第2節 水環境の保全
1 水質汚濁状況の監視等
(1) 水域類型の指定
県では、昭和47年から、各公共用水域の利水目的に応じて、水域ごとに類型の指定(以下「類型指定」という。)を行ってきており、平成10年3月末で、九頭竜川水域をはじめとする14水域(河川4、湖沼2、海域8)
で類型指定を行っている。
北潟湖および三方五湖(日向湖を除く。)の2水域については、植物プランクトンが増殖し、水質が悪化するいわゆる「富栄養化」に対処するため、あわせて窒素・燐の類型指定を行っている。(
資料編表3−3)
また、湖沼と同様に、水の循環が阻害されやすい閉鎖性海域についても、今後の富栄養化を防止するため、敦賀湾、矢代湾、世久見湾、小浜湾、内浦湾を対象に、平成10年3月に窒素・燐の類型指定を行った。
なお、その水質が環境基準を長期間にわたり達成している河川については、よりよい水質をめざした効果的な水質保全対策を進めるため、類型指定の見直しを行っていくこととしている。
(2) 水質常時監視体制
県では、水質汚濁防止法に基づき、毎年、「公共用水域の水質の測定計画」を作成し、常時監視を行っている。(
資料編表3−10)
平成9年度には、河川4水域(九頭竜川、笙の川・井の口川、耳川、北川・南川)、湖沼2水域(北潟湖、三方五湖)および海域5水域(九頭竜川地先、越前加賀海岸地先、敦賀湾、北川地先、若狭湾東部)の計 111
地点において、水質を測定した。(表3−1−9)
2 産業系排水対策
(1) 規制基準等
ア 水質汚濁防止法に基づく規制
特定施設を設置する工場・事業場(以下「特定事業場」という。)からの排水については、水質汚濁防止法により規制されている。
対象となる特定事業場に対しては、有害物質としてカドミウム等24項目、生活環境項目としてBOD等16項目の排水基準が適用される。
なお、有害物質は全特定事業場に、生活環境項目は排水量50m3/日以上の特定事業場に適用される。
また、植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある湖沼(日向湖を除く三方五湖、北潟湖)および海域(敦賀湾、矢代湾、世久見湾、小浜湾、内浦湾)に排水する特定事業場については、全窒素および全燐に
ついても排水基準が適用される。(
資料編表3−6)
表3−1−9 公共用水域水質測定地点内訳(平成9年度)
総測定地点数 |
水域名 |
一次支川 |
二次支川 |
三次支川 |
111
地
点
|
河
川
56
地
点
|
九頭竜川 41地点
(本 川 6地点)
|
┌ 竹田川 3地点─
├ 五領川 1地点
├ 磯部川 1地点
├ 八ヶ川 1地点
┼ 馬渡川 1地点
├ 真名川 1地点─
├ 大納川 1地点
└ 日野川 6地点─
|
┬ 兵庫川 1地点
└ 田島川 1地点
─ 清滝川 1地点
┬ 底喰川 2地点
├ 足羽川 2地点─
├ 狐川 1地点
├ 江端川 1地点
├ 浅水川 2地点─
├ 天王川 1地点
├吉野瀬川 2地点
└御清水川 1地点 |
─ 荒川 2地点
┬ 鞍谷川 1地点
├ 文室川 1地点
└ 黒津川 1地点
|
笙の川 3地点
(本 川 1地点) |
┬木の芽川────
└二夜の川 1地点 |
─ 深川 1地点
|
|
井の口川 2地点 |
|
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耳川 2地点 |
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|
北川 5地点
(本 川 4地点) |
─ 鳥羽川 1地点
|
|
|
南川 3地点 |
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|
湖沼
19地点 |
北潟湖 9地点(未類型指定1地点を含む) |
三方五湖 10地点(未類型指定1地点を含む) |
海
域
36
地
点 |
九頭竜川地先海域 6地点 |
越前加賀海岸地先海域 9地点 |
敦賀湾海域 7地点 |
北川地先海域 4地点 |
若狭湾東部海域 10地点 |
|
|
(注) 太字は環境基準が類型指定されている水域の測定地点
イ 公害防止条例等に基づく規制
