活動のための道具箱

(The Community Toolbox)

「道具がなければ彼は無であるが、
道具があれば彼は完全である。」

-- Thomas Carlyle



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人と情報のネットワーク
( 学校・大学, 国際・地域組織, 事業者団体, 公共事業体, 行政府, コンピューターネットワーク)

専門家の招請
主張、キャンペーン活動
請願(ロビー)活動
条約の批准と履行の促進
取引・製品ボイコット
争いへの心構えと対処
教育・研修活動

メディアの活用
( 電波の力, 広告, 手紙を書こう!, 人々を喚起する, 効果的なプレスリリースを書く)

資金集めとスポンサー探し
申請書を書く
上手な話し方


 なたの組織が環境問題に取り組むことを決め、効果的な活動を企画したと き、次のステップは仕事を成し遂げるのに必要な道具を調べることです。

 あなたの組織はすでにいくつかの道具を有しているかも知れませんし、これ から開発あるいは入手しなければならない道具もあることでしょう。しかし、 覚えておくべき大切なことは、たとえ限られた資源しかないにしても、常に、 何かしらできることはあるということです。資源の不足を何もしないことの言 い訳にしてはなりません。どんな仕事にとっても、最も重要な道具は意欲です。 意欲があれば、ほとんど何でも達成できるのです。

 この章では、あなたの組織が必要とするかもしれないいくつかの基本的な道 具について概観します。これらの道具のコレクションは、中にはさわれるもの もさわれないものもありますが、あなたの「コミュニティ活動の道具箱」と呼 べるものです。それぞれ個別の状況は、固有の道具箱を必要とするでしょう。 それはあなたのコミュニティの地理的現実、問題の性質、追加的資源へのアク セス、あるいは、あなたのコミュニティや組織の人々といった条件により 決定されるものです。効果的な活動ができるようにするためには、あなた がどんな道具をもっているか、どんな道具を必要とするか、そしてそれらをど のように使うか、について分析が必要です。この章はそのスタートとなるでし ょう。

情報と人のネットワーク

 誰を知っているかということはしばしば、何を知っているかと同じくらい力 になります。もし、あなたの組織が強力な人脈と強力な知識の両方を備えてい るならば、その環境保全への取り組みは大きく向上するでしょう。

 知識および人脈の獲得は、「ネットワーキング」のプロセスを通じて最もよ く達成されます。知識を得るためには、多様な情報源へのアクセスが必要です。 多くの知識は、知人を通して入ってくるでしょう。正しい人を知ることが、正 しい扉を開くことであることに何の秘密もありません。あなた自身の人のネッ トワークを築き、それを別の人のネットワークと結び付けることにより、 あなたは、環境劣化の波を押し返すことのできるコミュニティの構築に 直接的に貢献できるのです。

 あなたが、地元の自然地域における企業の開発計画や 地元の漁場を毒する深刻な 汚染事件に対処しようとする場合には、そのような問題に関する専門的知識あるい は少なくとも似たような経験をもった人が、どこかにきっといるでしょう。も し、その人あるいは人々と知り合いになることができれば、その人々の経験か ら学ぶことができるでしょう。あなたの地域で、同じ問題に関心をもつ人々を 探してみましょう。そして、利用可能な資源の調査に協力を求めましょう。 すでに過去に行われたことをくりかえさないことで、 多くの時間が節約できます。

 環境保全の命題のための効果的なネットワーカーであるためには、何が必要 でそれはどうすれば満たされるかということを、いつも忘れないことが重要です。 あなたが人々と会いはじめてネットワークができてくると、 あなたの会った、ある人々の必要としていることが、以前あなたが会った別の 人々の資源を利用すれば、容易に満たされることに気がつくでしょう。 これらの人々を結び付けることにより、あなたは他の人々の必要の満足に寄与する だけでなく、共通の命題--環境--にも貢献ができます。 同時にそれは、あなたの組織が困ったときに手助けとなりうる人の輪の拡大に もなっているのです。

 人の輪は集会、会議、パーティー、そしておそらくバスの中でさえも広がり うるものです。要を得た質問をしてみましょう。そして、その人々 が何をしているかを把握しましょう。もし、その人々の必要としていることや 興味が何であるかがわかれば、その人々が持続可能性の命題に貢献するのに役 立つ物資や人を紹介してあげられるかもしれません。もし、その人々が興味を 持ちそうな記事にあなたが出会った時は、それをコピーして送ってあげましょ う。すぐに彼らもまた、情報や人をあなたに紹介してくれるでしょう。あなた のために何かしてくれた人には、いつもお礼の手紙を送るのを忘れないように しましょう。

 以下に、あなたがネットワークを拡げるのにふさわしい場所をいくつか示し ます。それらの場所では、あなたのコミュニティの持続可能性追求の活動 に役立つ正しい人々との出会いや、正しい情報源の発見が得られるでしょう。

学校・大学

 多くの学校は、その課程に環境問題の学習を含んでいます。コミュ ニティの大学には、あなたの地域に固有の環境問題を研究し、集めた資料を 喜んで教えてくれる教授や先生がいるのかもしれません。あなたは、公式課程 に編入するだけの時間はないかもしれませんが、いくつかの授業を聴講するこ とは多分可能でしょうし、ひょっとすると教授があなたの組織を訪れて 話をしてくれるかもしれません。もし、地元の学校が環境問題についての授 業を行っていない場合には、どうしてなのか尋ねてみましょう。 コミュニティが関心を持っていることがわかれば、 環境問題についての授業を始めるきっかけになるかもしれません。

