄物減量化指導員
県衛生指導課 |
第2回
(平成10年
3月24日)
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廃棄物ゼロへの取組について
プラスチック類のリサイクル
5次福井県産業廃棄物処理計画・
廃棄物処理法関係法令の改正について |
鰍hNAX 本村 正弘
産業廃棄物減量化指導員
衛生指導課
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このような取組みに加え、減量化・再資源化を一層推進するため、平成10年3月に策定した「第5次福井県産業廃棄物処理計画」(計画期間 平成10年度〜平成14年度)において、「福井県産業廃棄物自主管理システム」
の構築を図ることとした。 このシステムでは、県は、多量排出事業者に対し自主的に取り組むべき事項を示すとともに、項目ごとの自己評価マニュアルを提供する。多量排出事業者は、県が示した取組み項目をもとに、自主
管理計画を策定するとともに、毎年自己評価し、その結果を県に報告する。県は、その結果を集計・分析し、進行管理を行うとともに、産業廃棄物減量化指導員等を助言者として、研修会を実施し、減量化・再資源化を図ろうと
するものである。
平成10年度は、このシステムを構築するための「廃棄物自主管理の手引書」の作成を進めている。
(2) 一般廃棄物の減量化・再資源化の推進
一般廃棄物の減量化・再資源化を計画的に進めるため、平成5年3月に策定した「福井県廃棄物減量化・再生利用推進計画」をもとに、市町村においては、資源ごみの分別収集体制の整備を図るとともに、住民の参加による
リサイクルを推進している。また、県では、「ごみスリム・スリム運動」を展開し、県民の意識高揚に努めている。
また、従来からの一般廃棄物の減量化・再資源化の取組みを一層充実・強化し、資源循環型社会の構築を実現するため、平成9年12月に策定された新長期構想「ふくい21世紀ビジョン」において、「ごみ減量化・リサイクル
日本一」を目標に掲げた。
目標実現のため、平成10年度は、ごみゼロの日(5月30日)街頭キャンペ−ン、「ごみスリム・スリム運動推進大会」の開催、親子を対象にしたペットボトルリサイクル調査隊の実施、巡回キャンペ−ン(奥越地域、丹南
地域、嶺南地域)の実施、新聞、テレビ等を利用した事業等を展開している。
さらに、「ごみ減量化・リサイクル日本一」の総合的な推進計画の策定作業を行っている。本計画の策定に当たっては、消費者、事業者、資源回収業者、市町村廃棄物行政担当者等で構成する「福井県ごみ減量化・リサイクル
日本一推進計画検討会議」を設置し、有効な施策を検討している。また、公募した「ごみゼロモニタ−」 100名の方に、家庭でのごみ排出状況の調査に協力をお願いするとともに、ごみ減量化等の方策の提言を受けている。
また、この計画づくりの参考とするため、平成10年度に、県民1千人を対象に、ごみ減量化やリサイクルに関する意識調査を行った。
その集計結果を見ると、約9割の人が、ごみを減らすためにはライフスタイルの見直しが必要であり、資源ごみの分別回収日を守っていると答えるなど、本県のリサイクル率が全国上位であることを裏付けた。しかし、収集日
を守る人の割合は若年層ほど低い傾向を示したほか、リサイクルの可能な食品トレーやペットボトル、牛乳パックなどを一般ごみとして出すケースが2割から3割にのぼるなど、意識が行動に結びついていないことも明らかになって
いる。
今後は、この推進計画をもとに、県民、事業者、市町村、県の役割分担のもと、総合的な対策を進めていく。
(3) 容器包装廃棄物のリサイクルの推進
容積比で一般廃棄物の約6割を占める缶、瓶、ペットボトル等の容器包装廃棄物のリサイクルを推進するため、平成9年4月から「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)が
本格施行されている。 この法律は、住民が分別排出、市町村が分別収集、容器包装製造事業者等が再商品化(リサイクル)の役割を担い、容器包装廃棄物のリサイクルを進めようとするものである。
県内の市町村では、平成8年に策定した各市町村の分別収集計画に基づき、容器包装廃棄物の分別収集に取り組んでいる。県内市町村の分別収集状況は次のとおりであり、紙パックについては取組みが遅れているが、他の
品目はほトンどの市町村で取組みが行われている。
表3−1−30 容器包装廃棄物の分別収集の取組み状況(平成10年3月末現在)
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分別収集品目 |
取組市町村数 |
缶(アルミ、スチ−ル) |
35 |
ガラス瓶(無色、茶色、その他) |
32 |
ペットボトル |
29 |
紙パック |
5 |
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また、容器包装リサイクル法は、平成12年4月から、紙パック以外の紙類、ペットボトル以外のプラスチック類の容器包装廃棄物にも適用されることから、国において、これらの品目の分別基準や再商品化手法について