一律の排水基準では環境基準の維持達成が困難な水域については、水質汚濁防止法において、県が条例でより厳しい上乗せ排水基準を設定できることになっており、九頭竜川水域等11水域について、BOD(COD)
およびSS(浮遊粒子状物質)に係る上乗せ基準を設定している。(
資料編表3−7)
さらに、県公害防止条例では、一定量以上の排水を排出する工場・事業場を特定工場と定め、知事への届出を義務付けるとともに、排水の濃度および負荷量を規制している。
ウ 要綱に基づく指導
アオコの発生が問題となっている三方五湖(日向湖を除く。)の水質の富栄養化の進行を防止するため、流域の工場・事業場からの排水に含まれる窒素と燐について、「湖沼の富栄養化防止に関する工場・事業場排水
指導要綱(平成2年4月施行)」による指導基準を定め、規制の強化を図っている。(
資料編表3−8)
(2) 工場等に対する指導
水質汚濁防止法に定める特定事業場数は 2,523あり、このうち、排水基準が適用される事業場は 452となっている。(
資料編表3−5、26)
平成9年度には、 203の事業場に対して、排水処理施設の維持管理状況や排水基準適合状況等の立入検査を実施した。(
資料編表3−25)
その結果、染色整理業や製紙業におけるpHやBODの基準超過などの排水基準違反が21工場21件あった。
これらの排水基準違反事業場に対しては、排水処理施設の維持管理の徹底等を指導した結果、各工場・事業場とも排水の水質は改善されている。
(3) 農業に対する指導等
本来、農業は環境と調和した産業であるが、高生産性を追求してきた結果、化学肥料や農薬等を多投入するようになり、環境への影響も無視できない。
このため、県では、「施肥合理化指導指針」や「農作物病害虫防除基準」を定め、農地における肥料・農薬の適正使用を指導している。さらに、農業排水浄化対策推進事業で農地からの肥料分の流出を抑えるための
施肥改善に取り組むとともに、水田における側条施肥田植機や緩効性肥料の普及促進の啓発を継続して行っている。
また、平成10年度から水稲種子消毒廃液処理装置整備事業で水稲共同育苗施設等から出る農薬の適正処理を計画的に進めている。
(4) 水産業に対する指導等
本県では、昭和50年代後半から、海面での魚類養殖が盛んに行われるようになっている。魚類養殖では、大量の餌を使用するが、餌の大部分は冷凍魚肉を使用しており、その解凍時に出るドリップ(液汁)や切断時に
生じる魚肉の細片が海水中に流出することによる水質汚濁が懸念されている。
県では、県内養殖魚の主力となりつつあるトラフグ(若狭フグ)を対象に、漁場環境の保全を目的として、汚濁負荷のより小さい配合飼料(ドライペレット)を使用した養殖技術の確立をめざしている。
(5) 畜産業に対する指導等
畜産業から排出される尿等の汚水については、原則として糞と混合して堆肥化を行うなど、有機質肥料として農地に還元している。また、利用しきれない汚水については、浄化処理を行い、排水基準を満たしてから
放流するよう指導している。
さらに、北潟湖および三方五湖周辺の畜産農家に対しては、排水の水質測定を行うよう指導している。
3 生活系排水対策
(1) 浄化槽の設置等
ア 汚水処理施設の高度化
公共下水道等の整備が困難な地域や整備に長期間を要する地域において生活系排水対策を推進するためには、各戸ごとに排出されるし尿と生活雑排水を併せて処理できる合併処理浄化槽の整備が有効である。
とりわけ、水洗トイレの排水のみを処理する単独処理浄化槽は、風呂や台所等の生活雑排水を未処理のまま放流し、河川等に対する汚濁負荷が大きいことから、単独処理浄化槽の設置を抑制し、合併処理浄化槽の
整備を促進する必要がある。
県では、合併処理浄化槽の整備促進に取り組む市町村に対して支援を行っている。
(資料:衛生指導課)
イ 浄化槽の適正な維持管理の啓発
浄化槽がその機能を十分発揮し、生活排水が適正に処理されるためには、確実な施工と適正な維持管理が必要である。
新たに浄化槽を設置する者に対しては、浄化槽を使用する上での注意事項や保守点検の方法等についての講習会を実施し、適正な維持管理を指導している。
また、浄化槽が設置された後、施工状況や放流水質に関する検査を実施し、不適正と判断された浄化槽の設置者に対しては、必要な改善を行うよう指導している。