 博物館も、科学技術から自然と人間の歴史に至るまで、あらゆる分野の広範 囲なテーマについて、貴重な学習の機会を提供してくれます。地元の博物館の どのひとつにも行ったことがないならば、一度どのようなものがあるのか調べて みましょう。そして、あなたのコミュニティ組織の人々、あるいは一緒に活動 する学生たちと博物館への小旅行を企画してみましょう。ノートブックを携帯 し、その小旅行を学習の場に変えましょう。もし、博物館が環境についてのよ い展示をしていないならば、あなたのコミュニティが新たな展示の設置を ボランティアで手伝うことも多分可能でしょう。

国際・地域組織

 東アフリカの海岸、ヨーロッパの都市、リオデジャネイロのスラム、そして 国連本部のホールに至るまで各所で住民グループが社会問題や環境問題に積極 的に活動しています。これらの組織の多くは、あなたのコミュニティであなた が一緒に活動している組織と似ています。これらのグループは、参加している 人々が多様であると同じく多様ですが、しばしば同じ展望をもっています。 それは、例えば貧困撲滅であり、人間開発であり、あるいは自然資源の持 続可能な管理です。多くの組織は、はじめは地元の問題への取り組みから 始め、その後、より大きな地域の、あるいは国際的な問題に取り組むために 他のグループと連帯するのです。

 NGO や地域組織も、環境についての情報やその他の学習活動につい ての助言を与えてくれます。多数が環境問題についての研究や教育に取り組ん でいます。ほとんどすべての国にNGO が存在します。あなたのコミュニテ ィの活動的なNGO を探してみましょう。ひょっとすると、彼らはあなたと同 じ問題に取り組んでいて、喜んであなたに力を貸してくれるかもしれません。

事業者団体

 多くの事業者や事業者団体、例えば国際商工会議所のような団体は、彼ら 固有の関心分野に伴う環境問題を研究しています。そして、依頼すれば情 報を提供してくれるでしょう。もし、あなたの地域の事業者がそのような団体 を作っていない場合には、あなたの(そして、次にあなたの仲間すべての)問 合せがそのような団体を生むきっかけとなるかもしれません。あるいは、また 本社の連絡先--どこであってもかまいません--を聞き出して、そこに要請書を送 ることも可能です。その場合、宛先は広報部としておきましょう。

公共事業体

 公共事業体(水道、電気、交通などを所管する公共機関)は、しばしば、家 庭ゴミ、節水、省エネなどのテーマについての啓発的資料を発行しています。 それらは時々、地元や地域の環境問題についての重要な情報源でもあ ります。また、公共事業体にはたいてい広報部があり、コミュニティ組織や報 道機関、関心を持つ人々などとの連絡窓口となっています。もし、そのような窓 口がない場合には、どうしてないのか尋ねてみましょう。そして、窓口を設け てもらいましょう。

行政府

 多くの行政府は、地元、国を含めて、環境問題についての資料を発行してい ます。また、公共事業体と同様に個別の環境問題の現状についての情報を提供 してくれます。その他の情報源として、アフリカ統一機構(OAU)やアラブ連盟 などの政府間組織もあります。

 環境庁またはそれに相当する官庁に、地球サミットでの政府の立場がどうであったか 照会してみましょう。あなたの政府の代表が提出した声明も、多くの情報を 与えてくれるでしょう。現在、多くの行政府が、環境白書を作成しています。 あなたのところでも、入手できるかどうか照会してみましょう。

 また、親環境派の国会議員や地元議会の議員に照会してみることも可能でしょう。 彼らはしばしば、いろいろな環境問題についての調査資料を保有しており、それらを 喜んで見せてくれます。

コンピューターネットワーク

 今日では、コンピューターを使って必要な情報にアクセスしたり、同じ問題 に関心のある世界中の人々と連絡しあったり、電子メールを送受信したりする ことで、小さな組織でも大きな組織と同じくらい効果的な活動ができるように なりました。コンピューターはまた、文書作成にも威力があり、 手紙、プレスリリースあるいは情報紙を書くのに要する時間を大きく節約してくれま す。そのほか、活動推進のための資料のデザインも可能です。 このように、またその他の多くのことからも、コンピューターは急速に環境活 動の最良の友となりつつあります。

 もし、あなたやあなたの組織が、コンピューターを持っていないのでしたら、 地元の事業者に中古品をいくつか寄付してもらえないか尋ねてみましょう。 また、行政府や財団に、あなたがより効率的な活動を行うためにコンピューターを 必要としていることを説明した助成申請書を提出する方法もあります。 あるいは、コンピューター購入のために募金活動を行うことや、 コンピューター販売店を説得して公共サービス機関向けの特別割引を 行ってもらうこともおそらく可能でしょう。もし、どうしても自前のコンピューターが 得られない場合には、他の組織か地元の学校のコンピューターを借用することなら 多分可能でしょう。

 「エコリンキング--環境ネットワーキングへのみんなのガイド」の著者、Don Rittnerは、この10年間に静かな革命--コンピューターを使って人と情報を 結ぶオンラインコミュニケーションの革命--が生じたと述べています。現在、 推定80カ国以上の44万人以上の人々がこの方法で結ばれ、電子メールやレポート、 データセット、そして写真さえもが、 ほんの数秒間のうちにやりとりされているのです。

 電子ネットワーキングに必要な物はいくつかありますが、旧型のコンピュ ーターとモデム、そして普通の電話回線があれば、普通 e-mailと呼ばれる電子 メールを使うための基本的設備ができあがります。e-mailは、コンピューター 通信の中で最も広く使われているサービスです。通常の紙の手紙の電子版とし て、それはほとんどどこであっても利用可能です。それによって、あなたは素 早く、経済的に世界各地の人々と通信できるのです。メッセージはひとりにあ てても、同時に複数の人にあてても送ることができます。