検討が行われているところであり、市町村は、こうした動きに対応するため、収集体制の整備を進める必要がある。県としては、市町村に対する説明会の開催や県民に対する啓発等を行うとともに、市町村の分別収集体制の
整備を支援するため、リサイクル施設の設置について、国の制度と併せて、県費による補助制度を設けている。今後は、県民の分別排出の徹底、市町村の分別収集体制の整備をさらに進める。
なお、家電製品の再商品化を推進するため、平成10年6月5日に「特定家庭用機器再商品化法」が公布されており、小売業者や製造業者等に廃家電製品の収集・再商品化等の義務を課し、消費者に対しては収集・
再商品化等に要する費用の負担を求めている。本法律は、公布後3年間の準備期間をおき、平成13年度の本格施行をめざしており、法施行当初は、「テレビ」、「冷蔵庫」、「洗濯機」、「エアコン」の4品目が対象と
なることになっている。今後は、関係法令の整備状況を見極めながら、同法が円滑に施行されるよう、市町村の必要な体制の整備と県民の啓発を進める。
(4) 堆肥流通体制の整備
近年の有機農業に対する関心の高まりから、家畜ふん尿が有機質肥料として見直されてきている。
これまで、畜産農家に対して、補助事業等を活用して、家畜ふん尿処理施設を整備し、堆肥化を推進するよう指導している。
また、耕種農家での利用推進のため、堆肥を利用した実証展示圃の設置や堆肥マップ・堆肥の成分パンフレットを作成・配布するとともに、畜産農家と耕種農家からなる営農集団を組織化することにより、
効率的な堆肥のリサイクルに努めている。
2 廃棄物の適正処理
(1) 事業者および処理業者への指導
ア 廃棄物処理法の改正への対応
平成9年6月、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の大幅な改正が行われ、3段階にわけて施行されている(第1次施行 平成9年12月17日、第2次施行 平成10年6月18日、第3次
施行 平成10年12月1日)
この改正では、産業廃棄物の最終処分場の新規立地計画を巡る住民との紛争事例、シュレッダ−ダストの不法投棄事件など、産業廃棄物問題が非常に大きな社会問題となってきていることに対し、総合的な
対策を講じることを目的としており、「廃棄物の減量化・リサイクルの推進」、「廃棄物処理に関する信頼性と安全性の向上」「不法投棄対策」を3つの柱とするものである。
特に、「廃棄物処理に関する信頼性と安全性の向上」の観点からは、廃棄物処理施設の設置手続の明確化、廃棄物処理施設の各種基準の強化、廃棄物埋立処分基準および保管基準の強化等が行われた。
県では、このように多岐にわたる改正内容の周知を図るため、平成9年度から10年度にかけて、事業者および処理業者を対象とした講習会を開催している。
イ 廃棄物焼却施設から排出されるダイオキシンの削減対策
廃棄物焼却施設から排出されるダイオキシンの削減を図るため、国では、平成9年8月29日に廃棄物処理法関係政省令を改正し、ダイオキシン類排出濃度の規制基準を定め、焼却施設設置者に年1回以上の
測定義務を課すなど、廃棄物焼却施設の構造や維持管理の規制基準を強化した。(表3−1−31)
表3−1−31 ダイオキシン類排出濃度の規制基準
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燃焼室の
処理能力 |
新設の施設
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既設の施設 |
10.12.1まで |
10.12.1〜14.11.30 |
14.12.1〜 |
4t/h以上 |
0.1ng/m3 |
基準の適用
を猶予
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80ng/m3
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1ng/m3 |
2t/h〜4t/h |
1ng/m3 |
5ng/m3 |
2t/h未満 |
5ng/m3 |
10ng/m3 |
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平成9年度に実施した市町村ごみ焼却施設のダイオキシン類排出濃度実態調査によると、県内で稼働中の15施設においては、国が緊急対策を求めている基準(80ng/m3)を下回っているが、平成14年12月から
適用されることとなる排出濃度基準を満たしていない施設は9施設ある。また、平成8年度の実態調査から基準を満たしていない施設は3施設減っているが、これは、燃焼管理の適正化等のダイオキシン削減対策の
成果が表れたものと考えている。
現在、市町村ごみ焼却施設から排出されるダイオキシンの抜本的な削減を図るため、平成10年5月に策定した「福井県ごみ処理広域化計画」に基づき、市町村においては、広域的なごみ処理施設や排ガスの
高度処理設備の整備を計画しているところであり、県としても、その整備が円滑に進むよう指導を行っている。
また、産業廃棄物焼却施設については、施設への立入調査や改善指導を行うことにより、施設設置者において、施設の休廃止や改良が進められている。
(2) 不法投棄対策の推進