ウ し尿の収集および処理状況
水洗便所からのし尿は、公共下水道や浄化槽等で処理されることになるが、くみ取り式のものは、し尿処理施設で処理されるか、自家処理されることになる。なお、浄化槽汚泥についても、収集された後、
し尿処理施設で処理されている。
平成9年度におけるし尿および浄化槽汚泥の収集量は約24万8千 であり、自家処理量は約5千 となっている。
近年、浄化槽等の整備が進んできたことから、くみ取りし尿の収集量は減少しており、逆に浄化槽汚泥の収集量は増加傾向となっている。(図3−1−11、
資料編表3−37)
(資料:衛生指導課)
(2) 農業集落地域の排水対策
近年の農村社会における混住化の進展、生活様式の高度化、農業生産様式の変貌等、農業および農村を取り巻く状況の変化により、農業用用排水の汚濁が進行し、農作物の成育障害、土地改良施設の
維持管理費の増大、悪臭の発生等、農業生産環境や農村生活環境に大きな問題を生じている。
このため、本県では、昭和54年度から、農村総合整備モデル事業、農業集落排水事業および農村基盤総合整備事業で、生活雑排水や汚泥または雨水を処理する施設を整備するなど、農業集落地域の
排水対策を実施している。
平成10年3月末現在、排水処理施設の供用を開始している地区は、県全体で75地区となっている。(
資料編表3−39−1)
(3) 漁業集落地域の排水対策
漁村では、生活様式、漁業生産の多様化などの社会状況の変化に伴い、生活雑排水や水産加工施設雑排水の多くが直接漁港や周辺海域に排出され、沿岸環境の悪化が懸念されている。
このため、昭和53年度から、漁業集落環境整備事業により漁業集落排水施設を整備している。平成9年度には1地区完成しており、県全体で14地区となっている。また、平成10年度も2地区の完成を
目指し、3地区で継続して事業を実施している。(
資料編表3−40)
(4) 林業集落地域の排水対策
山村人口の減少と高齢化が進行する中で、山村の活性化を図るためには、都市部と比べ立ち遅れている上下水道等の生活環境基礎の整備が必要となっている。
また、山村地域のほトンどが河川の上流部に位置していることから、河川の水質保全を図るためにも、排水処理施設等の整備を進める必要がある。
このため、平成8年度から、武生市の中山地区で林業地域総合整備事業により、し尿および生活雑排水を処理する合併浄化槽の整備を進めている。
(5) 家庭における汚濁負荷の低減
米のとぎ汁や食べ残し、食器に付着した油分、必要以上に洗剤を使った洗濯排水など、私たちがなにげなく流している生活排水が、湖沼や都市中小河川の水質汚濁の原因となっている。
そのため、県では、家庭で簡単にできる生活排水対策のパンフレットを作成・配布し、県内の中学生・料理学校生等の普及啓発を図るとともに、市町村が実施する生活排水対策を支援するために、
地域でリーダー的役割を担っている住民に対する研修会を行っている。
また、生活系排水による水質汚濁の著しい河川等を有する市町村にモデル地区を設定し、地域住民が生活排水対策を実践する中で水質改善効果を確認してもらうことにより、地域住民のより一層の
自発的な取組みを促進している。
4 公共下水道の整備
本県の下水道事業については、九頭竜川流域下水道事業(1市6町)のほか、7市12町1事務組合で公共下水道事業、2市8町3村で特定環境保全公共下水道事業、2市2町で都市下水路事業を実施
している。
平成10年3月末現在、処理開始しているのは6市14町1村1事務組合であり、下水道普及率49%で、全国平均の56%を下回っていることから、県としても、市町村との連携を密にして、下水道整備
を推進していく方針である。
(1) 流域別下水道整備総合計画
下水道法により、都道府県は、水質環境基準が定められた公共用水域について、環境基準を達成するために、それぞれの公共用水域の下水道の整備に関する総合的な基本計画(流域別下水道整備総
合計画)を定めなければならないとされている。
流域別下水道整備総合計画は、当該流域における下水道計画の基本方針を明らかにし、下水道の処理区域、下水道の根幹的施設の配置、構造および能力、下水道整備事業の実施順位等を定めるもので