 大部分のe-mailは、世界的な「ネットワークのネットワーク」であるインタ ーネットを通じてやりとりされます。インターネット上には何万ものデータベ ースや、人々がコンピューターを通じて出会い情報を交換する討論フォーラム があります。e-mailアドレスはふつう各人の名前ではじまり、「@」が続き、 次にドメインアドレスもしくはネットワーク(ホストコンピューター)ア ドレスで終わります。例えば、john.smith@unep.noは国連環境計画(UNEP)の John.Smthさんのアドレスを表します。

 コンピューター通信の技術は同時に、あなたがインターネットを通じて膨大な 情報源にアクセスすることを可能にしました。インターネット上の情報へのア クセスと参加の方法としてe-mail、telnet、gopher、そしてWorld Wide Web(WWW) などがあります。telnetは、コマンドを入力しながらインターネット上の情報 にアクセスする方法です。gopherはもう少し簡単で、ユーザーが遠方のコンピ ューターのディレクトリに直接アクセスし、そこに蓄えられた情報をダウンロ ードすることを可能にします。WWWは最も簡単で、テキスト、画像そして音声や 映像までも会話的に取り出せます。WWWはインターネットで最も急速に、ただし 主として先進国において成長しているサービスです。

 インターネットを利用することにより、膨大な環境情報にわずかなコストで、 あるいは無償でアクセスすることができます。情報の大部分は政府、大学、企業、 非営利組織、そして個人により提供されています。国連のいくつかの機関も、 国連環境計画(UNEP)や国連開発計画(UNDP)を含め、地球環境の持続可能性達成のための 国連活動についての広範囲な情報データベースを提供しています。 この中には国連文書、会議声明、様々な問題についての報告や研究などが含まれます。 これらのデータベースは gopherや WWW で、あるいは簡単な e-mailによっても アクセスできます。 gopherのアドレスは gopher.undp.org、WWWのアドレスは http://www.undp.org または http://www.un.orgです。

 インターネットe-mailを使って、国連gopherデータベースにアクセスするに は、gopher@undp.orgあてにブランクメッセージを送ります。そうすると、メ ニューが送られてくるので、アクセスしたいメニュー項目の後に「x」をつけ て gopher@undp.orgに送り返します。するとまた、次のレベルのメニューが 送られてきます。このようにして、あなたが送ってほしい文書に到達するまで、 いろいろなディレクトリの中へ降りていくことができます。ほとんどすべての 国連文書に、この手順でアクセスが可能です。

 もうひとつのよい環境情報源は、IGC (Institute for Global Communications) のネットワークです。世界の多くの活動組織が、このネットワークを重要文書の共有と 戦略の討議のために利用しています。詳しくは、econet@econet.apc.orgあてに ブランクメールを送って下さい。そうすると、相手先のコンピューターから 自動的にいくつかの情報が送られてきます。

 他にも多くのサービスが、コンピューターネットワークを通じて提供されています。 その中には一般向けの討論フォーラム、技術情報、専門的データベース、 何千ものコンピュータープログラム、そして地理的に何千マイルも離れた 人々が参加する円卓会議などがあります。この環境「オンライン」コミュニティの メンバーの大部分は科学者、企業の人々、および官庁職員ですが、そのほか学生や 関心の高い個人も多数参加しています。ある人々にとっては アクセス費用が「オンライン」になることへの障害となっていますが、それでも通常の 航空便メールを使うよりはこのメディアによる通信のほうが、多くの場合経済的です。

 オンライン会議にはいくつかの方法があります。この中の3つは、「チャット」、 「掲示板システム(ニュースシステム)」、「メーリングリスト」です。 チャットはふつう独立したネットワークで使われるものですが、複数の 人々がリアルタイムでオンライン会話をすることができます。掲示板システムは 独立したネットワークでも、インターネットでも使われます。これは特定の 問題について討論したり、他の人々の討論をフォローするのに役に立ちます。 このタイプの会議の第1の利点は、参加者が特定の時間帯に集まる 必要がないことです。あなたは討論の一部として、会議にメッセージや意見を ポストします。だれかがそれに対してレスポンスしたかどうかは、あとでゆっくり 確かめることができるのです。このようにして、いくつかの討論は何週間も 時によっては何カ月間も続きます。

 メーリングリストは、他のオンラインサービスとともに、人々に連帯をもたらす 自動メールのサービスです。インターネット上には何千ものメーリングリストがあり、 一部は一般公開されています。参加型もあり一方通行型もあります。参加型の場合、 リストのアドレスにあなたがメッセージを送ると、そのコピーがリストに登録された 全員に送られます。あなたのメッセージに だれかが返信しようとする場合、その人は直接あなたあてに返信してもよいし、 みんながそのコピーを受けることができるよう、リストのアドレスあてに 送ることもできます。このようなやり方の会議は、メンバーが距離的に離れている あるグループ内で、いろいろな問題について、ブレーンストーミングするための 画期的な方法となりえます。環境問題に関するとてもよいメーリングリストの ひとつは、UNEPのInfoterraメーリングリストです。何百人もの環境専門家が、 このリストに登録しています。あなたが例えば、 コミュニティのある環境問題についての質問をリストに投げかけたとすると、 他のユーザーはあなたを手助けするために最善をつくしてくれるでしょう。 このリストに登録するには、majordomo@cedar.univie.ac.atあてにサブジェクトを ブランクにして本文に「subscribe infoterra your@email.address」 (your@email.addressは、あなたの e-mailアドレス)と書いたメールを 送ります。すぐに確認と案内のメールが返ってくるでしょう。