不法投棄対策としては、「福井県廃棄物不法投棄等対策要領」(平成3年12月策定)をもとに、各保健所において不法投棄の重点監視地域を定め、年間を通じてパトロ−ルを実施するとともに、県が委嘱
している不法投棄連絡員に対し、不法投棄に関する情報の提供を依頼し、不法投棄の未然防止と早期発見に努めている。
また、保健所、土木事務所、市町村、警察署等の連携を強化するため、福井・坂井・奥越・丹南・嶺南の5ブロック別に「産業廃棄物不法処理防止連絡協議会」を設置し、年間を通じて合同パトロ−ルを
実施している。
特に、12月を「不法投棄等防止啓発月間」として、量販店の店頭での啓発活動、事業所への立入調査、重点監視地域のパトロ−ル等を集中して実施している。
なお、(社)福井県産業廃棄物協会が平成8年2月に設置した「産業廃棄物適正処理監視指導員」によるパトロ−ル活動とも連携をとりながら、不法投棄の未然防止と早期発見に努めている。
(3) 安全で信頼性のある廃棄物処理施設の確保
廃棄物処理施設を環境に配慮した安全で信頼性の高いものとするため、「福井県産業廃棄物適正処理指導要綱」において、廃棄物処理施設設置許可の事前審査手続と廃棄物処理法に定める基準よりも厳しい
構造・維持管理基準を定め、施設設置許可の事前審査を行ってきた。
廃棄物処理法が改正され、平成10年6月から処理施設設置許可手続の見直し、許可基準の充実強化等が行われたことから、同時に県指導要綱も所要の改正を行った。 今回の要綱改正では、新たに焼却施設
の事前審査手続を強化するとともに、民間の一般廃棄物処理施設の設置許可にも県指導要綱の手続を準用することを定めており、今後とも、処理施設の安全性と信頼性を確保し、県民の生活環境の保全を図っていく。
なお、廃棄物最終処分場を新規に設置する事業者に対しては、県指導要綱に基づき、その処分場周縁地下水の調査を実施するよう、また、立地地域との公害防止協定の締結等の環境保全対策を図るよう指導
している。
(4) 建設廃棄物対策
建設産業は、我が国の資源利用の約50%を建設資材として消費する一方で、産業廃棄物全体の最終処分量の40%を越える量を建設廃棄物として最終処分している。
今後、住宅・社会資本の更新に伴い、建設廃棄物と建設発生土の搬出量は増大することが予測されており、「資源循環型社会」を構築するためには、建設リサイクルを先導的かつ強力に推進することが
極めて重要な課題である。
このため、工事発注者、工事請負業者および処理業者が一体となって建設副産物対策を総合的に推進することとし、「建設副産物対策近畿地方連絡協議会」(構成員:建設省近畿地方建設局、福井県を含む
2府5県3政令市、5公団1事業団、6関係業団体)が、「リサイクルプラン21」に基づく活動を続けてきた。しかし、平成7年度の建設副産物実態調査では、全体として一定の成果を上げているものの、建設混合
廃棄物、建設汚泥、建設発生木材、建設発生土のリサイクル率が低迷しているなどの課題が残されていることが明らかになったことから、平成10年、「リサイクルプラン21」を見直し、建設リサイクル推進に向けた
基本的考え方、目標、具体策等を内容とする「近畿地域における建設リサイクル行動計画」を策定した。将来的には、建設廃棄物は最終処分量をゼロとすることをめざし、また、建設発生土は建設工事に必要となる
土砂を原則として工事間流用でまかなうこととして、2000年までに達成すべき目標を定め、より一層の取組みの強化を図り、関係者の共通の目的としてそれぞれの立場で努力している。
県においても、土木部、農林水産部、福祉保健部、企業庁および建設業団体や国の関係機関等で構成する「建設副産物対策連絡協議会」、土木事務所、農村整備事務所、林業事務所や市町村で構成する「建設
副産物対策ブロック連絡協議会」を設置し、計画・設計段階における徹底した「発生の抑制」、工事間の情報交換等による「再利用の促進」、再利用が困難な廃棄物に対する「適正処理の徹底」に努めている。
また、建設汚泥のリサイクル率が低迷していることから、雪対策・建設技術研究所と民間企業との共同研究により、建設汚泥の再利用技術の開発に取り組んでいる。
3 廃棄物の適正管理
産業廃棄物が適正に運搬・処理されてことを確認するための管理票システムである「マニフェスト制度」は、廃棄物処理法に基づき、平成4年7月から、特別管理産業廃棄物についての使用が義務付けられ、
運用されてきた。
また、県では、平成8年10月から、県産業廃棄物適正処理指導要綱に基づき、全産業廃棄物に対するマニフェストの使用を指導してきたが、産業廃棄物の委託処理をするすべての事業者への周知は不十分な
状況であった。
平成10年12月1日からは、廃棄物処理法の改正により、同制度の適用が全産業廃棄物に拡大され、施行された。県では、講習会の開催等を通じて、(社)福井県産業廃棄物協会とともに、事業者および処理業者
にその周知徹底を図ってきたが、今回の改正は、事業者に産業廃棄物の処理のあり方を改めて考えてもらう機会となった反面、多少の混乱もみられることから、今後とも、マニフェスト制度の周知を通じて、廃棄物
処理法の正確な理解を求め、産業廃棄物の適正処理を進める。
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