ある。(表3−1−12、図3−1−13)
ア 九頭竜川流域別下水道整備総合計画
本計画は、九頭竜川流域の 2,969 を対象としており、福井市をはじめとする5市16町4村が該当する。
なお、近年の下水道ニ−ズの高まりから、計画区域拡大の要望が強く、平成4年度から北潟湖流域を編入し、再見直しの調査に着手している。
イ 若狭湾流域別下水道整備総合計画
本計画は、嶺南地域と滋賀県今津町の一部を含む 889 の地域を対象としており、1市6町1村が該当する。
本区域内には若狭湾や三方五湖という閉鎖性水域が含まれており、河川等からの汚濁負荷量やこれらの季節変化を把握し、効果的な水質保全を図るため、昭和61年度から調査に着手し、平成10年6月
に大臣承認となっている。
表3−1−12 流域別下水道整備総合計画の概要
|
計画名
項 目 |
九頭竜川
流総計画
(第2回変更) |
若狭湾
流総計画 |
調査着手年度 |
H 4年度 |
S61年度 |
大臣承認申請年月日 |
− |
H9.9.24 |
大臣承認年月日 |
− |
H10.6.29 |
基準年度
|
現況 |
H2年度 |
現況 |
S60年度 |
将来 |
H27年度 |
将来 |
H22年度 |
調査区域面積( ) |
2,969 |
889 |
調査対象市町村数 |
25(5市16町4村) |
8(1市6町1村) |
下水道計画
対象市町村数 |
21(5市15町1村)
|
6(1市4町1村)
|
下
水
道
計
画
の
概
要
|
水質保全上必
要となる面積 |
2,062
ha |
893
ha |
計 画
処理区域面積
(ha) |
公共 |
15,241 |
公共 |
1,480 |
流域 |
5,160 |
流域 |
0 |
計 |
20,401 |
計 |
1,480 |
計 画
処理人口
(人) |
公共 |
440,438 |
公共 |
50,674 |
流域 |
117,698 |
流域 |
0 |
計 |
558,136 |
計 |
50,674 |
計画汚水量
[日最大]
( /日) |
公共 |
494,435 |
公共 |
36,493 |
流域 |
118,399 |
流域 |
0 |
計 |
612,834 |
計 |
36,493 |
|
|
(資料:公園下水道課)
図3−1−13 流域別下水道総合整備計画の位置付け
[→図]
(資料:公園下水道課)
(2) 第8次下水道整備七箇年計画
下水道の整備は、下水道整備緊急措置法に基づく七箇年計画によって推進されており、昭和38年度の第1次下水道五箇年計画に始まり、現在は、平成8年度を初年度とする第8次下水道七箇年計画を
推進している。(表3−1−14)
表3−1−14 第8次下水道七箇年計画総括
|
事業名 |
箇所数 |
公共下水道
|
単 独
流域関連
公共関連 |
継続 19か所
新規 2か所 |
特定環境保全
公共下水道 |
単 独
・
公共関連 |
継続 12か所
新規 1か所 |
計 |
|
34か所 |
流域下水道
|
|
継続 1か所
|
普及率 |
H14年度末 64% |
|
|
(資料:公園下水道課)
(3) 流域下水道
流域下水道は、2以上の市町村の区域における下水を排除し、かつ、終末処理場を有するものであり、設置、改築、維持管理は原則として県が行う。
本県では、竹田川流域について、1市6町(福井市の森田地区と川西地区の一部、三国町、芦原町、金津町、丸岡町、春江町、坂井町)の広域圏行政の一環として、九頭竜川流域下水道(竹田川処理区)
を計画し、昭和52年度から事業に着手し、昭和57年から順次供用を開始している。
現在、計画目標年次を平成27年とした区域の拡大を伴う基本計画を見直している。また、事業計画については、計画目標年次を平成15年としている。
なお、北潟湖周辺については、汚濁負荷量の軽減、および効率的整備の観点から、北潟湖流域の生活排水等を流域下水道に排出することとしている。
表3−1−15 九頭竜川流域下水道計画概要(平成11年3月現在)
項目 |
全体計画 |
事業計画 |
備 考 |
処理区域面積
|
5,207ha
|
4,283ha
|
福井市(森田地区、川西地区の
一部)、三国町、芦原町、金津