 一方通行型の例としては、特定の発行物の配送のために存在するリストがあ ります。いくつかの発行物はメーリングリストを通じてオンラインで発行され ています。2つの例を挙げると、1つは Earth Negotiations Bulletin(ENB) であり、 これは持続可能性に関するすべての国連会議をモニターしています。もう1つは、 Rachel's Hazardous Waste Newsletterです。e-mailを各リストのアドレス(前者は listserver@ciesin.org、後者は rachel-weekly-vequest@world.std.com) に送ることで自動的に購読予約ができます。最新号が発行されるたびに、 あなたがオンライン上のどこにいてもあなたのメールボックスにそれが届くのです。

専門家の招請

 もし可能であれば、あなたの組織は特定の環境問題について専門的助言者または 論説者を雇おうと考えるかも知れません。これは例えばあなたが、政府や企業による 道路建設等の開発計画がもたらす環境影響を問題とするような場合に しばしばあてはまります。その問題について、あなたの組織の代弁者が、 開発者側の経済学者や立案者と対等に専門的議論ができることは、 あなたの活動にとってとても大きな助けとなりえます。

 しかし、偽りの「専門家」に用心しましょう。他の分野でもあることですが、 環境の分野においても自称専門家、実はご都合主義者が多いのです。雇用契約の前に、 当人の信任状と照会先を十分チェックしましょう。また、あなたが仕事に適任と 考える人を決める前に、常に複数の候補者の資格性を検討して下さい。

 時々、大きな組織や政府は特定目的のための支援制度として専門家を派遣して くれます。一度、他のNGO やコミュニティ組織にあなたの活動に役立つ 専門家がいるかどうか照会してみましょう。ひょっとすると、組織の公共性を アピールするよい機会として歓迎されるかもしれません。お金を使う前 に、このような方法であなたの組織にとって必要な専門家が得られないかどう か検討してみることは常によい考えです。

主張、キャンペーン活動

 主張活動とキャンペーン活動は、あなたのコミュニティにおける環境の持続可能性の 達成と確保のための2つのとても効果的な手法です。しかし、この種の活動をする際、 心に留めておいて欲しい大変重要なひと言があります。それは 「対決を避けよ」です。あなたの考えを人々に訴える際には、パートナーシップの 立場からするほうが通常、より効果的です。時には、環境を著しく害していると 思われる誰かや組織あるいは企業とは対決が必要と思われるかも しれません。しかし、常に慎重を期して下さい。そして、その種の活動に入る前に 他のすべての選択肢を検討して下さい。Earth First、Greenpeace、およびSea Shepherdのような時折、対決を戦略とする組織は、十分に準備し、何年もの経験 を積んでいるのです。

請願(ロビー)活動

 あなたが、活動への支援を求めようとしている場合でも、あるいは環境に有害と 思われる行為をやめさせようとしている場合でも、通常なんらかの形で行政府と 関係しなければなりません。商売、産業、教育、軍事、その他すべての社会の 分野において、行政府は様々なレベルで影響力をもっているのです。

 あなたが行政府やその代表と接するときは、協力しようというプラスの態度 でいたほうが、多くの場合効果的です。対決からは問題はまれにしか解決さ れないのです。「我々と彼ら」という敵対的なアプローチではなく、共通の利益、 我々自身と未来の世代の幸福のための「パートナーシップの追求」という哲学の 維持を試みましょう。行政府への請願(ロビー)活動は、民主主義の歴史が 長くない多くの国々ではデリケートな問題です。事実、あるところではそれ は転覆活動とみなされかねません。

 国により、多様なレベルの行政府があります。そのそれぞれが異なった仕方で 他のレベルや他の部門の行政府と連係しています。通常、行政府は次のように 分かれています。まず、中央あるいは国、もしくは連邦の 政府、次に地域、地方あるいは州の行政府、そして最後に市区町村もしくは コミュニティレベルの役所あるいは行政府です。個別の問題に対して、あなたの組織は これらのうちのいずれか、あるいはすべてとともに、あなたのコミュニティにおける 環境の持続可能性確保に取り組むことが可能でしょう。

 行政府の代表者と会う前に、常に事実をしっかりと把握するように努めて下さい。 このことは、行政区住民であるあなたが重要と考える問題についてのあなたの議論を より強固なものとし、行政府の代表者の認識を高めるのに 役立ちます。よく研究され、よくまとめられた問題分析は、あなたの求める支援を より得やすくします。身近な情報を得ましょう。関係者とよく話し合いま しょう。できれば、大学の研究成果を入手しましょう。問題の説明に役立つ写真も 用意しましょう。

条約の批准と履行の促進

 国際的な法律や政治の政府間のプロセス、および国連において、環境の保全と 持続可能な開発の促進に向けて、数多くの様々な合意を得るための交渉が行われて きました。環境のためのコミュニティ活動の一環として、これらの合意事項が 何であるかを知り、あなたのコミュニティにおいてこれらの合意事項が確実に 守られるよう、行政府とともに活動することが可能でしょう。

 これらの合意事項のあるもの、例えば多数の国連会議で採択された行動計画、 宣言、アジェンダなどには、法律的拘束力はありません。しかし、 これらの合意文書には、多数の国々が合意したものであるという政治的 権威が備わっています。そして、それらはあなたの行政府が「原則」合意したことに ついての典拠として利用可能です。

 これに対して、法律的拘束力のある条約は、調印国の法制手続を経て 批准されなければなりません。批准は、各国が条約の規定遵守に合意することを 意味します。批准国が一定数(条約に規定され、普通30ないし50カ国)に達すると、 条約は「発効」、すなわち国際法となります。そして、 条約批准国は規定遵守の法律的義務を負います。

