第8章 地球環境問題
 
第1節 地球の温暖化
 
1 二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量
 大気中に含まれる温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化炭素、HFC、PFG、SF6)は、太陽からの光(放射エネルギー)を透過する一方で、地表から放射される熱(赤外線エネルギー)を吸収する性質を持っている。
 近年の人間活動の活発化に伴い、これらのガスの大気中濃度が上昇すると、温室効果によって地球の温度が上昇する、いわゆる地球温暖化が生じ、その結果、気候変動による人類や生態系への影響が懸念されている。
 温室効果ガスの排出量については、「気候変動に関する国際連合枠組条約」に基づき、定期的に締約国会議に提出することになっている。
 このため、環境庁では、「附属書 締約国の通報の作成のためのガイドライン」および「温室効果ガスの排出・吸収に関する国家目録作成のためのガイドライン」に準拠した排出量の試算を行っている。
 
(1) 二酸化炭素
 1996年度の二酸化炭素総排出量は、炭素換算で3億3700万トン、国民一人当たりの排出量は2.68トンであり、1990年度と比較して、総排出量で 9.8%、一人当たりの排出量で 7.8%、それぞれ増加している。
 また、部門別排出量では、産業部門からの排出が最も多く(1990年度比1%増)、次いで、民生(業務、家庭)部門(1990年度比15%増)、運輸部門(1990年度比19%増)の順となっている。
 二酸化炭素の排出量の推移は図2−8−1、1996年度の部門別内訳は図2−8−2のとおりである。
 
 図2−8−1 二酸化炭素排出量の推移  [→図]
 
 図2−8−2 1996年度の二酸化炭素排出量の部門別内訳  [→図]
 
(2) メタン
 1995年度のメタン総排出量は148万トンであり、1990年度と比較して4.5%減少している。
 また、部門別排出量では、農業部門(家畜の反すう、稲作等)からの排出が最も多く、次いで、エネルギー部門(燃料の燃焼、石炭採掘時の漏出等)、廃棄物部門(埋立等)の順となっている。
 1995年度のメタン排出量の部門別内訳は図2−8−3のとおりである。
 
    図2−8−3             図2−8−4
  1995年度のメタン排出量の部門別内訳  1995年度の一酸化二窒素排出量の部門別内訳  [→図]
 
(3) 一酸化二窒素(亜酸化窒素)
  1995年度の一酸化二窒素総排出量は6万3000トンであり、1990年度と比較して 2.7%増加している。
 また、部門別排出量では、エネルギー部門(燃料の燃焼)、工業プロセス部門(アジピン酸、硝酸の製造)からの排出が多く、次いで、農業部門(家畜の糞尿、施肥等)、廃棄物部門(焼却)の順となっている。
 1995年度の一酸化二窒素排出量の部門別内訳は図2−8−4のとおりである。
 
(4) HFC、PFC、SF6
 1996年のハイドロフルオロカーボン(HFC)類の潜在排出量(国内生産量+輸入量−輸出量)は1万2500トン(1995年比11.6%増)、パーフルオロカーボン(PFC)類の潜在排出量は2200トン(同比 4.8%増)、 六フッ化硫黄(SF6)の潜在排出量は2200トン(同比増減なし)であり、これらのガスは、特定フロンからの代替等に伴い、近年増加の傾向にある。
 
2 大気中の二酸化炭素濃度
 南極点、マウナロア(ハワイ)および綾里(岩手県)における大気中の二酸化炭素濃度は図2−8−5のとおりである。
 南極点では1957年から、マウナロアでは1958年からそれぞれ観測が開始され、その当時の二酸化炭素濃度は約 315ppmであった。その後濃度は年々増加し、1994年には 358ppmとなり、最近10年間の増加率は約1.5ppm/年 となっている。
 また、綾里では1987年から観測が開始され、その当時の二酸化炭素濃度は 350.5ppmであったが、1996年には 365.5ppmと増加し、この間の増加率は約 1.7ppm/年となっている。
 
 図2−8−5 大気中二酸化炭素濃度の変動  [→図]
 
 
第2節 オゾン層の破壊
 
 オゾン層とは、地上10〜50km上空の成層圏の中でオゾン濃度の高い層をいい、太陽光に含まれる有害な紫外線を吸収し、地球上の生物を守っている。このオゾン層が、洗浄剤や冷蔵庫の冷媒などとして幅広く使用されて いるフロンガス等によって破壊されており、地上に到達する有害な紫外線の増加により、皮膚ガンや白内障など人への健康被害や植物の成育阻害といった生態系への影響が懸念されている。
 オゾン濃度の減少傾向は高緯度地域ほど強く、特に、南極上空ではオゾン量が著しく減少する現象「オゾンホール」が出現しており、環境庁の報告によると、1992年以降6年連続して、最大規模のオゾンホールが観測 されている。
 日本においては、札幌上空でオゾン濃度の減少傾向が確認されているが、紫外線の地上照射量の増加傾向は見られていない。
 
第3節 酸性雨
 
 雨は、元来、空気中の二酸化炭素を吸収することにより酸性を呈するが、酸性雨とは、化石燃料等の燃焼に伴い発生する硫黄酸化物や窒素酸化物を取り込むことによって、より強い酸性に変化した雨である。
 酸性雨は、北米やヨーロッパで湖沼や森林等の生態系あるいは遺跡等の建造物などに大きな影響を及ぼし、深刻な問題になっている。
 平成9年度に県内3地点において実施した雨水調査の結果、降水の年平均値pHは、全国値とほぼ同レベルであった。(表2−8−6)
 酸性雨の原因物質である硫酸イオン等の降下量は、いずれの測定地点においても、冬季に多い傾向にあった。
 また、平成7年5月に越前町血ヶ平に国設の酸性雨測定所が設置されており、国の酸性雨モニタリング調査が実施されている。(表2−8−7)
 なお、酸性雨による土壌・植生、陸水等への影響については、現在のところ明確な兆候はみられていないが、将来、生態系等への影響が顕在化するおそれもあることから、実態や影響について継続的に監視を行っている。
 
 表2−8−6 平成9年度酸性雨調査結果




 
 観測地点
 
年平均値
 (pH)
月平均値の最高値
   (pH)
月平均値の最小値
   (pH)
福井市原目町  4.6    5.0    4.4
敦賀市新和町  4.6    5.0    4.4
勝山市北谷町  4.8    5.7    4.5




 
 
 表2−8−7 平成9年度国設酸性雨調査結果

 
    観測地点  年平均(pH)
   越前町血ヶ平    4.6

 
 
 
第4節 エネルギー消費量
 
 平成9年度の県内使用電灯・電力量は67億3352万kWh(人口1人当たり8,119kWh)で、うち、主に家庭や店舗などで使用する電灯量は16億6342万kWh(構成比24.7%)、主に工場などで動力電源として使用する電力量は 50億7011万kWh(75.3%)となっている。(表2−8−8)
 最近の動向としては、電灯使用量は微増、電力使用量は平成5年度にわずかな減少となったものの、おおむね増加の傾向にあるといえる。
 また、平成9年の燃料油販売量は、灯油やC重油の減少により、 169万klと前年に比べ 4.4%減となっている。(表2−8−9)
 
 図2−8−8 県内の使用電灯・電力量  [→図]
 
 図2−8−9 燃料油販売量  [→図]
 

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