町、丸岡町、春江町、坂井町 |
処理人口 |
142,760人 |
121,387人 |
|
排除方式 |
分流式 |
同左 |
|
計画汚水量 |
116,623m3/日最大 |
84,550m3/日最大 |
|
処理場 |
標準活性汚泥法 |
同左 |
|
幹線管渠延長 |
76.7 |
76.7 |
|
中継ポンプ場 |
6か所 |
6か所 |
|
工期 |
S52〜H27年度 |
S52〜H15年度 |
|
|
|
(上表は変更手続中のものである。) (資料:公園下水道課)
(4) 公共下水道
本県では、福井市、敦賀市、武生市、小浜市、大野市、勝山市、鯖江市、松岡町、三国町、芦原町、金津町、丸岡町、春江町、坂井町、朝日町、織田町、清水町、美浜町、高浜町および五領川公共下水道
事務組合で実施されている。
(5) 特定環境保全公共下水道
特定環境保全公共下水道は、公共下水道のうち市街化区域以外の区域に設置されるもので、観光地や自然景勝地の自然環境を保全するための自然保護下水道と、農山漁村の生活環境の改善を図るための
農山漁村下水道があり、本県では、福井市、武生市、美山町、永平寺町、池田町、南条町、河野村、宮崎村、織田町、清水町、三方町、上中町、名田庄村において事業を実施している。(
資料編表3−35)
5 閉鎖性水域の水質保全対策
(1) 湖沼の水質保全対策
北潟湖および三方五湖は、富栄養化による水質汚濁が著しく、アオコの発生による水質環境の悪化などが現われてきており、利水上の深刻な影響が懸念される。
このため、富栄養化の主な原因物質である窒素と燐について、湖沼水質の環境基準の類型指定を行うとともに、当面の目標である暫定目標値を定めている。
また、平成元年度に庁内関係18課(所)で構成する「湖沼水質保全総合対策推進会議」を設置し、総合的な水質改善を進めてきたが、今後は、平成10年10月設置した「環境政策推進会議湖沼・河川専門部会」
において、より効率的な対策の推進に努めていく。(表3−1−16)
表3−1−16 北潟湖・三方五湖水質保全総合対策事業の概要
|
対策内容 |
担当課 |
発
生
源
対
策
|
生活排水
|
公共下水道の整備 |
公園下水道課 |
農業集落排水処理施設の整備 |
農村整備課 |
浄化槽排水対策 |
衛生指導課 |
生活排水対策 |
環境政策課 |
工場排水 |
排水処理施設維持管理の徹底 |
環境政策課 |
農
畜
産
排
水
|
水田 |
肥料流出防止と施肥の適正化側条施肥田植機の普及 |
農産園芸課 |
畑地
梅園
|
窒素流亡抑制の草生栽培法の検討
流出した窒素のリサイクル化 |
農業技術経営課
|
農業排水モニタリング
肥料流出防止対策(施肥実態調査、施肥改善試験) |
農産園芸課
|
畜産 |
ふん尿の適正処理の徹底 |
畜産課 |
流入
水路
対策 |
農業排水路 |
窒素、燐吸収能力の高い植物の植栽 |
農産園芸課 |
流入河川 |
河川を直接浄化する施設の整備 |
河川課 |
湖
沼
内
対
策
|
湖内堆積物のしゅんせつ |
河川課 |
渚護岸の整備による水生植物の植栽 |
河川課 |
吸肥植物の
植栽 |
水生植物の浮礁栽培(魚類等の繁殖保護)
水生植物の浮礁栽培 |
水産課
農産園芸課 |
監視・調査
|
水質監視
水質調査と生物モニタリング調査 |
環境政策課
水産課 |
研究
|
アオコ分解、捕食試験
アオコ発生抑制因子の解明 |
環境政策課
|
しゅんせつ土投入田の施肥法の実証
水質浄化工法の開発・研究 |
農産園芸課
監理課 |
その他 |
河川環境管理計画の策定 |
河川課 |
|
|
まず、生活排水等の「発生源対策」として、三方五湖流域では、三方町南部地区の農業集落排水処理施設が平成6年度から、美浜町公共下水道と三方町東部地区の農業集落排水処理施設が平成7年度から、
それぞれ部分的に供用を始めているほか、三方町特定環境公共下水道や三方町田井地区の農業集落排水処理施設が既に着工している。
北潟湖流域については、九頭竜川流域下水道に接続するよう事業を進めている。 一方、農業系排水対策としては、側条施肥田植機の普及促進や水田肥料の流出防止・施肥の適正化などの啓発を進めている。