 次のステップは、各条約批准国がその規定を国内法に盛り込み、国レベルで も地域レベルでも規定が守られるようにすることです。

 コミュニティグループが行政府とのパートナーシップを求めながら、国際条 約を支援するにはいくつかの方法があります。その第1は、条約の批准を 推進することです。第2は、行政府と協力して、条約の重要性が認識され、 国内法にその規定が盛り込まれるよう促進することです。第3は、いろいろな伝達の 手段を通じて、コミュニティに条約の重要性の周知を図ることです。

 条約文書の写しは、地元の図書館で、あるいは直接国連から入手できるで しょう。 申請先: UN Department of Public Information, Room S-1040, United Nations, New York, New York USA 10017.  前述したように、インターネットを通じても多くの国連文書が入手できます。 環境に関する現在の条約のいくつかは次のとおりです。 砂漠化防止条約。気候変動条約。有害廃棄物の輸送についてのバーゼル条約。 生物多様条約。海洋法条約。そして、オゾン層破壊物質についてのモントリオ ール議定書です。

取引・商品ボイコット

 請願(ロビー)活動と同様、ボイコット活動も十分な配慮と注意が必要です。しかし、 正当とみなされる場合には、それは強力な道具となり、企業に環境影響の観点からの 企業活動の見直しを促すことができます。

 この方法が最も効果的であるのは、消費者に商品選択の余地が多い 先進国においてですが、開発途上国においてもそれは同様に効果的でありえます。 マハトマ・ガンジーは、1940年代にインドから大英帝国を撤退させるのに成功 しましたが、彼はこの戦術を塩についての英国の独占をボイコットするのに用 いました。英国から塩を買うかわりに、海水を煮て自家用の塩をつくるよう、 彼は何百万人もの人を動員したのです。彼の次のステップは、綿花の生産につい ての英国の独占をボイコットすることでした。人々に自分の綿をつむぎ、イン ドの伝統的衣装である簡素な「オーティス」を着用するよう勧めたのです。

 企業活動は、人と環境との相互作用にとって外部的要素ではありません。私たちは 企業の製品を買い、消費するという意味でみんなが企業活動の一端を 担っているのです。ある意味で、私たちは企業の「ボス」です。 というのは、私たちは購入を通じて企業に働く人々の給料を支払っているからです。 もし、ある企業の活動方法が好ましくないと判断したならば、私たちはその企業の 製品を買うのをやめることができます。そのとき同時に、私たちがなぜ製品を 買わないのか、その企業に知らせましょう。そうすることによって、 その企業は売上げ減少と企業活動との関係を知ることができるでしょう。

 ボイコット活動をする前に、常に企業に活動方法を変える機会を与えましょう。 それでも、その企業があなたの懸念を聞き入れることを拒んだ場合には、 上記の戦術が企業の考えを改めさせるのにとても効果的な方法となりうるのです。

争いへの心構えと対処

 争いは、あなたの個人的な生活においても、あなたの属しているコミュニティや 組織の活動においても、ほとんどあらゆる場面で生じえます。 争いに対する心構えと対処の仕方、およびそれを何かプラスなものへと変える 方法をわきまえれば、あらゆる活動や取り組みに成功するためのあなたの能力が飛躍的に 高まるでしょう。

 コミュニティとともに持続的な環境活動に取り組むとき、地元や地域の行政府と、 あるいはコミュニティそのものと、あるいは組織のメンバー間または他の組織との間で 常に争いが生じる可能性があります。争いはあなたが相手方と対話について学び、 それを促進するのにとてもよい機会ではありますが、 非常にしばしば、重要な仕事からあなたを逸脱させ、修復するのに何年も要する 気まずい感情をもたらします。

 フランスの作家サンテグジュペリは「星の王子様」の中で、「言葉はすべての 誤解の源である」と述べています。多くの争いが対話不足と相手の視点の 無理解から生じます。この助言は、環境活動における争いの可能性への心構えとして 特に有益です。もし、あなたが問題解決策について 交渉しようとしている組織または個人との間に何らかの緊張を感じる時は、いつも 対話の分析から始めましょう。あなたが、相手の視点を本当に 理解しているかどうか、逆に相手があなたの視点をよく理解しているかど うか自分に問い正してみましょう。

 あなたと争っている相手が本当は状況をどうしたいのか、またあなたの望む ところは正確には何なのかを把握して下さい。そして、あなたがたは実際のと ころ同じものを求めていはしないかどうか確かめて下さい。おそらく、 「両方とも勝ち」の状況こそが、あなたがたが共に望みを満足できる理想的な 状況となるのです。

 争いは、しばしば、早く対処すればすぐにおさまります。長くなればなるほど、 対処が困難になります。できれば、何らかの争いが生じるかもしれないと思う相手と 会って、その心配を伝えましょう。事態が悪化しないよう、これを早めに 実行しましょう。「あなたとは同じ目標をめざしていると信じています。争いが 起きるのは、私たち双方にとって不幸なことだと思います。」というような簡単な 言葉が、非常にしばしば問題を解決します。もし、共通の目標をめざしてはいない という場合には、注意深く、あなたの活動がより困難にではなく、 より容易に進むよう最善の道を模索して下さい。よく話し合えば、 全員にとってよい解決策が発見されることが多いのです。

 状況に対して行動を返す前に、すべての選択肢を熟考することはしばしば有益です。 ふつう、どんな状況に対しても多様な応答の仕方があるものです。 あるものはさらに争いを生み、あるものは争いを静めます。争いを激しくしそうな 行動をおこす前に、組織のメンバーと別の選択肢について話しあうことは、 役に立つことが多いのです。

教育・研修活動

 教育は持続可能性の最も重要な要素のひとつです。人々は問題があるとわかれば、 それを解決しようとするでしょう。問題の背後にある原因を理解できれば、 その再現を防ごうとすることができます。理解は教育を必要とします。教育は 教育機関やコミュニティ集会でのプレゼンテーションを通じて、あるいは、 街頭でのパンフレットや小冊子の配布によっても多分可能です。

 環境問題について人々に伝えよう、あるいはコミュニティを教育しようと試 みる前になすべきとても重要なことがあります。それは、すべての事実につ いて確認し、再度確認し、さらにもう一度確認することです。一旦、あなたの 組織がすべての事実を正しく把握してはいないということが知れると、そ の後はコミュニティの注目を得ることが大変困難になります。

 教育機関は、持続可能な環境のためのコミュニティ活動にとって、多くの点で、 とても役に立ってくれます。そこには、環境問題について知りたがっている 多数の若者がいます。また、教育機関は、あなたのコミュニティ組織のための 貴重な環境情報源でもありえます。

 もし、あなたの組織が環境問題についてとても熟達している場合や、関連資料の 所在を熟知している場合には、コミュニティの学校との協力を試みてもよいでしょう。 あるいは、協会やモスク、寺院、コミュニティセンターなどで、夕べの公開セミナーを 開催するのもよいでしょう。大きな企業がある場合には、特定の環境問題に関する 従業員向けのセミナー開催を申し出ることも可能です。

メディアの活用

 あなたの組織はより多くの会員を得るために、また重要な環境問題について 人々の認識を高めるために、人々に組織の目標と目的を伝えることを 必要とするでしょう。その際、メディア(新聞、雑誌、テレビおよびラジオ)は強力な 味方となりえます。メディアの注目を惹くのに成功するためには、 次の2つのことが必要です。
1)あなたのメッセージをひきたたせるニュース的価値のあるのある伝え方 をする。
2)明確で本格的な情報を、そのメディアが利用可能な時に利用 可能な形で提供する。

 どんなメディアに対するときも、有力な記者と建設的で長期的な関係を 結ぶようにしましょう。面会については前もって誠実に連絡し、 彼らの助言を求め、彼らにあなたの活動について共感してもらいましょう。プロの 記者は、問題について客観的であることを求められますが、それでもなお、 その記者が個人的に「あなたの側」にいる時には、 あなたの活動にとってプラスに働くでしょう。

 あなたが環境問題についての啓蒙活動を始めるとき、ある人々は単純にあなたの 話すことを理解できないかもしれません。彼らの理解不足の理由は、その 種の問題に触れる機会の不足とも考えられます。あなたのコミュニティにおいて、 特定の問題について意識啓発キャンペーンを行うとき、とても大事なことは、 あなたのメッセージが人々の年令、教育、文化、社会的影響などに基づく 多様なグループ分けに応じて、適切にデザインされていることです。もし、 あなたがメッセージを明確かつ理解可能な形で伝えられないならば、長期的 に活動を継続できる望みはほとんどありません。ブルントランド委員会は、その報告書 「私たち共通の未来」の中で次のように述べています。「もし私たちが、 自らの言葉を、老若すべての人々の意識と心に達する言語に翻訳できないならば、 開発の道筋を正すために必要な広範囲な社会的変革を呼び起こすことは できないでしょう。」

電波の力

 ラジオ放送は、今日、世界で最も普通のメディアです。 地元のラジオ放送は人々への情報伝達に特に有用です。 なぜなら番組の制作者は、通常、地元の話題に関心があるからです。 まず、どの番組があなたに最適で、かつ聴取者が多いか少し調べてみましょう (多くの場合、それは、早朝のニュース番組です)。 制作者/提供者も調べて下さい。 それから彼らに直接話をして、番組の中で環境問題を取り上げてくれるよう 頼みましょう。 あなたの活動について紹介してもらい、イベントの企画推進に役立てることも 可能でしょう。

広告

 広告をメッセージ伝達の手段としている環境組織も世界には少なくありません。 特に先進国では、雑誌や新聞が多数発行されていて、かつ、組織の資金力が 開発途上国に比べて豊かであるため、よく利用されています。 しかし、この方法は、どの地域においても有用でしょう。

 地元の新聞社は、頼めば、おそらく割安の掲載料で、 広告欄を提供してくれるでしょう。 テレビ局も、放送料を値引きして、1分間の公共広告を流してくれるでしょう。 もしだめであっても、活動や募金を通じて広告費用を得ることは おそらく可能でしょう。

 広告は短く的を得ていなければなりません。 有名な商品広告を調べ、どのような言葉や画像を使ってメッセージ伝達に 役立てているか研究してみましょう。 環境メッセージでも同じことができるはずです。 既存の広報組織や広告会社に相談してみるのもよいでしょう。 彼らはきっと大きな助けとなるでしょう。

手紙を書こう!