また、湖を直接浄化する「湖沼内対策」として、三方湖では平成4年度から、北潟湖では平成5年度から湖底ヘドロのしゅんせつを行っているほか、平成6〜10年度にかけて、水中の窒素や燐を吸収するなど
水質浄化の働きがあるヨシの植栽を両湖沼で行っている。
ア 工場・事業場に対する規制等
湖に流入する窒素および燐を削減するため、三方五湖流域(日向湖を除く。)の工場等からの排出水に含まれる窒素と燐の許容限度について、「湖沼の富栄養化防止に関する工場・事業場排水指導要綱(平成2年
4月施行)」により、指導基準を設定し、規制の強化を図っている。(
資料編表3−8)
イ 浮魚礁による水質浄化
植物が湖水中の窒素、燐等を吸収することによる水質浄化効果が期待できるため、 2.5m四方の構造物に、ヨシ、アシ、マコモなどの吸肥植物を植栽した浮産卵礁を平成10年度、三方湖に63基、水月湖に21基、
計84基設置することとしている。
ウ アオコの除去技術の調査・研究
三方湖や水月湖のアオコの異常発生を抑制するため、アオコを捕食する動物プランクトンの検索や捕食条件等について研究を進めている。
また、北潟湖では、三方湖同様に富栄養化が進行しているが、アオコの発生が少ないことから、両湖のプランクトン相や水質等の環境条件の比較を行い、アオコ発生や抑制に関わる因子についての解明を進めて
いる。
エ 土壌菌を利用した水質浄化技術の研究
水田土壌中から抽出培養した土壌菌を用いて、食物連鎖を断つ手法によるアオコ発生の抑制を図るため、土壌菌の付着物質の研究や付着後の自己増殖性、活性能力の継続性等を研究し、護岸等の土木構造物に
脱窒素効果を持たせる研究開発を進めている。
オ 底泥のしゅんせつ
三方湖は、三方五湖のうち、生活排水等が最初に流入する湖であるため、他の湖に比べ水質悪化が著しい。また、湖底には、流入水の中に含まれる窒素、燐等を含む汚泥が堆積しており、夏場には、これらの
栄養塩が水中に溶出する現象が見られ、湖の汚染を助長させている現状にある。
一方、北潟湖はアオコの発生こそみられないものの、湖底は三方湖と同様の状況にある。
こうしたことから、良好な水環境づくりを行い、湖を地域住民の憩いの場として蘇らせるため、湖底表層部のしゅんせつを行っている。
《河川浄化事業(しゅんせつ)の概要》
|
目 的:湖底に沈殿している汚泥からの窒素、燐の溶出を防ぐため、堆積汚泥
のしゅんせつを行い、水質浄化を図る。
事業内容:(全体計画)
三方湖(公共3年度着手) しゅんせつ量 256,000
北潟湖(公共4年度着手) しゅんせつ量 56,000
(平成10年度までの事業)
三方湖 しゅんせつ量 82,250
北潟湖 しゅんせつ量 22,700 |
|
|
(2) 海域の水質保全対策
若狭湾は日本を代表するリアス式海岸であり、特に、入り組んだ閉鎖的地形の敦賀湾、小浜湾、矢代湾、世久見湾および内浦湾の5つの湾については、水が循環しにくいことから、富栄養化による水質の悪化が
進行しやすい。
このため、この5湾について、水質汚濁防止法に基づき、平成5年から、事業所排水に含まれる窒素・燐を規制するとともに、平成10年3月には、窒素・燐に係る環境基準の類型指定を行った。
CODについては5湾とも環境基準を達成しているが、今後は、窒素・燐の環境基準も維持・達成していく必要があり、下水道等の整備や肥料の流出防止対策などの施策を総合的に推進していく。
6 河川の水質浄化対策
市街地を流れる中小河川は、流域内に山地を持たないため、渇水時には水量が減少し、その結果、家庭排水や工場排水による水質汚濁が進行しやすい、いわゆる都市下水路的なものになりがちである。このような
都市中小河川の水質改善と住民に対する啓発を図るため、平成3年度より、人工的に河川の浄化作用を増大させるれき間浄化事業に取り組んでいる。この事業は、平成8年度から名称を河川水環境改善事業として5か年
計画で実施している。
《事業計画》
|
実施期間 平成8年〜平成13年
実施予定箇所 一級河川(狐川、磯部川、底喰川)
二級河川(はす川) |
|
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7 水資源の維持
(1) 水資源総合計画の策定