 19世紀半ばに、劇作家のリットン男爵はこう書いています。 「人間の完全に偉大なる統制力の下、ペンの力は剣に優る。」  時と所が適切で、議論の巧みな手紙は、非常にしばしば事の推移を左右します。 それゆえ、ペンを取り、机の前に座り、歴史を変えてみましょう。

 手紙を書くには目的が明確でなければなりません。 まどろこしい手紙は、動いて欲しいと思う相手を単にいらいらさせて終わる のが普通です。 書く前に十分構想を練り、言うべき内容をはっきりと把握しましょう。 宛先人は、実際に変化をもたらすことのできる人である必要があります。 前もって、照会の手紙あるいは電話で、判断を下す人の名前を得ておきましょう。 できるだけトップの人をめざしましょう。 ただし、あなたの活動が官僚組織と深く関わっている場合には、おそらく 指揮権の流れを尊重する必要があるでしょう。

 文面は、個人的であると同時に、建設的で形式を備えている必要があります。 本文をタイピングしたあと手書きの一行を書き加えましょう。 「この件についてあなたのご配慮がいただければ、たいへん幸いです。」のような 簡単なものでも、十分個人的な関係を生むことができ、あなたの手紙の埋没を 防いでくれます。

 多くの場合、手紙のコピーを他の人にも送ることで効果が増します。 末尾に”cc:誰々”(カーボンコピー送付先)として強い印象を与える人の名前を 書いておくと、通常、より念入りな返答が期待できます。 例えば、中央政府の誰かに手紙を出す場合には、コピーを地元の行政府の長にも 送るようにします。その逆もあります。 また、あるホテルの支配人に、ホテルの下水管から汚水が海に流出している 事実を知らせる場合には、そのコピーを地元の環境保健局の担当官にも送るのです。

 手紙の中に質問を含みましょう。単にある問題について注目を促すために 修辞的な声明を送りたいと思う場合でも、容易に答えられる質問を、 速やかな返答を求めて記しておくことはよい考えです。 そうすれば、手紙の他の内容についての反応も期待でき、手紙が届いたという 確認にもなります。

 的を得た手紙を書きましょう。分量は用紙片面に抑えましょう。 そうするための最良の方法はあらかじめ要点を箇条書きすることです。 そしてそれぞれの文を最小限にします。 第一の目標は、あなたの思っていることの全体が読まれ、吸収されることの 確保であるべきです。

人々を喚起する

 手紙はコミュニティの意識啓発にも有用です。 また、特定の問題に関して同じような気持ちをもつ人々の連帯を導くのにも 役立ちます。 公開の手紙を地元新聞や全国紙に投稿する場合もその基本的な構造は個人向けと 同じでよいでしょう。 しかし、読者の一般的な関心に焦点を合わせて下さい。 あなたの「編集長への手紙」(しばしばこう呼ばれます)は他の手紙や記事と 競合しなければなりません。 短くて、迫力があって、刺激的であれば、掲載される可能性が大きくなります。 地元紙で手紙のやりとりを長期間続けることは、何らかの出来事を生じさせるのに とても効果があります。

 手紙は場合によっては、特定の読者層を対象とする発行物に的を絞る必要が あります。 あなたの地域に多数の発行物がある場合には、適切な投稿先を選びましょう。 例えば、サンゴ礁への投錨のような破壊的行為に関する手紙は、首都の日刊紙にだけ 掲載されるよりは、漁師やスキューバダイバーを読者とする雑誌に掲載されるほうが より効果的でしょう。

 手紙を書く際覚えておくべき重要な規則があります。 それは、確かな事実をつかむこと、個別の攻撃を避けること、 建設的な解決策を書くこと、非難によって点数を稼いだり、古傷を 持ち出したりしないことです。

効果的なプレスリリースを書く

 プレスリリースはあなたの視点からの情報をメディアに伝える手法です。 また、この手法は支持者、共鳴者、および一般の人々に活動状況を知らせるのにも 有用です。 プレスリリースは内容が本格的で、かつ、わかりやすく記述する 必要があります。もし、うまく撮影された、明確でダイナミックな写真が あれば、コピーを同封しましょう。 返却を望む場合は、切手を貼った自分宛の封筒も同封すること。

 プレスリリースを書くときの留意点:

 最後に、明確で、信頼性の高い照会先を記すことが重要です。代表者として、 知識が豊かで明確かつ簡潔に話ができ、できれば、インタビューに慣れている 人物を選びましょう。プレスリリースの目的のひとつは、記者を詳細な フォローアップ調査に誘うことです。 従って代表者は重要な役割を果たします。 プレスリリース後、電話をかけて反応を促すことを習慣にしましょう。

資金集めとスポンサー探し

 世界中で、経済の状況は依然ほど力強くはありません。 資金を集めようとする組織の数が増えている一方で、資金が得られる可能性は 減りつつあります。 それでもなお、価値ある活動については、通常、誰かがどこかで支援してくれる ものです。 資金集めの成功の鍵は、必要性の明確な提示、活動使命の伝達、創造性、 そして粘り強さです。

 資金集めにはいろいろな方法があり、決まったやり方はありません。 すべてはコミュニティとその状況に依存します。 最善の道はすぐできることから始めることです。 例えば、物品販売、ダンスパーティ、コンサートなどが考えられます。 組織の会員数が多ければ、少額の年会費や月会費の徴収もおそらく可能でしょう。 これらはいずれもあなた自身の企画や能力に依存する資金集めの方法ですが、 同時に、外部の資金源を探す道もあります。 この場合、あなたが「根拠のある」資金集めを行っていることが示せるならば、 資金はより容易に入手できるでしょう。

申請書を書く

 外部の資金源に助成を求めるには申請書を書く必要があるでしょう。 申請書には、あなたが誰であり、何をしていて、何を望み、かつなぜ望むのかを 書かなければなりません。 助成申請書の書き方の手引き書は多数ありますが、以下に示すことは、 その道に踏み出す際の基本原則です。 申請書を書いてみることは、たとえ、実際には申請の計画がない場合でも 組織にとってよい訓練になります。 なぜならその過程は必然的に、あなたの活動目的、能力、資源、 そして解決しようとしている問題の理解度についての評価の機会となるからです。

 あなたが取り組んでいるような活動を支援してくれる助成機関を探すための、 財団などの資金源のリストは、通常、図書館等で入手できます。 ある助成機関はいろいろな環境問題について支援してくれますが、 中には、人口問題、教育などに対象を限定するところもあります。 もしあなたが水処理施設についての助成申請書を女性教育専門の財団に 送ったとしてもきっと読まれもしないでしょう。 一方、申請書の表現を工夫して目当てとする財団の対象領域の「窓」に 合うようにすることも時には可能でしょう。

 申請書の様式は、個別の違いはあるでしょうが、標準的には、 表書きに始まり、次いで申請の要約、導入、問題の記述、あなたの組織の 目標・目的、問題解決策、資金源の見込み、そして事業予算へと続きます。 全体として、私的あるいは公的な資金源が質問しそうなことを内容的に 網羅する必要があります。 できれば常に「しかるべき勤勉」を前もって実行し、 目当てとする資金源の求める要件を確かめておきましょう。 もし、最初から必要なすべてのものが揃っていれば、申請が受け入れられる 可能性も大きくなります。

 私的財団への申請書と公的助成を求める申請書とはしばしば様式が異なります。 前者においては、多くの場合、最初に短い手紙が必要とされ、その後正式な申請書を 提出します。後者においては、多くの場合、詳細な申請理由書および複数の 定型様式の書類を提出しなければなりません。 書類は適切な窓口もしくは官庁に提出すること、および申請書を書く前に 申請要領を入手することを忘れないで下さい。

 最初の表書きには、あなたの組織、助成を求める事業あるいは計画を簡潔に記し、 同時に、助成がコミュニティにとってどれだけ重要か、また、誰が実際 恩恵を受けるのかを助成者に伝えなければなりません。 また、あなたの組織の運営委員会もしくは理事会、ならびにコミュニティの重要人物の 強い支持があることを示す必要があります。 もし、あなたの町の町長や大学教授あるいはそれに類する人のあなたの事業への支持の 手紙があれば、助成が得られる可能性が高まるでしょう。

 申請書本文は1頁に抑える場合もありますが(1頁という制限があれば特に そうです)、数頁にわたる場合もあります。 書き方は手紙風の場合もあり、形式を備えた説明書風の場合もあります。 添付資料は、あなたの組織の主要メンバーの紹介など適切なもののほかは、 資金源が求めるものだけに限定しましょう。

 最後に、もし求められた場合には、実際の資金の使い道を示す詳細な見積書 の提出が必要です。その作成は慎重に行い、できれば、資格を有する 会計士と契約して、すべての数字に正確を期して下さい。 もし、資金源が1回でもあなたの計算を疑うようなことがあれば 助成が得られる可能性は低くなるでしょう。

上手な話し方

 環境のために活動するコミュニティ組織の一員として、あなたは、あなたの経験 から得た知識や認識を他の人々に教え、分かち合うための機会を多くもつこと でしょう。

 そのような機会をうまくこなす人は、権威を持って話し、わかりやすい、 信じられやすい仕方で知識を伝えます。 どんなキャンペーンも、「聴衆」が関心をもつことをわかりやすく話し、 書かなければ成功しません。

 効果的な伝達の鍵となる要素は、常に聴いて欲しいと思う人々の言葉と作法で 話すことです。この注意は、相手が2人でも200人でもあてはまります。例えば、 農家の人に話をするのに、政治家にしか理解されない言葉や話題を用いては なりません。農業に関係する例を挙げ、土地の劣化や作物の病気など彼らに 身近な問題を取り上げましょう。

 演壇での緊張を克服するには、少人数から始めて次第に大きな聴衆へと 練習しましょう。プロの話し手でも大聴衆の前では神経質になるものです。 力強い開始メッセージを用意し、話の内容をしっかり把握しているという 自信があれば、普通、緊張は和らぎます。

 前もって全部のスピーチを書いておくのは、求められないかぎりやめましょう。 それよりも、1枚の紙に最初の文章とそれに続く内容の要点を記しておくほうが ずっとよいでしょう。

 聴衆には1回につき1つのアイデアだけを伝えましょう。ひとつのアイデアが 終わったら、一旦休み、ひと呼吸おいてから次の考えへと進みましょう。 不必要な言葉や無関係な情報は避けましょう。多くの例を示し、できれば、視覚に 訴える資料を利用しましょう。身近な話は普通とても効果的です。

 内容をすべて伝えたら話を締めくくります。1分でも必要以上には話さないこと。 締めくくりには、要点の確認と行動の呼びかけを行いましょう。

 質問を受けた場合には、答える前に質問内容を繰り返し、聴衆が何が問われたのか わかるようにしましょう。質問には率直かつオープンに答えましょう。 知らなければその旨伝え、決してごまかさないこと。こう言いましょう。 「知りません。しかしそれがあなたにとって大事なことならば、調べて お知らせしましょう。」

参考文献

- A Primer on Environmental Citizenship; Environment Canada, 1993
- At Ease with E-mail, A Handbook on Using Electronic Mail for NGOs in Developing Countries, United Nations Non-Governmental Liaison Service, Geneva, and the Freidrich Ebert Foundation, New York, 1995
- Citizen Action, Taking action in your community, Wilson, Don, Longman Self-Help Guides, England, 1986
- EcoLinking, Everyone's guide to environmental networking, Rittner, Don, Peachpit Press, USA 1992
- Program Planning and Proposal Writing, Introductory Version; Kiritz, Norton J. and Mundel, Jerry, the Grantsmanship Center, Los Angeles, 1992.


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