水は、生活・文化・産業・社会の諸活動を支える基本的な資源であると同時に、生命の育成、生態系の維持、自然環境や自然景観の形成など、多面的な役割を果たしている。
近年、心の安らぎ、生活の潤い等が重視されるにつれ、水についても、開発、利用、保全の各段階において多面性を考慮し、環境と調和のとれた水利用システムを形成していくことが必要と考えられるように
なってきている。
本県では、昭和49年に水資源対策の指針となる長期計画を策定し、総合的、計画的に水資源施策を推進してきており、平成10年に策定した「福井県水資源総合計画」においては、循環資源としての水資源の特性に
十分配慮し、水資源の安定的確保に加え、健全な水循環の形成、豊かな水環境の保全などの施策も考慮に入れながら、資源利用と環境保全の両面が調和した循環型水利用社会の構築をめざすこととしている。
水資源総合計画関係図表 施策の体系
【基本目標】 【施策展開の基本方向】 【項目】 【細項目】
環境と調和した
循環型水利用社会の構築
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安定した水供給
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水資源の安定的確保
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多目的ダムの計画的整備
地下水の計画的利用
農業用ため池の整備 |
水供給体制の整備
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水道供給体制の整備
工業用水道の整備
農業水利施設の整備 |
地下水の保全と適正利用
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地下水の汚染防止対策の充実
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地下水の汚染防止
廃棄物による汚染防止 |
地下水の保全対策の充実
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地下水位観測体制の整備
地盤沈下監視体制の充実
地下環境情報の整備
地下水かん養の
調査・研究の充実 |
効率的な水利用
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節水の普及促進
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節水意識の高揚
節水機器の導入 |
水使用の合理化
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生活用水
工業用水
農業用水 |
水の再利用の推進
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生活用水の再利用
下水処理水の再利用
雨水の有効利用 |
健全な水循環の形成
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水源地域の保全
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森林の水源かん養機能の
維持強化
水源かん養保安林の拡充 |
水質汚濁の防止
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発生源対策
閉鎖性水域の水質保全
河川の汚濁被害防止 |
良好な水質の確保
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公共用水域の水質監視
安全でおいしい水道水の確保 |
排水処理施設の整備促進
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公共下水道の整備
集落排水施設の整備
合併処理浄化槽の普及促進 |
豊かな水環境の保全
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親水空間の整備促進
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河川空間の整備
ダム湖周辺空間の整備 |
水辺環境の保全
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河川美化活動の促進
上下流交流連携活動の促進 |
環境教育の促進
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環境保全意識の高揚
緑化保全意識の高揚 |
渇水・緊急時の水確保
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地下水利用施設の活用
給水施設の整備促進 |
遊休井戸等の活用
水道施設の耐震化 |
塩水化対策の充実
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生活用水の塩水化対策
農業用水の塩水化対策 |
渇水時の体制の整備 |
渇水に備えた体制の強化 |
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(2) 水源地域の整備
近年、少雨傾向等により、各地で局所的な渇水が発生している。一方、林業生産活動の長期的停滞等から、水資源のかん養、国土保全等の機能が低下した森林が増加しており、これら森林の機能回復、向上が緊急の
課題となっている。
このため、ダム上流や集落等の水資源確保上重要な水源地域の森林を面的、総合的に整備するとともに、水源渓流や貯水池の周辺森林等において、良好な森林水環境の形成を推進し、複層林等の造成、治山ダムの
設置等を行うことにより、保水力の高い森林の整備と荒廃地の復旧を図っている。(図3−1−17)
図 3−1−17 水源地域整備事業
[→図]
番号 |
名称 |
所在地 |
番号 |
名称 |
所在地 |
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13 |
久沢
麻奈姫
広野
小原
新庄
上竹田
吉峰
足羽川
釣姫
新庄粟柄谷
上竹田河内谷
末
清滝 |
和泉村久沢
大野市若生子
今庄町広野
勝山市北谷
美浜町新庄
丸岡町上竹田
上志比村吉峰
福井市・美山町・池田町
小浜市田烏
美浜町新庄
丸岡町上竹田
福井市末
金津町清滝 |
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26 |
八ッ俣
厨
宇津尾
旅塚
大島
長野
上河内
所谷
湯尾
中島
中手
剣ケ岳
奥野々 |
越廼村八ッ俣
越前町厨
今庄町宇津尾
大野市堂島
大飯町大島
和泉村長野
鯖江市上河内
美山町所谷
今庄町湯尾
大野市中島
美山町中手
金津町清滝
南条町奥野々 |
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8 水質異常時対策
(1)国や関係機関等の連携
魚類へい死など公共用水域における水質異常は、地域住民等から県や市町村に通報されることによって、発見される場合が多い。
このため、県では、「公共用水域の水質異常発生の防止および水質異常の発生時における緊急連絡措置要領」を制定し、水質異常が発生した場合には、関係機関と連携しながら、その原因の究明や被害の防止等の
措置を講ずることにしている。
特に、魚類へい死事故時には、「魚類へい死事故対応手引」により、事故時の対応策やへい死原因の推定に活用している。
水質異常時の原因者に対しては、水質汚濁防止法、県公害防止条例に基づいて、応急の措置を指示するとともに、当該事故の状況および講じた措置を届け出るよう指導している。
(2)未然防止のための事業者指導
水質汚濁防止法や県公害防止条例に基づく届出の段階で、事業者への指導を行うとともに、特に、排水規制対象の事業場に対しては、立入調査を実施し、排水処理施設の維持管理の徹底を指導している。
また、事業者等の有害物質の使用状況を把握するとともに、突発的な事故や災害時に迅速かつ的確に対応できるよう、有害化学物質ごとの保有状況のデ−タベ−ス化を推進していく。
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